第一百五十八章 差異の解消
「次回確認条件――本人識別情報状態の差異解消。」
女は、その一行を指でなぞった。
「差異がなくなるまで。」
「うん。」
「再評価が続く。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「差異そのものを。」
「うん。」
「人の違いとして扱っていない。」
「そう。」
「情報状態の違い。」
「そう。」
女は画面を閉じずに、前の記録へ戻った。
「補完前。」
「うん。」
「本人識別情報――未受信。」
「そう。」
「補完後。」
「うん。」
「受領済み。」
「そう。」
「それだけなら。」
「うん。」
「差異が出るのは当然。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「現在の記録では。」
「そう。」
「別の状態になっている。」
「そう。」
女は眉を寄せた。
「だから。」
「うん。」
「差異解消というのは。」
「うん。」
「情報を追加することとは限らない。」
「そう。」
「補完された情報を。」
「うん。」
「別の管理状態に合わせることかもしれない。」
「可能性はある。」
「あるいは。」
「うん。」
「逆に。」
「そう。」
「現在の情報を。」
「うん。」
「過去の状態に合わせることかもしれない。」
「そう。」
女は画面を見た。
「どちらなのか。」
「まだ分からない。」
「そう。」
彼女は検索条件を変えた。
「差異解消履歴。」
透が検索を実行する。
しばらくして、結果が表示された。
「二件。」
「二件?」
「そう。」
「兄の日の後?」
「一件は兄の日の翌日。」
「もう一件は?」
「今日。」
女は顔を上げた。
「翌日。」
「うん。」
「何をした?」
透が開く。
「本人識別情報状態確認。」
「うん。」
「結果――差異継続。」
「解消していない。」
「そう。」
「今日。」
「本人識別情報状態再確認。」
「うん。」
「結果――差異あり。」
女は少し考えた。
「つまり。」
「うん。」
「兄の日の翌日にも。」
「そう。」
「今日にも。」
「そう。」
「同じ差異が残っている。」
「可能性が高い。」
「じゃあ。」
「うん。」
「差異は一時的なものではない。」
「そう。」
女はノートに書いた。
「差異――継続。」
その横に、
「内容――不明。」
と書いた。
「でも。」
「うん。」
「翌日の記録。」
「そう。」
「兄の日の処理直後。」
「うん。」
「そこで既に。」
「そう。」
「差異が確認されている。」
「そう。」
「ということは。」
「うん。」
「今日突然発生した問題ではない。」
「そう。」
女は画面を見た。
「じゃあ。」
「うん。」
「兄の日の処理が終わった後。」
「そう。」
「何かが残った。」
「そう。」
「それが。」
「本人識別情報状態の差異。」
「そう。」
女はしばらく黙った。
「次。」
「うん。」
「翌日の確認理由。」
透が開いた。
「確認理由――前日処理継続確認。」
「うん。」
「確認対象――補完済み本人識別情報。」
「そう。」
「参照先――Q―1。」
「うん。」
「比較対象――分離後個人識別情報。」
「そう。」
「結果――差異あり。」
女は頷いた。
「ここまでは。」
「うん。」
「昨日までの話と同じ。」
「そう。」
「その後。」
「うん。」
「何か処理した?」
透が次の項目を開く。
「差異処理――保留。」
女が止まった。
「保留。」
「そう。」
「理由は?」
「本人一致確認が必要な状態ではない。」
女は画面を見つめた。
「つまり。」
「うん。」
「差異はある。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「本人を確認する必要はない。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「そのまま保留。」
「そう。」
女はゆっくり息を吐いた。
「このシステム。」
「うん。」
「本人を特定する方向には。」
「そう。」
「簡単には進まない。」
「そう。」
「差異があっても。」
「うん。」
「すぐに人を確認しない。」
「そう。」
「なぜ?」
透は記録を読む。
「本人識別情報の直接照合は。」
「うん。」
「業務上必要な場合に限る。」
「そう。」
「今回。」
「うん。」
「その必要性が認められていない。」
「そう。」
女は頷いた。
「じゃあ。」
「うん。」
「兄を探す側からすると。」
「うん。」
「歯がゆい。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「システム側では。」
「そう。」
「普通の処理。」
「可能性がある。」
女は画面を見た。
「普通。」
「うん。」
「異常じゃない。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「私たちには。」
「うん。」
「異常に見える。」
透は何も言わなかった。
女は少し笑った。
「それも。」
「うん。」
「立場の違い。」
「そう。」
二人はしばらく黙った。
女は次の記録を開いた。
「保留後。」
「うん。」
「何か動いている。」
「何?」
「旧名称関連情報。」
「また?」
「うん。」
「兄の日の翌日。」
「そう。」
「旧名称関連情報の参照。」
「目的は?」
透が読む。
「差異発生原因確認。」
女は画面を見た。
「差異発生原因。」
「そう。」
「本人情報そのものではなく。」
「そう。」
「旧名称関連情報を見ている。」
「そう。」
「つまり。」
「うん。」
「差異の原因が。」
「うん。」
「名前の使われ方にある可能性を調べた。」
「そう。」
女は頷いた。
「結果は?」
「旧名称使用区分――業務名称。」
「うん。」
「業務区分――所在関連情報。」
「うん。」
「入力経路――業務窓口。」
「うん。」
「照会先――第七管理系統。」
「そう。」
「全部。」
「うん。」
「兄の日と一致。」
女は画面を見た。
「それでも。」
「うん。」
「本人識別情報状態だけ。」
「差異あり。」
「そう。」
「じゃあ。」
「うん。」
「旧名称の使い方は。」
「差異の原因ではない。」
「そう。」
女は考えた。
「少なくとも。」
「うん。」
「記録上は。」
「そう。」
「名前では説明できない。」
「そう。」
彼女はノートに書いた。
「名称――一致。」
「業務区分――一致。」
「経路――一致。」
「本人識別情報状態――差異。」
そして最後に、
「差異の中心は本人情報側。」
と書いた。
透はその文字を見た。
「ただし。」
「うん。」
「本人そのものとは限らない。」
「そう。」
女は頷いた。
「情報状態。」
「そう。」
「ここは忘れない。」
「うん。」
彼女は画面をスクロールした。
「兄の日の翌日。」
「うん。」
「さらにもう一つ。」
「何?」
「第三の記録。」
透が見る。
「参照されている。」
「目的は?」
「旧名称使用履歴確認。」
「結果。」
「関連情報あり。」
女は少し考えた。
「第三の記録は。」
「うん。」
「名前の履歴だけでなく。」
「そう。」
「差異の原因確認にも使われている。」
「そう。」
「つまり。」
「うん。」
「兄の日に第三の記録を参照したのは。」
「うん。」
「一回だけじゃない。」
「そう。」
「翌日も。」
「そう。」
「今日も。」
「そう。」
女は画面を見た。
「ずっと。」
「うん。」
「第三の記録が参照されている。」
「そう。」
「なのに。」
「うん。」
「第三の記録自体は。」
「うん。」
「古い。」
「そう。」
「十一年前。」
「そう。」
「なぜ。」
「分からない。」
女は頷いた。
「ここも。」
「うん。」
「分からない。」
彼女は第三の記録の参照履歴を一覧にした。
兄の日。
翌日。
その三日後。
今日。
「四回。」
「そう。」
「参照目的が。」
「うん。」
「全部違う。」
「どう違う?」
透が読む。
「兄の日――記録外情報確認。」
「翌日――旧名称使用履歴確認。」
「三日後――経路対応確認。」
「今日――補完資料との照合。」
女は画面を見た。
「同じ記録なのに。」
「うん。」
「見る理由が違う。」
「そう。」
「つまり。」
「うん。」
「第三の記録には。」
「そう。」
「複数の意味がある。」
「そう。」
「名前を見る人もいる。」
「うん。」
「経路を見る人もいる。」
「うん。」
「補完資料を見る人もいる。」
「そう。」
「だから。」
女は言った。
「第三の記録そのものが重要というより。」
「うん。」
「そこに残っている情報の一部が。」
「うん。」
「別々の処理に使われている。」
「そう。」
女は少し考えた。
「じゃあ。」
「うん。」
「兄の日の処理で。」
「うん。」
「本当に重要だったのは。」
「何?」
「第三の記録そのものではなく。」
「うん。」
「そこから取得された何か。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「その何かは。」
「権限制限。」
「そう。」
女は頷いた。
「なら。」
「うん。」
「ここから先は。」
「そう。」
「記録の表面を見るだけじゃ足りない。」
「うん。」
「参照項目を追う。」
「そう。」
「第三の記録から。」
「うん。」
「何を取り出したのか。」
「そう。」
女は参照項目一覧を開いた。
そこには、四つの項目が並んでいた。
「名称使用履歴。」
「うん。」
「照会先経路。」
「うん。」
「連絡内容。」
「うん。」
「旧担当情報。」
女の指が止まった。
「旧担当情報。」
透も画面を見た。
「これは。」
「うん。」
「今まで。」
「そう。」
「見ていない。」
「そう。」
「なぜ?」
透が記録を確認した。
「参照対象として登録されている。」
「誰が?」
「C―12。」
「M―2。」
「そう。」
「いつ?」
「兄の日の翌日。」
女は顔を上げた。
「翌日。」
「そう。」
「第三の記録から。」
「旧担当情報を参照した。」
「そう。」
「目的は?」
透が読む。
「差異発生原因確認。」
女は黙った。
「つまり。」
「うん。」
「名前でもない。」
「うん。」
「経路でもない。」
「うん。」
「連絡内容でもない。」
「うん。」
「次に見たのが。」
「旧担当情報。」
「そう。」
女は画面を見つめた。
「でも。」
「うん。」
「旧担当情報は。」
「個人情報。」
「そう。」
「名前は見えない。」
「権限制限。」
「所属も?」
「権限制限。」
「在籍期間も?」
「権限制限。」
「全部。」
「そう。」
女は少し黙った。
「でも。」
「うん。」
「旧担当情報を参照したという事実は。」
「残っている。」
「そう。」
「そして。」
「うん。」
「目的は。」
「差異発生原因確認。」
「そう。」
女はゆっくり言った。
「じゃあ。」
「うん。」
「兄の日の翌日に。」
「うん。」
「初めて。」
「うん。」
「人の側にある情報を。」
「そう。」
「見に行っている。」
透は答えなかった。
「ただ。」
女は続けた。
「旧担当者が。」
「うん。」
「兄と関係しているとは限らない。」
「そう。」
「その時点で。」
「うん。」
「業務上の担当者を確認しただけかもしれない。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「ここも決めない。」
「そう。」
女は画面を見た。
「でも。」
「うん。」
「次に見る場所は決まった。」
透が尋ねた。
「旧担当情報?」
女は頷いた。
「そう。」
「名前は見えない。」
「分かってる。」
「個人も特定できない。」
「分かってる。」
「それでも?」
「うん。」
女は静かに言った。
「誰がいたかではなく。」
「うん。」
「その時点で。」
「うん。」
「どんな役割の人間が。」
「そう。」
「どんな権限を持って。」
「うん。」
「何を引き継いでいたのか。」
透は画面を見た。
「役割。」
「そう。」
「権限。」
「そう。」
「引継ぎ。」
「うん。」
女は頷いた。
「人を探すんじゃない。」
「うん。」
「その人が持っていた仕事を探す。」
「そう。」
画面には、旧担当情報の参照履歴が残っていた。
そのすぐ下に、新しい項目が表示された。
「旧担当者――引継ぎ状態確認。」
女はその文字を見た。
「これ。」
「うん。」
「次だね。」
透は静かに画面を開いた。




