第一百五十六章 連絡内容
「参照項目――連絡内容。」
女は、その文字を見つめた。
「内容――権限制限。」
透は画面を閉じなかった。
「十四時三十八分。」
「うん。」
「第三の記録が参照された。」
「そう。」
「目的は。」
「記録外情報の確認。」
「そう。」
「その五分後に。」
「手動確認資料。」
「うん。」
「さらに二十九分後。」
「本人識別情報の補完。」
「そう。」
女は時刻を並べた。
「十四時三十八分。」
「連絡内容の参照。」
「十四時四十三分。」
「手動確認資料の作成。」
「十五時十二分。」
「本人識別情報の補完。」
「そう。」
女はしばらく黙っていた。
「順番は分かる。」
「うん。」
「でも。」
「そう。」
「連絡内容そのものは分からない。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「何が伝えられていたのか。」
「分からない。」
「誰から誰へだったのか。」
「分からない。」
「それが兄に関係していたのか。」
「分からない。」
女は頷いた。
「ここでも。」
「うん。」
「分からない。」
透は画面を見た。
「ただ。」
「何?」
「参照されたこと自体は残っている。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「内容が見えなくても。」
「うん。」
「参照の目的と、その後の処理は追える。」
女は画面を指した。
「それを追う。」
「うん。」
「連絡内容を見られないなら。」
「その前後。」
「そう。」
透は参照履歴の前後五分を表示した。
十四時三十六分。
「前の処理。」
「うん。」
「旧名称検索。」
「誰が?」
「C―12。」
「M―2。」
「そう。」
十四時三十七分。
「検索結果――一件。」
「業務名称。」
「そう。」
十四時三十八分。
「第三の記録参照。」
「うん。」
十四時三十九分。
「参照結果――記録外情報あり。」
女が顔を上げた。
「記録外情報あり。」
「そう。」
「初めて。」
「うん。」
「その言葉が出た。」
「そう。」
「じゃあ。」
「うん。」
「十四時三十八分の参照で。」
「うん。」
「何かが見つかった。」
「そう。」
「それが。」
「記録外情報。」
「そう。」
女は画面を見つめた。
「その一分後。」
「記録外情報あり。」
「そう。」
「そして。」
「うん。」
「五分後に。」
「手動確認資料。」
「そう。」
女はゆっくり頷いた。
「なら。」
「うん。」
「手動確認資料を作るきっかけは。」
「記録外情報の存在。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「その情報が何だったかは。」
「権限制限。」
「そう。」
女はノートに書いた。
「第三の記録。」
「うん。」
「連絡内容。」
「権限制限。」
「うん。」
「記録外情報。」
「あり。」
「そう。」
「本人識別情報。」
「後から補完。」
「そう。」
彼女はペンを止めた。
「この流れ。」
「うん。」
「何かの情報が。」
「そう。」
「第三の記録から。」
「うん。」
「現在の処理へ。」
「そう。」
「流れ込んだ。」
「可能性はある。」
「でも。」
「うん。」
「第三の記録そのものが。」
「うん。」
「その情報の発生源とは限らない。」
「そう。」
「参照しただけかもしれない。」
「そう。」
女は頷いた。
「じゃあ。」
「うん。」
「次。」
「何を見る?」
「参照結果。」
透が開いた。
そこには短い記録があった。
「結果区分――関連情報あり。」
「また。」
「うん。」
「関連情報あり。」
「そう。」
「何との関連?」
「旧名称関連情報。」
「それだけ?」
「そう。」
女は少し考えた。
「関連情報あり。」
「うん。」
「つまり。」
「うん。」
「第三の記録の中に。」
「そう。」
「旧名称に関する情報があった。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「それが誰の情報かは。」
「分からない。」
「そう。」
「それがどの案件かも。」
「分からない。」
「そう。」
女は画面を見た。
「じゃあ。」
「うん。」
「十四時三十八分に。」
「そう。」
「旧名称関連情報が見つかった。」
「うん。」
「その五分後。」
「そう。」
「その情報を含めた手動確認資料が作られた。」
「そう。」
「その資料を使って。」
「うん。」
「本人識別情報が補完された。」
「そう。」
女は少し黙った。
「補完された本人識別情報は。」
「うん。」
「どこから来た?」
透は履歴を開いた。
「補完元――記録外情報。」
「それは分かっている。」
「うん。」
「記録外情報の参照元。」
「第三の記録。」
「そう。」
「つまり。」
「うん。」
「第三の記録を見て。」
「そう。」
「記録外情報を確認し。」
「うん。」
「その情報を使って。」
「そう。」
「本人識別情報を補完した。」
「記録上の順番はそう見える。」
女は画面を見た。
「でも。」
「うん。」
「この『本人識別情報』が。」
「うん。」
「兄のものかは。」
「分からない。」
「そう。」
「それどころか。」
「うん。」
「補完された値自体も見えない。」
「そう。」
「だから。」
女は言った。
「人を特定する証拠にはならない。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「この処理が。」
「うん。」
「単なる名称照合だけでは終わっていないことは。」
「分かる。」
「そう。」
女は画面を閉じた。
「それなら。」
「うん。」
「第三の記録が。」
「うん。」
「ただの古い業務記録ではなく。」
「そう。」
「現在の処理に何らかの情報を提供している。」
「可能性がある。」
「でも。」
「そう。」
「その情報の中身は見えない。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「まだ。」
「分からない。」
透は頷いた。
女はしばらく黙っていた。
「ねえ。」
「うん。」
「もし。」
「うん。」
「兄がこの処理の対象だったとしたら。」
透は答えずに聞いた。
「兄の情報は。」
「うん。」
「最初から本人情報として入っていなかった。」
「そう。」
「業務名称として入って。」
「そう。」
「所在関連情報として処理されて。」
「そう。」
「その後。」
「うん。」
「何かの理由で。」
「そう。」
「本人識別情報が補完された。」
「そう。」
「つまり。」
女はゆっくり言った。
「最初は人としてではなく。」
「うん。」
「業務上の情報として扱われた可能性がある。」
「可能性はある。」
「そして。」
「うん。」
「途中から。」
「そう。」
「人に関する情報が加わった。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「最後まで本人確認はされていない。」
「そう。」
女は目を閉じた。
「それなら。」
「うん。」
「兄が何をしていたのか。」
「うん。」
「この記録だけでは。」
「分からない。」
「そう。」
「でも。」
女は目を開いた。
「兄が何をされたのか。」
透は少し考えた。
「それも。」
「分からない。」
「そう。」
女は頷いた。
「そうだね。」
彼女はスマートフォンを取り出した。
「兄の最後の連絡。」
「うん。」
「時間を確認する。」
以前のメッセージ履歴を開いた。
「最後のメッセージ。」
「うん。」
「『あの場所だけは信じるな。』」
「そう。」
「送信時刻は。」
女が画面を見た。
「十時二十八分。」
透が画面を見る。
「兄が南区に入った時間の少し前。」
「そう。」
女は記録の時刻と並べた。
「十時二十八分。」
「メッセージ。」
「十時三十六分。」
「第三の記録参照。」
「十時五十九分。」
「照会先経路最終確認。」
「十一時十四分。」
「外部入力。」
「十四時三十八分。」
「第三の記録再参照。」
「十四時四十三分。」
「手動確認資料。」
「十五時十二分。」
「本人識別情報補完。」
女はしばらく数字を見ていた。
「この並び。」
「うん。」
「きれいすぎる。」
透は黙った。
「だから。」
「うん。」
「逆に怖い。」
「でも。」
透が言った。
「時間が近いことと。」
「うん。」
「関係があることは。」
「同じじゃない。」
女は頷いた。
「分かってる。」
「だから。」
「うん。」
「今は。」
「うん。」
「時間だけを残す。」
「そう。」
「意味は。」
「決めない。」
女はノートに時刻だけを書いた。
そして、その横に小さく、
「まだ分からない」
と書いた。
「これ。」
「うん。」
「消さない。」
「そう。」
「今までなら。」
「うん。」
「この時点で。」
「うん。」
「全部を一本につなげたくなっていた。」
「そう。」
「でも。」
女は画面を見た。
「今は。」
「うん。」
「つながっているように見えるものほど。」
「うん。」
「何がつながっていないかを見る。」
透は何も言わなかった。
女は再び第三の記録を開いた。
「もう一つ。」
「何?」
「十四時三十八分。」
「うん。」
「第三の記録を参照した人。」
「C―12、M―2。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「その前。」
「うん。」
「十四時三十六分の旧名称検索。」
「C―12、M―2。」
「そう。」
「同じ権限。」
「うん。」
「同じ所属。」
「そう。」
「じゃあ。」
女は画面を指した。
「この二つは。」
「同じ人?」
透は記録を確認した。
「氏名――権限制限。」
「在籍情報――権限制限。」
「だから。」
「うん。」
「分からない。」
女は頷いた。
「ここも。」
「そう。」
「同じ所属。」
「うん。」
「同じ権限。」
「うん。」
「同じ人とは限らない。」
「そう。」
「同じ人ではないとも限らない。」
「そう。」
女は少し笑った。
「だいぶ慣れてきた。」
透も小さく息を吐いた。
「何に?」
「分からないことに。」
二人はしばらく画面を見ていた。
そのとき、画面の右下に新しい参照履歴が表示された。
「第三の記録――追加参照。」
女が止まった。
「今日?」
「そう。」
「誰が?」
透が開いた。
「所属――C―12。」
「権限――M―2。」
「目的――補完資料との照合。」
女は画面を見た。
「今。」
「うん。」
「誰かが。」
「そう。」
「兄の日の資料を。」
「うん。」
「また確認している。」
「そう。」
「対象は?」
透が読む。
「本人識別情報。」
女は黙った。
その下に、もう一行あった。
「照合結果――差異あり。」
女が顔を上げた。
「差異あり。」
「そう。」
「何が違った?」
透が詳細を開こうとした。
しかし画面には、
「比較対象――権限制限」
と表示された。
女はしばらく動かなかった。
「今度は。」
「うん。」
「一致じゃない。」
「そう。」
「差異。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「何と何が違うのかは。」
「まだ見えない。」
女は画面を見つめた。
「じゃあ。」
「うん。」
「兄の日の処理は。」
「そう。」
「終わっていなかった。」
透は答えなかった。
画面の記録には、
「照合後処理――継続」
と表示されていた。




