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嘘の向こう側  作者: 亀


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第一百五十三章 受け取らなかったもの

「外部入力項目別受信履歴。」


透は、その項目を開いた。


画面には、いくつかの項目名が並んでいた。


「名称。」


「うん。」


「業務区分。」


「うん。」


「入力経路。」


「そう。」


「照会先。」


「うん。」


「依頼者情報。」


「ある。」


「本人識別情報。」


透は一度止まった。


「未受信。」


女は画面を見た。


「未受信?」


「そう。」


「最初から?」


「記録上は。」


「受信されていない。」


「そう。」


女は少し考えた。


「じゃあ。」


「うん。」


「兄の日の入力には。」


「うん。」


「本人識別情報がなかった。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「名称はあった。」


「そう。」


「業務区分も。」


「ある。」


「入力経路も。」


「ある。」


「照会先も?」


透が確認する。


「受信済み。」


女は黙った。


「依頼者情報は?」


「別管理。」


「つまり。」


「外部入力そのものには。」


「うん。」


「入っていない。」


「そう。」


女はノートを開いた。


「名称。」


「受信。」


「業務区分。」


「受信。」


「入力経路。」


「受信。」


「照会先。」


「受信。」


「本人識別情報。」


「未受信。」


「依頼者情報。」


「別管理。」


彼女はその下に一本線を引いた。


「人を特定するための情報は。」


「うん。」


「最初から欠けている。」


「そう。」


「なのに。」


「うん。」


「処理は開始できた。」


「そう。」


女は画面を見た。


「前に見た。」


「うん。」


「旧連携障害の記録。」


「そう。」


「個人識別情報が欠けても。」


「うん。」


「名称と業務区分があれば。」


「分類できる。」


「そう。」


「この日の入力も。」


「その条件に当てはまる。」


「そう。」


女は黙った。


「じゃあ。」


「うん。」


「兄の日の入力は。」


「うん。」


「兄を特定するための入力ではなかった。」


透は少し考えてから答えた。


「少なくとも、入力条件だけを見る限り。」


「うん。」


「本人特定を必要としない処理だった。」


「そう。」


「でも。」


女は続けた。


「兄の日だった。」


「そう。」


「兄が南区に入った日。」


「そう。」


「だから。」


「うん。」


「私たちはそこを結びつけたくなる。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「記録は。」


「結びつけていない。」


「そう。」


女は頷いた。


「分かった。」


彼女は画面をスクロールした。


「次。」


「受信後処理。」


「うん。」


透が読む。


「名称――業務名称として登録。」


「業務区分――所在関連情報。」


「入力経路――業務窓口。」


「照会先――第七管理系統。」


「本人識別情報――受信なし。」


「依頼者情報――X―4へ分離。」


女は指を止めた。


「照会先。」


「うん。」


「第七管理系統。」


「そう。」


「ここ。」


「うん。」


「前に見た。」


「そう。」


「第三の記録が統合された場所。」


「そう。」


「R―3も。」


「そう。」


「P―4も。」


「うん。」


「何らかの形で。」


「第七管理系統と関係している。」


「そう。」


女は画面を見つめた。


「じゃあ。」


「うん。」


「外部から入ってきた情報は。」


「うん。」


「第七管理系統へ。」


「そう。」


「そこで。」


「うん。」


「名称を業務名称として扱い。」


「そう。」


「所在関連情報として処理した。」


「そう。」


「その後。」


「S―系統へ。」


「そう。」


女は小さく息を吐いた。


「でも。」


「うん。」


「兄本人の情報は。」


「そこにはない。」


「そう。」


「なら。」


「うん。」


「この処理から兄を見つけようとすること自体が。」


「難しい。」


「そう。」


女は椅子に座り直した。


「それでも。」


「うん。」


「一つ。」


「何?」


「この入力項目。」


彼女は「照会先」を指した。


「なぜ受信されている?」


透は記録を開いた。


「照会先は。」


「うん。」


「旧名称関連情報の対応確認に必要だった。」


「それだけ?」


「そう書いてある。」


「じゃあ。」


女は言った。


「照会先が必要なのは。」


「名前を人に結びつけるためではなく。」


「うん。」


「情報をどの経路に送るか決めるため。」


「そう。」


「つまり。」


「うん。」


「照会先は。」


「人の居場所ではない。」


「そう。」


「情報の行き先。」


「そう。」


女は少し考えた。


「兄のメッセージ。」


「うん。」


「『あの場所だけは信じるな』。」


「そう。」


「これも。」


「うん。」


「物理的な場所とは限らない。」


「そう。」


「経路かもしれない。」


透は何も言わなかった。


「でも。」


女は続けた。


「それも推測。」


「そう。」


「だから。」


「うん。」


「今は結びつけない。」


「そう。」


彼女は画面を閉じなかった。


「受信履歴。」


「うん。」


「過去の同じ処理と比べたい。」


透が検索条件を入力した。


「名称――業務名称。」


「業務区分――所在関連情報。」


「入力経路――業務窓口。」


「照会先――第七管理系統。」


「本人識別情報――未受信。」


「依頼者情報――別管理。」


検索結果が表示された。


「何件?」


「十二件。」


「兄の日以外。」


「十一件。」


「同じような処理は。」


「ある。」


「じゃあ。」


女は画面を見た。


「兄の日だけではない。」


「そう。」


「その中で。」


「うん。」


「外部連携があるもの。」


「五件。」


「Q―1参照は?」


「二件。」


「兄の日を含めて?」


「そう。」


「もう一件は?」


「八か月前。」


女は開いた。


「本人識別情報――未受信。」


「そう。」


「依頼者情報――別管理。」


「そう。」


「旧名称関連情報。」


「そう。」


「業務区分――所在関連情報。」


「そう。」


「入力経路――業務窓口。」


「そう。」


「ほとんど同じ。」


「うん。」


「でも。」


「Q―1参照の理由が違う。」


女が読む。


「旧名称関連情報の対応先確認。」


「兄の日は?」


「記録間整合性確認。」


女は止まった。


「同じQ―1でも。」


「目的が違う。」


「そう。」


「八か月前は。」


「対応先。」


「兄の日は。」


「記録間整合性。」


「そう。」


女は考えた。


「つまり。」


「うん。」


「兄の日は。」


「うん。」


「最初から何かを探していたのではなく。」


「そう。」


「入力された情報と。」


「うん。」


「既存記録の関係が。」


「うん。」


「合っているか確認した。」


「そう。」


「だから。」


「うん。」


「第三の記録まで出てきた。」


「可能性はある。」


女は画面を見た。


「でも。」


「うん。」


「整合性確認で。」


「そう。」


「なぜ本人識別情報まで参照対象になった?」


透が記録を開く。


「Q―1。」


「うん。」


「参照対象――分離後個人識別情報。」


「そう。」


「でも。」


「本人一致確認――未実施。」


「そう。」


女は眉を寄せた。


「見る。」


「うん。」


「でも。」


「うん。」


「照合しない。」


「そう。」


「じゃあ。」


「何のため?」


透は記録を追った。


「存在状態。」


「存在状態?」


「個人識別情報が。」


「うん。」


「存在するか。」


「そう。」


「受信されているか。」


「そう。」


「分離管理されているか。」


「そう。」


女は黙った。


「つまり。」


「うん。」


「人を確認したんじゃない。」


「そう。」


「人の情報が。」


「うん。」


「どこにあるかを確認した。」


「そう。」


女はゆっくり頷いた。


「また。」


「うん。」


「場所。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「人の場所ではない。」


「そう。」


女はノートを閉じた。


「この記録。」


「うん。」


「兄の日のことを説明しているように見える。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「説明しているのは。」


「処理の流れ。」


「そう。」


「兄の行動ではない。」


「そう。」


しばらく沈黙が続いた。


女は窓の外を見た。


「もし。」


「うん。」


「兄がこの処理の対象だったとしても。」


透は黙って聞いていた。


「本人識別情報がないなら。」


「うん。」


「このシステムの中では。」


「うん。」


「兄として記録されない。」


「そう。」


「だから。」


「うん。」


「兄を探しているのに。」


「そう。」


「兄の名前を探しても。」


「出てこない可能性がある。」


「そう。」


女は頷いた。


「逆もある。」


「逆?」


「兄ではない人の情報が。」


「うん。」


「同じ名前や業務名称を使って。」


「そう。」


「兄に見えてしまう。」


透は静かに頷いた。


「それが。」


「うん。」


「この記録の一番怖いところかもしれない。」


透は少し考えた。


「怖い。」


「うん。」


「というより。」


「そう。」


女は言葉を探した。


「判断を間違えやすい。」


「そう。」


「名前がある。」


「人だと思う。」


「うん。」


「本人情報がある。」


「本人だと思う。」


「一致と書いてある。」


「同じ人だと思う。」


「そう。」


「でも。」


女は画面を指した。


「このシステムでは。」


「うん。」


「全部違う意味。」


「そう。」


彼女はもう一度、受信項目を見た。


名称。


業務区分。


入力経路。


照会先。


本人識別情報。


依頼者情報。


「受け取ったもの。」


「うん。」


「受け取らなかったもの。」


「うん。」


「分離されたもの。」


「そう。」


女は言った。


「兄の日に重要なのは。」


「うん。」


「何が入ったかだけじゃない。」


「そう。」


「何が入らなかったか。」


透は画面を見た。


「本人識別情報。」


「うん。」


「未受信。」


女は頷いた。


「それなら。」


「うん。」


「兄を探す次の場所は。」


「この記録の中ではない。」


「どこ?」


女は答えた。


「受信されなかった情報が。」


「うん。」


「本来どこから来るはずだったのか。」


透は画面を見た。


その下に、小さな項目があった。


「未受信項目――補完履歴。」


女はそれを見つけた。


「補完履歴。」


「うん。」


「本人識別情報。」


「そう。」


「未受信だった。」


「うん。」


「それなのに。」


彼女は画面を開いた。


「補完された記録がある。」


透は画面を見た。


一行だけだった。


「補完区分――手動確認。」


そして、その右側に時刻が表示されていた。


兄の日。


外部入力から四時間後。


女は画面から目を離さなかった。


「誰が確認した?」


透が開こうとした。


「氏名――」


画面に表示された文字を見て、透の手が止まった。


「権限制限。」


その下には、これまで見たことのない項目があった。


「補完元――記録外情報。」


二人はしばらく、その言葉を見つめていた。

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