第一百五十章 発動理由
「Q―1再参照条件――発動理由。」
女は画面を見た。
透はその項目を開いた。
最初に表示されたのは、短い一文だった。
「分類結果と既存記録の関連性が未確定の場合。」
女は黙った。
「未確定。」
「うん。」
「それだけ?」
「詳細がある。」
透は下へ進んだ。
「発動条件――三項目。」
「名称使用区分。」
「業務区分。」
「旧記録関連性。」
女は一つずつ読んだ。
「名称使用区分――業務名称。」
「うん。」
「業務区分――所在関連情報。」
「そう。」
「旧記録関連性――未確定。」
「うん。」
女は画面を見つめた。
「つまり。」
「うん。」
「兄の日だけ。」
「そう。」
「三つ目が未確定だった。」
「そう。」
「名称は業務名称。」
「うん。」
「業務区分は所在関連情報。」
「うん。」
「でも。」
「旧記録との関連性だけ。」
「未確定。」
「そう。」
女は少し考えた。
「だからQ―1に戻った。」
「そう。」
「人を確認するためじゃない。」
「うん。」
「旧記録との関係を確認するため。」
「そう。」
女は頷いた。
「ここも。」
「うん。」
「本人確認ではない。」
「そう。」
「関連性確認。」
「そう。」
女はノートを開いた。
「じゃあ。」
「うん。」
「兄の日の特殊性は。」
「うん。」
「旧記録との関連性が。」
「そう。」
「最初から確定していなかったこと。」
「そう。」
「他の初回使用では?」
透は比較表を開いた。
「一件目。」
「旧記録関連性――確認済み。」
「二件目。」
「確認済み。」
「三件目。」
「確認対象外。」
「四件目。」
「確認済み。」
女は画面を見る。
「兄の日だけ。」
「うん。」
「未確定。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「再参照が発動した。」
「そう。」
女は少し黙った。
「でも。」
「うん。」
「なぜ未確定だった?」
透は、その項目をさらに開いた。
「未確定理由――旧名称関連情報の対応先が複数存在。」
女は顔を上げた。
「複数?」
「うん。」
「何件?」
「二件。」
「R―3と。」
「もう一つ。」
透が画面を拡大した。
「P―4。」
女は黙った。
「また。」
「うん。」
「R―3。」
「そう。」
「P―4。」
「そう。」
「この二つが。」
「うん。」
「同じ旧名称に関連していた。」
「そう。」
女は考えた。
「だから。」
「うん。」
「新方式で入ってきた情報が。」
「そう。」
「どちらの旧記録につながるのか。」
「決められなかった。」
「そう。」
女は画面を見た。
「それで。」
「うん。」
「Q―1に送った。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「Q―1でも本人一致確認はしない。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「最後まで。」
「そう。」
「どちらの記録が誰のものかは。」
「分からない。」
「そう。」
女はゆっくり息を吐いた。
「じゃあ。」
「うん。」
「兄の日に起きたことを。」
「うん。」
「かなり正確に言うなら。」
透は黙っていた。
女が続ける。
「新方式で受け付けた外部入力が。」
「うん。」
「旧名称に関連する複数の旧記録と。」
「うん。」
「関連している可能性があった。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「どの記録に対応するのか。」
「確定できなかった。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「関連性確認が続いた。」
「そう。」
女は頷いた。
「これなら。」
「うん。」
「兄の日にQ―1が何度も出てくる理由は。」
「説明できる。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「兄自身が。」
「そう。」
「その旧記録のどちらかだったとは。」
「言えない。」
「そう。」
女は画面を見た。
「むしろ。」
「うん。」
「二つの旧記録が。」
「うん。」
「同じ名前に関係していたことが。」
「重要。」
「そう。」
女はR―3とP―4の記録を並べた。
「R―3。」
「業務名称。」
「うん。」
「P―4。」
「旧個人照会履歴。」
「そう。」
「片方は業務。」
「うん。」
「片方は個人照会。」
「そう。」
女は眉を寄せた。
「同じ名前が。」
「うん。」
「業務名称としても。」
「そう。」
「個人照会関連名称としても。」
「うん。」
「残っていた。」
「そう。」
女はしばらく黙った。
「だから。」
「うん。」
「名前だけを見ると。」
「そう。」
「同じものに見える。」
「うん。」
「でも。」
「うん。」
「管理上は。」
「別。」
「そう。」
女はノートに書いた。
「同じ名前。」
「別の管理対象。」
その下に、
「同じ名称。」
「別の業務区分。」
と続けた。
「これ。」
「うん。」
「兄のメッセージ。」
「どれ?」
「名前が同じなら、人も同じだと思うな。」
透は頷いた。
「まさに。」
女は少し考えた。
「でも。」
「うん。」
「彼がこの仕組みを知っていたとは限らない。」
「そう。」
「ただ。」
「うん。」
「結果として。」
「そう。」
「彼の言葉と。」
「うん。」
「記録の構造が。」
「そう。」
「重なっている。」
「そう。」
女は画面を見た。
「それだけにしておく。」
「うん。」
「意味を作りすぎない。」
「そう。」
彼女は次の記録を開いた。
「二件の対応先。」
「うん。」
「R―3。」
「そう。」
「P―4。」
「そう。」
「この二つ。」
「うん。」
「いつから同じ名前を持っていた?」
透は検索した。
R―3の名称登録日。
P―4の名称使用記録。
二つを照合する。
「P―4の方が先。」
「どのくらい?」
「約二年。」
女が画面を見る。
「二年。」
「うん。」
「じゃあ。」
「うん。」
「その後に。」
「R―3で同じ名前が使われた。」
「そう。」
「それなら。」
「うん。」
「最初から業務名称だったわけじゃない。」
「そう。」
女はP―4の古い記録を開いた。
「登録目的――個人照会。」
「うん。」
「処理内容――外部照会受付。」
「そう。」
「名称照合。」
「うん。」
「本人一致確認――実施。」
女は止まった。
「実施。」
「そう。」
「いつ?」
透が日付を見る。
「初期登録時。」
「結果は?」
「本人確認済み。」
女は画面を見つめた。
「P―4には。」
「うん。」
「一度。」
「そう。」
「本人確認済みの記録がある。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「現在のP―4―003では。」
「本人一致確認――未実施。」
「そう。」
女は少し考えた。
「つまり。」
「うん。」
「同じP―4でも。」
「そう。」
「処理の目的によって。」
「うん。」
「本人確認をしたり。」
「そう。」
「しなかったりする。」
「そう。」
女は頷いた。
「ここ。」
「うん。」
「重要。」
「何が?」
「本人確認済みという記録があっても。」
「うん。」
「その後のすべての処理で。」
「そう。」
「本人確認済みになるわけじゃない。」
「そう。」
「逆も。」
「うん。」
「本人一致確認未実施だから。」
「そう。」
「過去に一度も確認されていないとは限らない。」
「そう。」
女はノートに書いた。
「確認は処理単位。」
「うん。」
「人単位ではない。」
「そう。」
「記録に『本人確認済み』と書いてあっても。」
「うん。」
「それはその時の処理について。」
「そう。」
女は画面を見た。
「じゃあ。」
「うん。」
「P―4―003が兄だと仮定しても。」
「うん。」
「現在の処理で本人確認されていないことは。」
「そう。」
「特別なことではない。」
「そう。」
「そして。」
「うん。」
「P―4―003が兄だという証拠も。」
「ない。」
「そう。」
女は頷いた。
「やっぱり。」
「うん。」
「番号だけでは足りない。」
「そう。」
彼女はR―3の初期登録も開いた。
「R―3。」
「うん。」
「登録時。」
「うん。」
「本人識別用途――禁止。」
「そう。」
「つまり。」
「うん。」
「同じ名前でも。」
「うん。」
「最初から個人識別に使えないようにしていた。」
「そう。」
女はR―3とP―4を見比べた。
「一方は。」
「個人照会。」
「うん。」
「一方は。」
「業務照会。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「名前が同じ。」
「そう。」
女は静かに言った。
「だから。」
「うん。」
「名前が橋になっている。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「橋を渡った先が。」
「うん。」
「同じ人とは限らない。」
「そう。」
女は画面を閉じた。
「兄の日の未確定。」
「うん。」
「その理由は。」
「うん。」
「同じ名前が。」
「そう。」
「別の管理体系に存在していたから。」
「そう。」
「そして。」
「うん。」
「新方式は。」
「うん。」
「その名前を業務名称として受け取った。」
「そう。」
「旧記録側には。」
「うん。」
「個人照会関連名称も残っていた。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「どちらに関連するのか。」
「確定できなかった。」
「そう。」
女はしばらく黙った。
「これ。」
「うん。」
「嘘じゃない。」
透は彼女を見る。
「何が?」
「記録のどれも。」
「うん。」
「嘘をついているわけじゃない。」
「そう。」
「名前は本当に一致している。」
「うん。」
「業務区分も本当に違う。」
「そう。」
「関連情報も本当にある。」
「うん。」
「本人一致確認も本当にしていない。」
「そう。」
女は静かに言った。
「全部、本当。」
透は答えなかった。
「でも。」
「うん。」
「全部を一緒にすると。」
「そう。」
「別の意味になる。」
「そう。」
女は画面を見つめた。
「これが。」
「うん。」
「一番怖い。」
透は何も言わなかった。
女はすぐに言い直した。
「怖いというより。」
「うん。」
「間違えやすい。」
「そう。」
「一つ一つは正しい。」
「うん。」
「でも。」
「うん。」
「つなぎ方を間違えると。」
「そう。」
「存在しない人や出来事まで。」
「うん。」
「作れてしまう。」
透は頷いた。
そのとき、画面の下に新しい記録が表示された。
「未確定関連性――追加確認結果。」
女が見る。
「関連候補――二件。」
「R―3。」
「P―4。」
そして最後に、
「追加情報――第三の旧記録あり。」
女は動きを止めた。
「第三。」
透も画面を見た。
「二件じゃなかった。」
「うん。」
「最初の関連性評価では。」
「二件。」
「でも。」
「うん。」
「追加確認で。」
「第三の記録が出てきた。」
女はその記録番号を見た。
そこには、
「旧管理系統――照会連絡記録」
とだけ表示されていた。
番号はまだ開示されていなかった。
「これ。」
女が言った。
「R―3でも。」
「うん。」
「P―4でもない。」
「そう。」
「兄の日の処理が。」
「うん。」
「何に関連していたのか。」
「そう。」
「まだ一つ。」
彼女は画面を見た。
「残っている。」




