第一百四十九章 前日設定との一致
「入力元条件――前日設定との一致。」
女は、その一行を見た。
「一致。」
透は画面を見ていた。
「何と何が?」
「前日に設定された外部連携方式と。」
「うん。」
「当日の入力条件。」
女は眉を寄せた。
「それだけ?」
「詳細がある。」
透は下へ進んだ。
「比較項目――連携方式。」
「うん。」
「業務区分。」
「うん。」
「入力経路。」
「そう。」
女は画面を見た。
「三つ。」
「うん。」
「前日に設定したものと。」
「そう。」
「当日に入力されたものを。」
「そう。」
「照合した。」
「うん。」
女はノートを開いた。
「じゃあ。」
「うん。」
「これは本人確認じゃない。」
「そう。」
「入力が新しい方式に従っているかの確認。」
「そう。」
女は頷いた。
「結果は?」
透が読む。
「連携方式――一致。」
「業務区分――一致。」
「入力経路――一致。」
女は少し黙った。
「全部一致。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「新方式として受け付けた。」
「そう。」
「兄の日に。」
「うん。」
「新方式が正常に動いた。」
「そう。」
女は画面を見つめた。
「それだけなら。」
「うん。」
「兄の存在とは関係ない。」
「そう。」
「ただ。」
「うん。」
「その日に。」
「そう。」
「この方式を使う入力が来た。」
「うん。」
「それが。」
「外部からだった。」
「そう。」
女は指を止めた。
「外部。」
「うん。」
「誰から?」
「記録対象外。」
「依頼者情報は?」
「別管理。」
「見られない。」
「権限制限。」
女は少し考えた。
「X―4。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「兄の日のX―4参照は。」
「依頼者情報を見ている。」
「そう。」
「でも本人一致確認はしていない。」
「そう。」
「そして。」
「うん。」
「その情報が。」
「うん。」
「新方式の入力条件と一致した。」
「そう。」
女は画面を見た。
「つまり。」
「うん。」
「依頼者が誰かは分からない。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「依頼者の区分が外部だった。」
「そう。」
「入力経路が業務窓口だった。」
「うん。」
「業務区分が所在関連情報だった。」
「そう。」
「連携方式が現行方式だった。」
「そう。」
女はノートに書いた。
「人は分からない。」
「うん。」
「条件は分かる。」
「そう。」
彼女はその二行を見た。
「また同じ。」
「何が?」
「人が消えて。」
「うん。」
「条件だけが残る。」
透は答えなかった。
女はさらに詳細を開いた。
「前日設定。」
そこには、変更された条件が並んでいた。
「名称情報――分離。」
「業務区分――独立。」
「連携方式――現行方式。」
「個人識別情報――変換対象外。」
女は読む。
「この設定。」
「うん。」
「前日に作られた。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「設定理由は。」
透が読む。
「旧記録互換性維持。」
「また。」
「うん。」
「旧記録。」
「そう。」
女は画面を見た。
「新方式を作ったのに。」
「うん。」
「目的は古い記録を使い続けること。」
「そう。」
「新しくするために。」
「うん。」
「古いものを残す。」
「そう。」
「それで。」
「うん。」
「新しいものと古いものをつなぐ。」
「そう。」
女は小さく息を吐いた。
「それなら。」
「うん。」
「新方式の初回使用日には。」
「うん。」
「当然、旧記録を参照することになる。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「兄の日にR―3やP―4が出てきた。」
「可能性がある。」
「そして。」
「うん。」
「Q―1も。」
「そう。」
「古い個人識別情報を分離したまま。」
「うん。」
「新方式で処理するため。」
「そう。」
女は黙った。
「じゃあ。」
「うん。」
「兄の日に起きたことの一部は。」
「うん。」
「システム移行の初回処理だった。」
「そう。」
「それなら。」
「うん。」
「記録が多くなるのも不思議じゃない。」
「そう。」
女はノートをめくった。
「でも。」
「うん。」
「まだ一つ。」
「何?」
「前日設定との一致確認。」
「うん。」
「誰がやった?」
「確認者区分――登録あり。」
「所属?」
「C―12。」
「権限?」
「M―2。」
「氏名?」
「権限制限。」
女は黙った。
「前日の設定者も。」
「うん。」
「C―12。」
「そう。」
「M―2。」
「そう。」
「当日の確認者も。」
「そう。」
「C―12。」
「うん。」
「M―2。」
「そう。」
女は画面を見た。
「同じ所属。」
「うん。」
「同じ権限。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「同じ人とは限らない。」
「そう。」
女は頷いた。
「ここ。」
「うん。」
「人を決められないようになっている。」
「記録上はそう。」
「意図的?」
透は少し考えた。
「それは分からない。」
女は頷いた。
「そう。」
「個人情報を業務記録から分離した結果。」
「うん。」
「自然にそうなっている可能性もある。」
「そう。」
女はその言葉を受け入れた。
「分離されたから。」
「うん。」
「人を追うには。」
「そう。」
「別の記録が必要になる。」
「そう。」
「それがX―4。」
「うん。」
「J―3。」
「そう。」
「そして。」
「Q―1。」
「うん。」
女は画面を見た。
「三つとも。」
「うん。」
「役割が違う。」
「そう。」
「J―3は担当者情報。」
「うん。」
「X―4は外部連携と依頼者情報。」
「そう。」
「Q―1は分離後個人識別情報。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「一つの記録から人を特定することができない。」
「そう。」
女は静かに言った。
「だからこそ。」
「うん。」
「人を探すなら。」
「うん。」
「記録を横断する必要がある。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「横断すると。」
「そう。」
「別の意味の記録まで一緒に拾う。」
「うん。」
女は画面を見た。
「だから。」
「うん。」
「今まで。」
「うん。」
「同じ名前。」
「そう。」
「同じ番号。」
「うん。」
「同じ分類。」
「そう。」
「全部が同じものに見えた。」
「うん。」
「でも。」
「そう。」
「実際には。」
彼女は一つずつ数えた。
「人。」
「業務。」
「経路。」
「識別子。」
「記録。」
「それぞれ別だった。」
透は頷いた。
女は次の記録を開いた。
「前日設定との一致確認――過去履歴。」
そこには、初回使用日の記録だけではなく、過去のテスト運用が並んでいた。
「試験入力――三件。」
「三件。」
「いつ?」
「前日の午前。」
女が顔を上げた。
「前日の午前?」
「うん。」
「本番変更は?」
「前日の午後。」
女は画面を見つめた。
「じゃあ。」
「うん。」
「兄の日の前日に。」
「そう。」
「午前中、試験入力。」
「うん。」
「午後、正式変更。」
「そう。」
「翌日、初回本番。」
「そう。」
女はゆっくり言った。
「かなり普通の流れ。」
「そう。」
「試験して。」
「うん。」
「設定して。」
「うん。」
「翌日に使う。」
「そう。」
「兄の日だから起きたわけじゃない。」
「そう。」
女は頷いた。
「これなら。」
「うん。」
「前日の変更自体を。」
「兄と直接結びつける理由は弱くなる。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「兄の日に。」
「うん。」
「初回本番が来たことは事実。」
「そう。」
女は試験入力の詳細を開いた。
「一件目。」
「業務区分――外部照会対応。」
「二件目。」
「業務区分――業務名称照会。」
「三件目。」
透が少し止まった。
「どうした?」
「所在関連情報。」
女は画面を見た。
「三件目だけ。」
「そう。」
「本番と同じ。」
「業務区分は同じ。」
「入力経路は?」
「連携システム。」
「兄の日は?」
「業務窓口。」
女は頷いた。
「じゃあ。」
「うん。」
「三件目の試験と兄の日の本番は。」
「業務区分だけ同じ。」
「入力経路が違う。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「同じ処理とは言えない。」
「そう。」
女は試験記録をさらに開いた。
「名称使用区分。」
「試験――旧業務名称。」
「兄の日――業務名称。」
女は画面を見た。
「ここも違う。」
「そう。」
「つまり。」
「うん。」
「兄の日の本番は。」
「うん。」
「試験記録をそのまま実行したわけではない。」
「そう。」
「本番では。」
「うん。」
「名称区分も変わっている。」
「そう。」
女はしばらく考えた。
「それなら。」
「うん。」
「なぜ本番では。」
「うん。」
「旧業務名称ではなく。」
「そう。」
「業務名称になった?」
透は検索した。
「変更履歴がある。」
「何?」
「前日の午後。」
「また。」
「うん。」
「名称使用区分の変更。」
「そう。」
「旧業務名称から業務名称。」
女は画面を見た。
「本番の直前。」
「そう。」
「理由は?」
透が読む。
「業務再編対応。」
「また業務再編。」
「そう。」
女は黙った。
「これ。」
「うん。」
「今まで何度も出てきた。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「毎回意味が違う可能性がある。」
「そう。」
「業務再編という言葉だけでは。」
「うん。」
「何が変わったのか分からない。」
「その通り。」
女は詳細を開いた。
「変更対象――旧名称使用区分。」
「変更前――旧業務名称。」
「変更後――業務名称。」
「個人情報――変更なし。」
「旧記録――保存。」
「検索索引――更新。」
女は指を止めた。
「検索索引。」
「うん。」
「また。」
「そう。」
「これで。」
「うん。」
「兄の日の名称検索が。」
「うん。」
「業務名称として返ってきた。」
「そう。」
女は画面を見た。
「つまり。」
「うん。」
「兄の日の検索結果が。」
「うん。」
「兄の日より前の変更によって決まっていた。」
「そう。」
「兄が来たから名前の意味が変わったわけではない。」
「そう。」
女は頷いた。
「重要。」
「うん。」
「人が来たから。」
「うん。」
「名前が変わったわけじゃない。」
「そう。」
「名前の分類が先に変わっていた。」
「そう。」
「その後。」
「うん。」
「その名前が使われた。」
「そう。」
女は静かに言った。
「だから。」
「うん。」
「記録上は。」
「うん。」
「名前が兄につながったように見える。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「実際には。」
「うん。」
「名前の分類が先に動いていた。」
「そう。」
女はノートに書いた。
「先に分類。」
「後に使用。」
その下に、
「使用者――不明。」
「対象者――不明。」
と書いた。
「ここまで来ると。」
「うん。」
「兄の日の記録の多くは。」
「そう。」
「兄を中心に動いていない。」
「そう。」
「既に動いていた仕組みの中に。」
「うん。」
「兄の日の情報が入った。」
「可能性がある。」
女は頷いた。
「でも。」
「うん。」
「それなら。」
彼女は画面の一番下を見た。
「どうして。」
「何が?」
「兄の日の処理だけ。」
「うん。」
「その後、Q―1に何度も戻っている?」
透は画面を確認した。
兄の日。
翌日。
二日後。
四日後。
「そこだけは。」
「うん。」
「まだ残っている。」
「そう。」
女は静かに言った。
「システム変更だけなら。」
「うん。」
「他の試験入力や初回入力にも。」
「そう。」
「同じような戻り方があるはず。」
「そう。」
「比較しよう。」
透は過去の初回使用記録を検索した。
数件が表示された。
女は一件ずつ確認した。
「一件目。」
「Q―1への再参照なし。」
「二件目。」
「なし。」
「三件目。」
「一件。」
「四件目。」
「なし。」
「兄の日。」
「三回。」
女は画面を見つめた。
「やっぱり。」
透は何も言わなかった。
「新方式の初回使用だから。」
「うん。」
「というだけでは説明できない。」
「そう。」
「兄の日には。」
「うん。」
「他の初回使用とは違う何かがある。」
「そう。」
女は検索結果を見た。
その違いを示す項目が、画面の下に一つだけ残っていた。
「Q―1再参照条件――発動理由。」
女は指を止めた。
「これ。」
「うん。」
「ここに。」
「そう。」
「兄の日だけの理由があるかもしれない。」
透は、その項目を開いた。




