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嘘の向こう側  作者: 亀


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第一百四十七章 旧連携障害記録

「旧連携障害記録。」


女は、その名前を見た。


「三年前。」


「うん。」


「また、三年前。」


「そう。」


透は記録を開いた。


最初に表示されたのは、障害発生日時だった。


三年前のある朝。


「障害区分――外部連携。」


「うん。」


「影響範囲――旧識別子から現行識別子への変換。」


女が画面を見た。


「ここ。」


「そう。」


「D―41―09への移行。」


「うん。」


「この障害がきっかけ。」


「そう。」


透はさらに下へ進んだ。


「障害内容――旧識別子の一部が現行識別子へ自動変換できない。」


「一部?」


「うん。」


「全部じゃない。」


「そう。」


「何が変換できなかった?」


透が詳細を開く。


「旧識別子の形式。」


「うん。」


「業務区分。」


「うん。」


「外部連携方式。」


「そう。」


「三つ。」


女は眉を寄せた。


「また三つ。」


「そう。」


「名前ではない。」


「うん。」


「業務区分。」


「そう。」


「連携方式。」


「うん。」


「この三つの対応が不完全だった。」


「そう。」


女は画面を見た。


「じゃあ。」


「うん。」


「K―3―連携からD―41―09へ変わったとき。」


「うん。」


「単純に番号を置き換えただけじゃない。」


「そう。」


「周辺の情報も変換する必要があった。」


「うん。」


「その一部ができなかった。」


「そう。」


女は黙った。


「だから。」


「うん。」


「旧記録を残した。」


「そう。」


「旧名称も残した。」


「うん。」


「旧識別子も残した。」


「そう。」


「そして。」


「うん。」


「新しい番号を付けた。」


「そう。」


女はノートを開いた。


「旧。」


「うん。」


「現行。」


「うん。」


「対応表。」


「そう。」


「これまで見てきたもの。」


「うん。」


「全部、ここから続いている。」


透は頷いた。


「可能性が高い。」


女は障害記録の次の項目を開いた。


「障害対応。」


そこには、


「旧識別子――保存」


「現行識別子――新設」


「対応関係――別管理」


「自動変換――一部停止」


とあった。


女が止まった。


「自動変換、一部停止。」


「そう。」


「つまり。」


「うん。」


「すべてを新しい番号に移さなかった。」


「そう。」


「旧番号が残った。」


「うん。」


「新番号も使われた。」


「そう。」


女は画面を見つめた。


「だから。」


「うん。」


「同じ業務を。」


「うん。」


「古い番号でも。」


「そう。」


「新しい番号でも。」


「そう。」


「追える。」


「うん。」


「でも。」


「うん。」


「番号が違うから。」


「うん。」


「別の処理に見える。」


「そう。」


女は静かに言った。


「これ。」


「うん。」


「かなり大きい。」


透は彼女を見る。


「何が?」


「記録を見る人によって。」


「うん。」


「同じものが別のものに見える。」


「そう。」


「逆もある。」


「うん。」


「別のものが。」


「うん。」


「同じものとして扱われる。」


「そう。」


女は少し考えた。


「それを。」


「うん。」


「システムが意図的にやっているわけではない。」


「そう。」


「業務を継続するために。」


「うん。」


「古いものを残して。」


「そう。」


「新しいものを追加した。」


「うん。」


「その結果。」


「うん。」


「人から見ると。」


「そう。」


「意味が混ざる。」


透は頷いた。


女は障害対応の記録をさらに開いた。


「再発防止策。」


「うん。」


「何?」


「旧識別子の互換性維持。」


「そう。」


「現行識別子との対応表保存。」


「うん。」


「業務名称による検索継続。」


「そう。」


「個人識別情報――変換対象外。」


女はそこで止まった。


「個人識別情報。」


「うん。」


「変換対象外。」


「そう。」


「なぜ?」


透が理由を開いた。


「個人情報の業務連携情報への混入防止。」


女は黙った。


「つまり。」


「うん。」


「番号を移す。」


「そう。」


「業務情報を移す。」


「うん。」


「でも。」


「うん。」


「個人情報は移さない。」


「そう。」


女は画面を見た。


「だから。」


「うん。」


「D―41―09に兄の個人情報が入っているとは限らない。」


「そう。」


「そもそも。」


「うん。」


「D―41―09は。」


「業務連携識別子。」


「そう。」


「人を識別する番号ではない。」


「うん。」


女は頷いた。


「それなら。」


「うん。」


「兄の日にD―41―09が使われたことだけでは。」


「兄を示す番号にはならない。」


「そう。」


「むしろ。」


「業務経路を示している。」


「そう。」


女はノートに書いた。


「人の番号ではない。」


「うん。」


「経路の番号。」


「そう。」


しばらく二人は画面を見ていた。


やがて女が言った。


「でも。」


「うん。」


「一つ。」


「何?」


「三年前の障害。」


「うん。」


「ここに。」


彼女は一行を指した。


「『旧識別子の一部が現行識別子へ自動変換できない』。」


「そう。」


「その後。」


「うん。」


「手動対応がある。」


「ある。」


「何をした?」


透が開く。


「旧識別子と現行識別子の対応付け。」


「誰が?」


「権限区分――M―2管理権限。」


女が眉を寄せた。


「またM―2。」


「うん。」


「でも。」


「うん。」


「三年前のM―2。」


「現在のM―2とは同じではない。」


「そう。」


「当時のM―2保持者。」


透が履歴を開いた。


「二人。」


「二人。」


「一人は旧外部照会管理。」


「うん。」


「もう一人は業務再編準備。」


「そう。」


「名前は?」


「権限制限。」


女は頷いた。


「ここでも。」


「うん。」


「人は見えない。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「役割は残っている。」


「そう。」


女は二人の権限履歴を開いた。


一人目。


「M―2――継続。」


二人目。


「M―2――新規付与。」


女が見る。


「一人は継続。」


「そう。」


「一人は新規。」


「うん。」


「そして。」


彼女は次の記録を開いた。


「対応作業――共同確認。」


女は止まった。


「共同。」


「うん。」


「二人で確認した?」


透が詳細を読む。


「共同確認――実施。」


「確認対象――旧識別子と現行識別子の対応関係。」


「確認結果――対応可能。」


「個人識別情報――参照せず。」


女は黙った。


「二人で。」


「うん。」


「番号の対応だけを確認した。」


「そう。」


「人は見ていない。」


「そう。」


女は少し考えた。


「じゃあ。」


「うん。」


「D―41―09がK―3―連携から来たことは。」


「うん。」


「二人の共同確認で決められた。」


「正確には。」


透が訂正する。


「候補となる対応関係を確認した。」


「そして。」


「登録。」


「そう。」


「その後。」


「うん。」


「自動処理で使われるようになった。」


「そう。」


女は画面を見た。


「ここ。」


「うん。」


「重要。」


「何が?」


「誰が決めたかではなく。」


「うん。」


「どうやって決まったか。」


「そう。」


「個人情報を見ずに。」


「うん。」


「旧識別子と業務区分と連携方式を見て。」


「そう。」


「対応付けた。」


「うん。」


女は静かに言った。


「だから。」


「うん。」


「その対応関係が正しいかどうかを。」


「うん。」


「人について確認したわけではない。」


「そう。」


「業務として正しいか確認した。」


「そう。」


女はノートに書いた。


「業務としての正しさ。」


「うん。」


「本人としての正しさ。」


「別。」


「そう。」


女はしばらく黙っていた。


「兄の日に。」


「うん。」


「D―41―09が使われた。」


「そう。」


「その番号が。」


「うん。」


「八年前のK―3―連携とつながっている。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「そのつながりは。」


「業務経路として。」


「そう。」


「人としてではない。」


「うん。」


女は頷いた。


「分かった。」


透は何も言わなかった。


「少なくとも。」


彼女は続けた。


「ここまでの記録では。」


「うん。」


「番号を人に戻すことはできない。」


「そう。」


「むしろ。」


「うん。」


「戻してはいけないように設計されている。」


透は頷いた。


「その可能性が高い。」


女は画面を見た。


「でも。」


「うん。」


「障害記録には。」


「うん。」


「もう一つ。」


「何?」


彼女は一行を指した。


「変換できなかった項目――『外部連携方式』。」


「うん。」


「その対応結果が。」


「うん。」


「『手動確認』になっている。」


「そう。」


「じゃあ。」


女は画面を拡大した。


「K―3―連携からD―41―09へ変換するとき。」


「うん。」


「外部連携方式だけ。」


「そう。」


「自動では決められなかった。」


「うん。」


「人が確認した。」


「そう。」


「その確認記録は?」


透は検索した。


しばらくして、一件の記録が表示された。


「外部連携方式――手動確認履歴。」


女は画面を見た。


「これ。」


「うん。」


「三年前。」


「そう。」


「でも。」


彼女は日付を確認した。


「確認日は。」


透が読む。


「兄の日の前日。」


二人とも黙った。


「前日。」


「うん。」


「三年前じゃない。」


「そう。」


「兄の日の前日。」


「うん。」


女は画面から目を離さなかった。


「つまり。」


透はまだ答えなかった。


女が静かに言った。


「D―41―09の外部連携方式が。」


「うん。」


「兄の日の前日に。」


「そう。」


「手動で確認されている。」


画面には、その確認者について、


「所属――C―12」


「権限――M―2」


「氏名――権限制限」


と表示されていた。


そして、確認理由は、


「旧識別子対応関係の再確認」


だった。

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