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嘘の向こう側  作者: 亀


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第一百四十六章 八年前

「旧管理系統記録――参照開始。」


透は、表示された日付を確認した。


八年前。


女は画面を見た。


「第七管理系統になる前。」


「うん。」


「さらに前。」


「そう。」


透は記録を開いた。


最初に表示されたのは、現在の第七管理系統と旧管理系統の対応表だった。


「旧管理系統――外部照会管理。」


「現行――第七管理系統。」


「移行理由――業務統合。」


女は首を傾げた。


「これだけ?」


「表面上は。」


「詳細は?」


透が開く。


「旧管理系統の構成。」


その下に複数の項目が並んでいた。


「外部照会受付。」


「照会先管理。」


「旧記録参照。」


「名称対応。」


「所在関連情報。」


女はそこで止まった。


「八年前には、もう『所在関連情報』がある。」


「そう。」


「じゃあ。」


「うん。」


「七年前に最初に定義されたわけじゃない。」


「定義変更の記録が七年前にあるだけ。」


「つまり。」


「それ以前から使われていた。」


女は頷いた。


「言葉が先にあって。」


「うん。」


「後から定義を整理した。」


「そう。」


女はノートを開いた。


「言葉。」


「うん。」


「実務。」


「うん。」


「定義。」


「そう。」


「この三つが、同じ時期に始まったとは限らない。」


透は頷いた。


「そう。」


彼女はさらに下を見た。


「八年前の所在関連情報。」


「うん。」


「処理目的――照会先確認。」


「そう。」


「対象――外部照会。」


「うん。」


「照合方法――名称照合。」


「そう。」


「本人確認――記録対象外。」


女は黙った。


「また。」


「うん。」


「本人確認は対象外。」


「そう。」


「八年前から。」


「うん。」


「名前を使って。」


「そう。」


「業務上の照会先を探していた。」


「そう。」


女は画面を見つめた。


「じゃあ。」


「うん。」


「今まで出てきた名称照合の仕組み。」


「うん。」


「兄の日だけじゃない。」


「そう。」


「少なくとも八年前から。」


「うん。」


「ずっと続いている。」


「そう。」


女は一つ前の記録に戻った。


「八年前の担当区分。」


透が開く。


「外部照会管理担当。」


「人数は?」


「四人。」


「M―2は?」


「当時は別の権限名。」


「何?」


「M―2の前身。」


女が顔を上げた。


「前身?」


「原記録参照権限。」


「名称は?」


透が読む。


「K―3。」


女はその文字を見た。


「K―3。」


「うん。」


「M―2と同じ?」


「権限の範囲を比較すると、完全には同じじゃない。」


「違うところは?」


「K―3は旧記録参照だけ。」


「M―2は?」


「旧記録参照に加えて、処理条件確認と一部の外部連携管理。」


女は頷いた。


「つまり。」


「うん。」


「権限が拡張されている。」


「そう。」


「名前だけ変わったわけじゃない。」


「そう。」


「業務の範囲が増えた。」


「うん。」


女は画面を見た。


「じゃあ。」


「うん。」


「M―2を持っているからといって。」


「うん。」


「八年前のK―3を持っていた人と同じ仕事をしているとは限らない。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「権限の流れには連続性がある。」


「そう。」


女はその言葉をノートに書いた。


「権限の連続性。」


「うん。」


「人の連続性ではない。」


「そう。」


彼女はペンを止めた。


「これも。」


「うん。」


「兄の言葉に近い。」


「何が?」


「名前が同じなら、人も同じだと思うな。」


「うん。」


「権限が同じように見えても。」


「うん。」


「人が同じとは限らない。」


透は頷いた。


「そう。」


女はさらに古い記録を開いた。


「K―3の最初の登録。」


「ある。」


「いつ?」


「九年前。」


女が画面を見る。


「八年前より前。」


「そう。」


「さらに下。」


透が開いた。


「登録理由――旧照会業務対応。」


「旧照会業務。」


「うん。」


「さらに前がある。」


「ある。」


「何年前?」


「十一年前。」


女は画面を見た。


「そこまで戻る?」


透は答えなかった。


女はしばらく考えた。


「戻る。」


「うん。」


「兄を探すためじゃない。」


「そう。」


「この仕組みが、何を意味していたのか知るため。」


「うん。」


透は十一年前の記録を開いた。


そこには、現在とは違う名称が残っていた。


「照会連絡管理。」


「所在関連情報――該当なし。」


女が止まった。


「該当なし。」


「うん。」


「この時点では。」


「そう。」


「所在という分類はまだない。」


「そう。」


「じゃあ。」


女は画面を見た。


「今の『所在』は。」


「後から作られた。」


「うん。」


「何をきっかけに?」


透が記録を探した。


変更履歴が一件見つかった。


「所在関連情報――新設。」


「変更日――九年前。」


「変更理由――照会先情報の統合。」


女は黙った。


「九年前。」


「うん。」


「K―3が作られた時期と近い。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「同じ日ではない。」


「そう。」


女は変更前の定義を開いた。


「旧分類。」


「照会先情報。」


「変更後。」


「所在関連情報。」


「定義。」


透が読む。


「処理対象が、現在どの管理経路に属するかを示す情報。」


女は画面を見た。


「やっぱり。」


「うん。」


「場所じゃない。」


「そう。」


「管理経路。」


「うん。」


「この言葉は。」


彼女は少し考えた。


「最初から人の居場所を意味していなかった。」


「そう。」


女は静かに頷いた。


「じゃあ。」


「うん。」


「兄のメッセージにある『場所』と。」


「うん。」


「記録の『所在』は。」


「同じ言葉ではあるけど。」


「意味が違う。」


「そう。」


女はノートに書いた。


「場所。」


「人の位置。」


「所在。」


「管理経路上の位置。」


その二つを線で分けた。


「ここを混ぜない。」


「うん。」


女は次の記録を開いた。


「照会先情報の統合。」


「うん。」


「これが九年前の変更理由。」


「そう。」


「統合前。」


「複数の照会先が別々に管理されていた。」


「うん。」


「統合後。」


「所在関連情報として一つにまとめた。」


「そう。」


「そのとき。」


透が別の欄を開く。


「旧照会先――三系統。」


女が見る。


「外部照会。」


「うん。」


「業務名称。」


「うん。」


「連絡経路。」


「そう。」


女は画面を見つめた。


「この三つ。」


「うん。」


「今まで全部出てきた。」


「そう。」


「外部。」


「うん。」


「名称。」


「うん。」


「経路。」


「そう。」


女はゆっくり言った。


「兄の日の記録が複雑だった理由。」


「うん。」


「最初から一つの情報じゃなかった。」


「そう。」


「昔は三つに分かれていた情報を。」


「うん。」


「後から一つの『所在関連情報』として扱うようになった。」


「そう。」


「だから。」


彼女は画面を見た。


「所在という一つの言葉の中に。」


「うん。」


「外部照会も。」


「うん。」


「業務名称も。」


「うん。」


「連絡経路も。」


「そう。」


「入っている。」


透は頷いた。


女は少し黙っていた。


「なら。」


「うん。」


「兄の日に『所在関連情報』として入ってきたものが。」


「うん。」


「具体的にどれだったのか。」


「まだ分からない。」


「そう。」


「記録の分類だけでは。」


「うん。」


「三つのどれか。」


「そう。」


「あるいは複数。」


「そう。」


女は画面を見た。


「でも。」


「うん。」


「ここで一つ。」


「何?」


「兄の日の記録には。」


彼女は指を止めた。


「旧名称関連情報が含まれていた。」


「そう。」


「外部連携もあった。」


「うん。」


「入力経路も業務窓口。」


「そう。」


「だから。」


女は考えた。


「旧来の三つの情報が。」


「うん。」


「一つの処理の中に重なっていた可能性がある。」


「そう。」


「それで。」


「うん。」


「自動分類が。」


「所在関連情報。」


「そう。」


女は黙った。


「でも。」


「うん。」


「ここでも。」


「そう。」


「兄だとは確認されていない。」


「うん。」


「だから。」


彼女はノートに書いた。


「構造は分かった。」


「うん。」


「対象は分からない。」


「そう。」


女はその言葉を見た。


「対象は分からない。」


そして、その下にもう一行書いた。


「構造が分かることと、人が分かることは別。」


透は何も言わなかった。


そのとき、画面の端に一つの古い記録が表示された。


「九年前――照会先情報統合前確認。」


女がそれを見る。


「統合前確認。」


「うん。」


「何を確認した?」


透が開いた。


そこには三つの照会先が並んでいた。


「外部照会先。」


「業務名称照会先。」


「連絡経路照会先。」


そして、その下に一つだけ、


「共通識別子――設定あり。」


と表示されていた。


女は動きを止めた。


「共通識別子。」


「うん。」


「これ。」


「そう。」


「今のD―41―09と関係がある?」


透は記録を開いた。


そこには、共通識別子の移行履歴が残っていた。


「旧識別子――K―3―連携。」


「現行識別子――D―41―09。」


女は画面を見た。


「同じもの?」


透は慎重に答えた。


「完全に同じとは書いてない。」


「じゃあ。」


「旧識別子から現行識別子への対応関係がある。」


「それだけ。」


「うん。」


女はしばらく黙っていた。


「また。」


「うん。」


「名前が変わっている。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「経路は続いている。」


「そう。」


彼女は画面の二つの番号を見比べた。


「K―3―連携。」


「D―41―09。」


「八年以上離れている。」


「うん。」


「そして。」


彼女は言った。


「兄の日に使われたD―41―09には。」


「うん。」


「さらに古い番号の影がある。」


透は頷いた。


女は画面を閉じなかった。


「次は。」


「うん。」


「この二つの識別子が。」


「うん。」


「いつ、どうやって対応づけられたのか。」


画面には、その変更記録の参照先が表示されていた。


「移行根拠――旧連携障害記録。」


女はその文字を見た。


「また。」


「うん。」


「障害記録。」


透は画面を見つめた。


今度の記録日は、


三年前。


だった。

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