第一百四十二章 通知受信後
「Q―1通知受信後処理――詳細。」
透は、その記録を開いた。
最初に表示されたのは、受信時刻だった。
兄の日。
D―41―09による経路確認が行われた翌日ではない。
その日のうちだった。
女が画面を見た。
「関連性評価。」
「うん。」
「本人確認担当への通知。」
「そう。」
「その後にQ―1。」
「うん。」
「全部、同じ日に動いている。」
透は頷いた。
女は時刻を確認した。
「通知受信。」
「外部入力から四時間三十八分後。」
「関連性評価から十一分後。」
「そう。」
「Q―1参照。」
「その二分後。」
女は黙った。
「早い。」
「うん。」
「自動処理?」
透が詳細を見る。
「受信処理――自動。」
「Q―1参照も?」
「自動条件確認。」
「じゃあ。」
女は画面を見た。
「本人確認担当へ通知された後。」
「うん。」
「人が確認したとは限らない。」
「そう。」
「Q―1への参照も、自動条件で動いた。」
「うん。」
「また人が出てこない。」
透は何も言わなかった。
女は次の項目を開いた。
「受信内容。」
「関連可能性あり。」
「うん。」
「処理――分離後個人識別情報参照。」
「そう。」
「参照理由――通知内容確認。」
女が眉を寄せた。
「通知内容確認。」
「うん。」
「関連可能性があるから。」
「そう。」
「個人識別情報を参照した。」
「そう。」
「でも。」
彼女は次の行を読んだ。
「本人一致確認――未実施。」
「うん。」
女は黙った。
「やっぱり。」
「何が?」
「通知の内容を確認するために、個人識別情報を見る。」
「うん。」
「でも、その情報を使って本人かどうかは確認しない。」
「そう。」
「だから。」
彼女は言った。
「『見た』と『確認した』が、また分かれている。」
透は頷いた。
「そう。」
女はその下を見る。
「参照結果。」
「関連情報あり。」
「うん。」
「何の関連?」
「Q―1上では、R―3との関連。」
「人ではない。」
「そう。」
「旧記録との関連。」
「うん。」
女は少し黙った。
「じゃあ。」
「うん。」
「本人確認担当へ通知された『関連可能性あり』も。」
「うん。」
「人間関係の可能性とは限らない。」
「そう。」
「記録同士の関連。」
「うん。」
女はノートに書いた。
「関連可能性。」
その下に、
「記録関連。」
さらに、
「本人関連。」
と書いた。
「三つを分ける。」
透は頷いた。
「この記録では。」
「うん。」
「記録関連はある。」
「そう。」
「本人関連は確認されていない。」
「そう。」
「だから。」
女はペンを置いた。
「『関連がある』という言葉だけでは、何の関連か分からない。」
「うん。」
彼女は画面をスクロールした。
「Q―1参照後処理。」
「ある。」
「何?」
透が読む。
「分類結果更新。」
女が顔を上げた。
「更新?」
「うん。」
「何が?」
「関連性区分。」
「どう変わった?」
「未確定。」
「から?」
「確認対象。」
女は眉を寄せた。
「関連可能性ありから。」
「確認対象。」
「つまり。」
「関連があると確定したわけではない。」
「うん。」
「確認する対象として残した。」
「そう。」
女は少し考えた。
「じゃあ。」
「うん。」
「この段階では、まだ何も確定していない。」
「そう。」
「関連性がある。」
「可能性。」
「本人だ。」
「未確認。」
「同じ案件だ。」
「未確定。」
女は頷いた。
「でも。」
「うん。」
「『確認対象』になった。」
「そう。」
「だから。」
彼女は画面を見た。
「誰かが後から見れば。」
「うん。」
「重要な記録に見える。」
「そう。」
「実際には。」
「可能性を残しただけ。」
「うん。」
女はしばらく黙っていた。
「この後。」
「うん。」
「確認対象はどうなった?」
透が履歴を開く。
一件。
二件。
三件。
女が数える。
「三回。」
「うん。」
「同じQ―1記録が、その後三回参照されている。」
「そう。」
「いつ?」
一回目。
兄の日の翌日。
二回目。
二日後。
三回目。
四日後。
女は日付を確認した。
「四日後。」
「うん。」
「条件変更の初回適用日。」
「そう。」
女は画面を見た。
「三回目の参照。」
「うん。」
「条件変更後。」
「そう。」
「何のため?」
透が開く。
「旧名称関連情報再確認。」
女が止まった。
「また。」
「うん。」
「兄の日に出ていた処理。」
「そう。」
「条件変更後にも、もう一度確認している。」
「うん。」
女は記録を読む。
「参照対象――Q―1―117。」
「うん。」
「参照目的――条件変更後の関連性判定確認。」
「そう。」
「確認結果――条件適合。」
女は黙った。
「条件適合。」
「うん。」
「つまり。」
「新しい条件でも。」
「うん。」
「この記録は対象になった。」
「そう。」
「だから。」
彼女は画面を指した。
「兄の日の処理は、旧条件だから出た偶然ではない。」
透は少し考えた。
「そうとも言えるけど。」
「うん。」
「条件変更後にも、同じ記録が確認対象になった。」
「そう。」
「ただし。」
「うん。」
「変更後の条件で新しく関連性評価が出たわけではない。」
女は画面を見た。
「既存記録の再確認。」
「そう。」
「新しい評価ではない。」
「うん。」
「そこは分ける。」
「そう。」
女は頷いた。
「じゃあ。」
「うん。」
「条件変更後も。」
「うん。」
「Q―1―117は捨てられていない。」
「そう。」
「削除もされていない。」
「うん。」
「再結合もされていない。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「確認対象として残った。」
「そう。」
女はしばらく黙っていた。
「それなら。」
「うん。」
「この記録が何か特別だったのか。」
「まだ分からない。」
「でも。」
「うん。」
「少なくとも、条件変更後にも参照する価値があると判断された。」
「そういう記録。」
女は少し考えた。
「価値。」
「うん。」
「それも。」
「うん。」
「人についての価値ではない。」
「そう。」
「条件確認の価値。」
「うん。」
女は画面を見つめた。
「つまり。」
「うん。」
「兄の日に発生した一連の処理は。」
「うん。」
「その日だけで終わっていない。」
「そう。」
「翌日も。」
「うん。」
「二日後も。」
「そう。」
「四日後も。」
「うん。」
「記録の形を変えながら残っている。」
透は頷いた。
女はノートに時間を書いた。
「兄の日。」
「関連性評価。」
「翌日。」
「経路確定。」
「二日後。」
「条件変更。」
「四日後。」
「新条件適用。」
そして、その横に、
「Q―1―117――継続参照。」
と書いた。
「これ。」
女はその文字を見た。
「一つの出来事というより。」
「うん。」
「処理の連鎖。」
「そう。」
「誰か一人が動かした連鎖ではない。」
「うん。」
「自動処理もある。」
「そう。」
「業務連携もある。」
「うん。」
「権限もある。」
「そう。」
「そして、人が設定した条件もある。」
「うん。」
女は静かに言った。
「だから。」
「うん。」
「最初から最後まで一人を探すのは。」
「難しい。」
「そう。」
女は画面を閉じようとした。
そのとき、最後の参照履歴に一つだけ違う項目があった。
「参照目的――記録間整合性確認。」
女が手を止める。
「これ。」
透が見る。
「四日後。」
「うん。」
「条件変更後の参照。」
「そう。」
「でも。」
彼女は画面を拡大した。
「参照対象がQ―1だけじゃない。」
透は隣の項目を見る。
そこには、
「比較対象――R―3―044」
と表示されていた。
女は黙った。
「R―3―044。」
「うん。」
「これは。」
透が記録を開く。
「兄の日の外部照会受付に関連していたR―3記録。」
女は画面を見た。
「じゃあ。」
「うん。」
「四日後。」
「そう。」
「Q―1―117とR―3―044を。」
「比較している。」
「うん。」
女はゆっくり息を吐いた。
「今度は。」
「うん。」
「二つの記録を。」
「直接比べた。」
透は頷いた。
画面の下には、比較結果がまだ表示されていなかった。
「比較結果――詳細。」
その項目だけが、未確認のまま残っていた。




