第一百四十一章 照合結果
「連携識別子照合結果――詳細。」
透は、その記録を開いた。
最初に表示されたのは、D―41―09だった。
その下に、三つの項目が並んでいた。
「照合対象――外部入力」
「照合対象――第七管理系統」
「照合方法――連携識別子一致」
女は画面を見た。
「さっきと同じ。」
「うん。」
「番号が一致していることを確認した。」
「そう。」
「でも。」
彼女は少し考えた。
「番号が一致しているからといって。」
「うん。」
「外部入力と第七管理系統の情報が、同じ内容だとは限らない。」
「そう。」
「経路が同じだというだけ。」
透は頷いた。
「その可能性が高い。」
女は下へスクロールした。
「照合結果――一致。」
「うん。」
「一致条件は?」
透が開いた。
「識別子。」
「それだけ?」
「そう。」
女は小さく息を吐いた。
「また。」
「うん。」
「一致。」
「そう。」
「でも、人ではない。」
「そう。」
「内容でもない。」
「うん。」
「経路を示す番号。」
「そう。」
女は記録を見つめた。
「じゃあ、翌日に確認されたのは。」
「D―41―09が同じ番号だったこと。」
「うん。」
「それによって、外部入力が第七管理系統の連携経路に属していると判断された。」
「そう。」
「そして。」
透は次の項目を開いた。
「依頼者区分――変更。」
女が見る。
「変更前――外部。」
「うん。」
「変更後――業務連携先。」
「そう。」
「変更理由――連携経路確定。」
女は黙った。
「ここまでは分かる。」
「うん。」
「でも。」
「うん。」
「何を外部から受け取ったのか。」
透は詳細を開いた。
「内容――旧名称関連情報。」
「それだけ。」
「詳細は別管理。」
「個人識別情報は?」
「別管理。」
「依頼者情報は?」
「別管理。」
「つまり。」
女は画面を見た。
「経路は確定した。」
「うん。」
「でも。」
「うん。」
「中身はここには残っていない。」
「そう。」
「誰が何を依頼したのかも。」
「分からない。」
女はしばらく黙っていた。
「じゃあ。」
「うん。」
「この照合によって分かったのは。」
彼女は指を折った。
「外部入力がD―41―09という内部連携経路を通った。」
「うん。」
「その経路は第七管理系統につながっていた。」
「そう。」
「だから、外部入力を業務連携先として分類した。」
「うん。」
「それだけ。」
「そう。」
女は頷いた。
「それだけなのに。」
「うん。」
「最初は『外部』だったものが。」
「うん。」
「翌日には『業務連携先』になった。」
「そう。」
「記録を見る人は。」
「うん。」
「別のものになったと思うかもしれない。」
透は答えた。
「同じ情報の管理区分が変わっただけかもしれない。」
「そう。」
女は画面を閉じずに、別の項目を開いた。
「変更前後の関連性評価。」
「うん。」
「変更前は。」
透が読む。
「依頼者区分――外部。」
「変更後は。」
「業務連携先。」
「それで。」
「関連性――消失。」
女は眉を寄せた。
「じゃあ。」
「うん。」
「関連性がなくなったんじゃなくて。」
「うん。」
「関連性を判定する条件から外れた。」
透は頷いた。
「そういう見方ができる。」
「人同士の関係が切れたわけではない。」
「そう。」
「記録上の分類が変わった。」
「うん。」
女はノートを開いた。
「関連性消失。」
その下に、
「関係消失とは限らない。」
と書いた。
透はそれを見た。
「大事。」
「うん。」
女は続けた。
「でも。」
「うん。」
「それなら、なぜ翌日にわざわざ確認した?」
「連携経路が未確定だったから。」
「それは分かる。」
「うん。」
「でも。」
彼女は画面を指した。
「兄の日の時点で、D―41―09はすでに付いていた。」
「そう。」
「自動で付いていた。」
「うん。」
「なら。」
「うん。」
「翌日に人が確認する必要があったのか。」
透は履歴を見た。
「自動付与された番号が、正しい経路に対応しているかを確認するため。」
「つまり。」
「自動で付ける。」
「うん。」
「後から経路を確認する。」
「そう。」
「二段階。」
「うん。」
女は少し考えた。
「番号の付与と。」
「うん。」
「番号の意味の確定は。」
「別。」
「そう。」
「兄の日には番号だけ付いていた。」
「うん。」
「翌日に、その番号がどの経路を意味するか確認された。」
「そう。」
女は頷いた。
「それなら。」
「うん。」
「兄の日の時点では、D―41―09があっても。」
「まだ完全には意味が確定していなかった。」
「そう。」
「だから関連性評価では。」
「外部連携履歴あり。」
「として使われた。」
「うん。」
「翌日。」
「経路が確定した。」
「そう。」
「すると依頼者区分が変わった。」
「うん。」
女は画面を見つめた。
「じゃあ。」
「うん。」
「兄の日の処理は。」
彼女は言葉を選んだ。
「未確定の情報を使って判断していた可能性がある。」
透はすぐには答えなかった。
「そういう見方はできる。」
「でも。」
「うん。」
「未確定だったこと自体が異常とは限らない。」
「そう。」
「処理の順番として。」
「うん。」
「先に仮の分類をして。」
「後で経路を確定する。」
「そう。」
「普通にあり得る。」
「うん。」
女は頷いた。
「だから。」
「うん。」
「兄の日に間違った情報が使われた、とも言えない。」
「そう。」
「正しいかもしれない。」
「うん。」
「ただ、確定前の情報だった。」
「そう。」
女はしばらく画面を見ていた。
「ここまで来ると。」
「うん。」
「何かが隠されているというより。」
「うん。」
「途中の記録だけを見ると、後から意味が変わる。」
「そう。」
「そのこと自体が問題なのかもしれない。」
透は黙っていた。
女は続けた。
「兄の日の記録だけを見れば。」
「うん。」
「外部から誰かが情報を送った。」
「そう。」
「関連性があった。」
「うん。」
「本人確認担当へ送られた。」
「そう。」
「でも翌日を見ると。」
「うん。」
「その外部は、業務連携先になっている。」
「そう。」
「関連性も消えている。」
「うん。」
「本人確認もされていない。」
「そう。」
女はノートを閉じた。
「だから。」
「うん。」
「記録だけを順番に追わないと。」
「意味が逆になる。」
透は頷いた。
「そのために時間を追っている。」
「うん。」
女は画面を見た。
「でも。」
「うん。」
「まだ一つ足りない。」
「何?」
「D―41―09が、第七管理系統のどこへつながったのか。」
透が見る。
「第七管理系統。」
「うん。」
「それだけでは広い。」
「そう。」
「外部照会。」
「うん。」
「旧記録参照。」
「うん。」
「業務名称対応。」
「そう。」
女は言った。
「その中のどこに入ったのか。」
透は検索条件を変えた。
「D―41―09。」
「うん。」
「連携先詳細。」
検索結果が一件表示された。
「連携先――第七管理系統。」
その下に、
「内部処理区分――旧名称関連情報管理。」
女が止まった。
「旧名称関連情報管理。」
「そう。」
「さらに下。」
透が開いた。
「参照先――R―3。」
女は黙った。
「またR―3。」
「うん。」
「そして。」
透は次の行を読んだ。
「参照後処理――Q―1へ通知。」
女は画面を見つめた。
「R―3。」
「うん。」
「Q―1。」
「そう。」
「兄の日に見てきたものが。」
「またつながった。」
女はしばらく何も言わなかった。
やがて、静かに言った。
「じゃあ。」
「うん。」
「D―41―09は。」
彼女は画面を指した。
「人を探す番号ではない。」
「そう。」
「第七管理系統からR―3へ。」
「うん。」
「そしてQ―1へ。」
「そう。」
「情報を流すための経路。」
透は頷いた。
女はもう一度、三つの記号を見た。
「R―3。」
「Q―1。」
「D―41―09。」
そして、小さく言った。
「この三つが、兄の日に同時に動いている。」
透は答えなかった。
「今度こそ。」
女は続けた。
「同じ人を示しているのか。」
透は首を横に振った。
「まだ分からない。」
女はその答えを聞いて、頷いた。
「うん。」
画面の下には、まだ一件だけ未確認の履歴が残っていた。
「Q―1通知受信後処理――詳細。」
二人は、そこを開いた。




