第一百四十章 四日後
「変更後初回適用――兄の日から四日後。」
女は、その一行を見つめていた。
「変更日は二日後。」
「うん。」
「初回適用は四日後。」
「そう。」
「つまり。」
「二日間の準備期間がある。」
「うん。」
女は画面を拡大した。
「変更しただけでは、すぐには使わない。」
「そう。」
「設定変更。」
「うん。」
「確認。」
「そう。」
「適用開始。」
「うん。」
「三段階。」
透は頷いた。
「じゃあ。」
女は続けた。
「兄の日の処理が終わった。」
「うん。」
「二日後に条件が変わった。」
「そう。」
「さらに二日後。」
「新しい条件が実際の処理に使われた。」
「そう。」
女は少し考えた。
「この変更の理由。」
透が画面を開く。
「不要な関連性評価の抑制。」
「抽象的。」
「うん。」
「何が不要だったのか。」
「記録には書かれていない。」
「誰にとって不要だったのかも?」
「ない。」
女は黙った。
「じゃあ。」
「うん。」
「兄の日の関連性評価が不要だったと、直接書いてあるわけではない。」
「そう。」
「でも。」
彼女は画面を指した。
「同じ種類の評価が発生した後に。」
「うん。」
「その評価を減らす変更が行われた。」
「そう。」
「時間的には近い。」
「うん。」
「でも因果関係は分からない。」
「そう。」
女は頷いた。
「ここも。」
「うん。」
「時間が近いことと、原因であることは別。」
透は画面を見た。
「その通り。」
女は変更前の条件に戻った。
「名称一致。」
「うん。」
「業務区分一致。」
「うん。」
「外部連携履歴一致。」
「そう。」
「依頼者情報存在。」
「変更後に追加。」
「うん。」
「つまり。」
彼女は指を一本ずつ折った。
「旧名称。」
「うん。」
「業務区分。」
「うん。」
「外部連携。」
「うん。」
「依頼者情報。」
「そう。」
「四つ全部が揃わないと、関連性評価を出さなくなった。」
「正確には。」
透が訂正した。
「その条件で判定するようになった。」
「そう。」
女は小さく頷いた。
「それなら。」
「うん。」
「兄の日と同じような処理が起きても。」
「依頼者情報がなければ。」
「関連性評価が出ない。」
「そう。」
「過去の四件のうち。」
「うん。」
「依頼者情報がなかったものは。」
「新しい条件では対象外になる。」
「そう。」
女は考え込んだ。
「じゃあ。」
「うん。」
「この変更によって、過去には関連性評価が出ていたかもしれない処理が。」
「出なくなる。」
「そう。」
「それは。」
女は画面を見た。
「人を確認するための機能を強くしたのか。」
「逆。」
「弱くした?」
「関連性評価だけを見るなら、対象を狭くした。」
女は頷いた。
「でも。」
「うん。」
「本人確認の条件は変わっていない。」
「そう。」
「本人一致確認――不要。」
「うん。」
「ここはそのまま。」
「そう。」
女は静かに言った。
「だから。」
「うん。」
「関連性評価を減らしただけで。」
「本人確認を増やしたわけではない。」
「そう。」
「むしろ。」
彼女は少し考えた。
「関連しているかもしれない記録を、さらに見ないようにする方向にも見える。」
透はすぐには答えなかった。
「記録上は、不要な評価を減らすため。」
「うん。」
「ただ、それ以上の意図は書かれていない。」
「そう。」
女はノートに書いた。
「評価対象を狭める。」
その下に、
「本人確認を増やす。」
と書き、
後者を丸で囲んだ。
「これは行われていない。」
透は頷いた。
「うん。」
女はノートを閉じた。
「じゃあ。」
「うん。」
「兄の日の後に起きた変更を調べるなら。」
「何を見る?」
「変更理由だけじゃない。」
「うん。」
「誰が設定したか。」
「うん。」
「誰が承認したか。」
「そう。」
「初回適用時の処理。」
「うん。」
「そして。」
彼女は少し間を置いた。
「変更前の関連性評価が、実際にどれくらい発生していたのか。」
透は頷いた。
「頻度を見る。」
「そう。」
「兄の日だけなら。」
「特殊な可能性が上がる。」
「うん。」
「頻繁なら。」
「通常処理だった可能性が高くなる。」
「そう。」
女は画面を見た。
「じゃあ。」
「うん。」
「一年半前から兄の日まで。」
「関連性評価の件数を全部出す。」
透は検索条件を入力した。
対象は、
「関連性評価――発生」
期間は、
「一年半前から兄の日まで。」
検索結果が表示された。
一件。
二件。
三件。
四件。
五件。
女は数えた。
「思ったより少ない。」
「うん。」
「全部で?」
透が確認する。
「九件。」
「九件。」
「そう。」
「そのうち。」
「旧名称関連情報を含むものが七件。」
「兄の日は?」
「七件目。」
女は少し黙った。
「じゃあ。」
「うん。」
「兄の日が初めてではない。」
「そう。」
「最後でもない?」
透は続きを見た。
「兄の日の後にも二件ある。」
女が顔を上げた。
「二件。」
「うん。」
「変更後?」
「一件は変更前。」
「もう一件は変更後。」
女は画面を見た。
「変更後にも関連性評価が出ている。」
「うん。」
「じゃあ。」
「新しい条件でも発生する。」
「そう。」
「当然。」
「そう。」
「条件が厳しくなっただけ。」
「うん。」
女は二件を開いた。
変更後の一件。
「名称一致――あり。」
「業務区分一致――あり。」
「外部連携履歴一致――あり。」
「依頼者情報存在――あり。」
「関連可能性――あり。」
「本人一致――未実施。」
女は黙った。
「兄の日とほとんど同じ。」
「そう。」
「違いは?」
透が確認する。
「旧名称関連情報の分類。」
「何?」
「業務名称ではなく、旧業務名称。」
女は画面を見た。
「じゃあ。」
「うん。」
「同じではない。」
「そう。」
「でも構造は似ている。」
「うん。」
「そして。」
彼女はもう一件を開いた。
変更後二件目。
「名称一致――あり。」
「業務区分一致――あり。」
「外部連携履歴一致――あり。」
「依頼者情報存在――あり。」
「関連可能性――あり。」
「本人一致――未実施。」
女が止まった。
「また。」
「そう。」
「じゃあ。」
「うん。」
「変更後でも、関連性評価は消えていない。」
「そう。」
「減っただけ。」
「うん。」
女は九件の一覧に戻った。
「変更前。」
七件。
「変更後。」
二件。
「期間が違うから、単純比較はできない。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「変更後も発生している。」
「そう。」
女は画面を見たまま言った。
「つまり。」
「うん。」
「兄の日の処理をきっかけに条件が変わったとしても。」
「うん。」
「その変更は、関連性評価そのものをなくしたわけではない。」
「そう。」
「対象を狭くした。」
「うん。」
「そして。」
彼女は兄の日の記録に戻った。
「兄の日は、その変更前。」
「そう。」
「だから、旧条件の対象だった。」
「うん。」
女はしばらく黙っていた。
「一つだけ。」
「何?」
「兄の日の関連性評価が。」
「うん。」
「特別だったかどうか。」
透は答えなかった。
女は続けた。
「今のところ。」
「うん。」
「特別とは言えない。」
「そう。」
「同じ評価は以前にもあった。」
「うん。」
「その後にもある。」
「そう。」
「ただ。」
彼女は画面を見た。
「兄の日の後に、条件変更があった。」
「うん。」
「そこには時間的な連続性がある。」
「そう。」
「でも。」
「原因とは限らない。」
「うん。」
女は一度、画面を閉じた。
そして言った。
「ここまで来て。」
「うん。」
「一番重要なのは、兄の日に何が起きたかより。」
透が見る。
「その記録が、翌日からどう扱われたかかもしれない。」
「翌日。」
「そう。」
「関連性が消えた。」
「うん。」
「その二日後。」
「条件変更。」
「うん。」
「さらに二日後。」
「新条件適用。」
「そう。」
女は静かに言った。
「処理が終わった後に。」
「うん。」
「意味が変わっている。」
透は画面を見た。
「意味。」
「外部。」
「うん。」
「業務連携先。」
「そう。」
「関連可能性あり。」
「うん。」
「関連性消失。」
「そう。」
「そして。」
女は最後の変更記録を指した。
「不要な関連性評価を抑制。」
透は何も言わなかった。
女は立ち上がった。
「次に見るものが決まった。」
「何?」
「関連性が消えた翌日。」
「うん。」
「D―41―09の経路確認をした記録。」
「そこ?」
「そう。」
「何を確認したのか。」
女は画面を見た。
「誰が確認したかじゃない。」
「うん。」
「何と何を結びつけて。」
「うん。」
「何を切り離したのか。」
透は頷いた。
画面には、翌日の経路確認記録が残っていた。
そのタイトルは、
「連携識別子照合結果――詳細」
だった。




