↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘の向こう側  作者: 亀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

139/590

第一百三十九章 権限の継続

「異動後権限継続確認。」


女は、その文字を読んだ。


「何が継続した?」


透は詳細を開いた。


「権限区分――M―2。」


「異動前も?」


「M―2。」


「異動後も?」


「M―2。」


女は黙った。


「じゃあ。」


「うん。」


「人が変わっても、権限は残る。」


「そう。」


「でも。」


彼女は画面を指した。


「権限が残ったからといって、同じ人が持ち続けたとは限らない。」


「そのとおり。」


透は異動履歴を確認した。


「異動日。」


「うん。」


「一年半前。」


「変更条件が追加された時期と同じ。」


「そう。」


女は眉を寄せた。


「D―41―09の条件変更。」


「うん。」


「その直後に担当者が異動。」


「そう。」


「そして権限は継続。」


「うん。」


「それなら。」


女は考えた。


「権限の継続が、個人に対する継続なのか。」


「うん。」


「業務に対する継続なのか。」


「そう。」


「そこを分けないといけない。」


透は頷いた。


「記録には、権限の継続理由がある。」


「何?」


「業務互換性維持。」


女は画面を見た。


「また。」


「うん。」


「人じゃない。」


「そう。」


「仕事を続けるため。」


「うん。」


女は少し考えた。


「つまり、担当者が異動しても。」


「うん。」


「次の部署で同じ権限が必要なら。」


「権限を引き継げる。」


「そう。」


「でも。」


女は続けた。


「権限を引き継いだ人間が、前の処理内容を全部引き継ぐわけではない。」


「そう。」


「前にも出てきた。」


「うん。」


「業務手順。」


「処理区分。」


「参照条件。」


「旧記録の保存場所。」


「でも。」


女は画面を見た。


「旧担当者個人の判断は対象外。」


「そう。」


「だから。」


彼女は小さく言った。


「権限だけ残って、人が持っていた判断は残らないことがある。」


透は答えなかった。


女はさらに記録を開いた。


「異動後の初回使用。」


「ある。」


「いつ?」


透が確認する。


「異動の三日後。」


「何に使った?」


「外部連携履歴参照。」


女が顔を上げた。


「D―41―09?」


「関連する処理。」


「つまり。」


「新しい所属先で、すぐに同じ権限を使っている。」


「うん。」


「でも。」


透が続けた。


「その処理は兄の日とは関係ない。」


「分かる?」


「日付が違う。」


「どれくらい?」


「一年以上前。」


女は頷いた。


「じゃあ、その人が一年以上前から同じ権限を使っていた。」


「そう。」


「兄の日にも。」


「権限保持者として登録されていた。」


「でも。」


「実際に操作したかは分からない。」


女はノートに書いた。


「権限保持。」


「うん。」


「実操作。」


「別。」


「所属。」


「別。」


「業務継続。」


「別。」


「担当者。」


「別。」


透は頷いた。


女は少し考えた。


「じゃあ、ここから人を特定するのは難しい。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「権限の流れなら追える。」


「そう。」


女は異動前後の記録を並べた。


「三年前。」


「M―2。」


「一年半前。」


「D―41―09条件変更。」


「同じ時期に異動。」


「うん。」


「異動後もM―2。」


「そう。」


「その後。」


彼女は履歴を見た。


「別の人にもM―2が付与されている。」


「そう。」


「人数が増えた?」


「一時的に。」


「理由は?」


「業務再編対応。」


女は黙った。


「つまり。」


「うん。」


「一人が移動したから、一人だけが引き継いだわけじゃない。」


「そう。」


「再編に合わせて、複数人が権限を持てるようになった。」


「うん。」


「だから。」


彼女は画面を見た。


「兄の日の二人のM―2保持者も。」


「うん。」


「どちらか一人とは限らない。」


「そう。」


「どちらも条件上は操作できる。」


「うん。」


「でも。」


「実操作の記録は別管理。」


「そう。」


女は少し黙った。


「やっぱり。」


「何?」


「人を追えば追うほど、分からなくなる。」


透は何も言わなかった。


「最初は。」


女は続けた。


「兄を見つければいいと思っていた。」


「うん。」


「名前を探して。」


「うん。」


「場所を探して。」


「うん。」


「その人を探せば、何か分かると思っていた。」


「そう。」


「でも。」


彼女は画面を見た。


「名前は業務名称になった。」


「うん。」


「場所は管理区分になった。」


「そう。」


「担当者は権限区分になった。」


「うん。」


「処理は番号になった。」


「そう。」


女はしばらく黙っていた。


「それでも。」


「うん。」


「兄がいないわけではない。」


透は彼女を見た。


「どういう意味?」


「記録が人から離れているだけ。」


「うん。」


「だから。」


彼女はノートを閉じた。


「人を直接探す方法だけでは、見つからない。」


透は頷いた。


そのとき、画面に別の履歴が表示された。


「異動後権限使用条件――一件。」


女が見る。


「条件。」


「うん。」


「何?」


透が読む。


「旧記録参照――許可。」


「旧名称検索――許可。」


「外部連携履歴――許可。」


「本人一致確認――不要。」


女はそこで止まった。


「本人一致確認――不要。」


「そう。」


「異動後も。」


「うん。」


「その条件が変わっていない。」


「そう。」


女はしばらく画面を見つめた。


「じゃあ。」


「うん。」


「三年前に作った仕組み。」


「うん。」


「一年半前に旧名称関連情報へ拡張。」


「うん。」


「担当者が異動しても。」


「うん。」


「本人一致をしない条件は残った。」


「そう。」


女は静かに言った。


「それなら。」


「うん。」


「兄の日に本人確認されなかったことは。」


「うん。」


「誰かが忘れたからではなく。」


「そう。」


「ずっと続いていた条件だった。」


「そう。」


女は頷いた。


「でも。」


「うん。」


「その条件が正しかったかどうかは。」


透は少し間を置いて答えた。


「この記録だけでは分からない。」


女はその答えを聞いて、何も言わなかった。


しばらくして、彼女は画面をもう一度見た。


「ただ。」


「うん。」


「条件が続いていたことは分かる。」


「そう。」


「そして。」


彼女は履歴を下へ送った。


「兄の日の後。」


「うん。」


「条件が変わっている。」


透が画面を確認した。


「……ある。」


「いつ?」


「兄の日の二日後。」


女は顔を上げた。


「二日後。」


「うん。」


「何が変わった?」


透が詳細を開く。


「本人一致確認――不要。」


女が眉を寄せる。


「変わってない。」


「そう。」


「じゃあ、何?」


透はさらに開いた。


「関連性評価条件。」


「どう変わった?」


「変更前――名称一致+業務区分一致+外部連携履歴一致。」


「変更後?」


透は画面を読んだ。


「名称一致+業務区分一致+外部連携履歴一致+依頼者情報存在。」


女は動かなかった。


「依頼者情報存在。」


「そう。」


「兄の日の処理で。」


「関連性評価を発生させた条件。」


「うん。」


「その条件が。」


「二日後に変更された。」


女は画面を見つめた。


「追加された?」


「そう。」


「依頼者情報の存在を条件にした。」


「うん。」


「なぜ?」


透は変更理由を開いた。


そこには、


「不要な関連性評価の抑制」


とだけ記されていた。


女はしばらく黙っていた。


「不要な関連性評価。」


「うん。」


「兄の日の後に。」


「そう。」


「条件が変わった。」


「そう。」


女はゆっくり息を吐いた。


「これも。」


「うん。」


「兄のために変えたとは言えない。」


「そう。」


「でも。」


彼女は画面から目を離さなかった。


「少なくとも。」


「うん。」


「兄の日の処理が起きた直後に。」


「うん。」


「同じ種類の関連性評価を減らすための変更が行われた。」


透は頷いた。


画面には、変更前と変更後の条件が並んでいた。


そして、その下に小さく、


「変更後初回適用――兄の日から四日後。」


と表示されていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。