第一百三十六章 登録なし
「担当区分――登録なし。」
女は、その文字を何度も読んだ。
「本人確認担当。」
「うん。」
「なのに、登録なし。」
透は画面を見ていた。
「担当者がいないという意味とは限らない。」
「分かってる。」
「担当区分そのものが、別の管理系統かもしれない。」
「うん。」
女は少し考えた。
「でも、通知先としては存在している。」
「そう。」
「通知を送る先はある。」
「うん。」
「なのに、担当者として登録されていない。」
「そう。」
女は画面をスクロールした。
「所属。」
「登録なし。」
「権限。」
「権限制限。」
「氏名。」
「なし。」
「在籍期間。」
「なし。」
女は小さく息を吐いた。
「また同じ。」
「うん。」
「仕事の名前だけが残っている。」
透は頷いた。
「担当者の名前は残っていない。」
「でも。」
女は画面を指した。
「本人確認担当という言葉はある。」
「そう。」
「じゃあ、これは人ではなく役割。」
「可能性が高い。」
「役割なら。」
彼女は考えた。
「その後、誰かが処理した可能性はある。」
「うん。」
「でも、この記録だけでは誰か分からない。」
「そう。」
女は少し黙った。
「じゃあ、通知が送られた先を調べる。」
透は頷いた。
通知記録を開いた。
「通知方法――業務連携。」
「うん。」
「通知先――本人確認担当。」
「そう。」
「通知内容――関連可能性あり。」
「うん。」
「本人一致――未実施。」
「そう。」
「再結合――実施せず。」
女は眉を寄せた。
「ここでも。」
「うん。」
「何も確定していない。」
「そう。」
「ただ、次の担当に渡った。」
「うん。」
女は通知時刻を確認した。
「関連性評価から。」
「三分後。」
「三分。」
「そう。」
「じゃあ、すぐ通知された。」
「うん。」
「その後は?」
透が履歴を開く。
「受信確認。」
女が見る。
「本人確認担当――受信済み。」
「担当者は?」
「登録なし。」
「確認した人は?」
「記録なし。」
女は黙った。
「受信したことだけ残っている。」
「そう。」
「誰が受信したかは残っていない。」
「うん。」
「それなら。」
彼女は言った。
「ここから先は追えない?」
透は画面を見た。
「一つある。」
「何?」
「受信後処理。」
女が身を寄せた。
「確認状態――保留。」
「保留。」
「うん。」
「理由は?」
透が開く。
「本人一致情報不足。」
女は黙った。
「また。」
「そう。」
「結局ここ。」
「うん。」
彼女は椅子に座り直した。
「じゃあ、本人確認担当に渡ったあとも。」
「本人確認はされていない。」
「そう。」
「保留になった。」
「うん。」
「そして。」
透は次の項目を開いた。
「保留解除。」
女が顔を上げた。
「解除された?」
「そう。」
「いつ?」
「翌日。」
「理由は?」
透は表示を読んだ。
「確認対象の関連性消失。」
女はしばらく何も言わなかった。
「関連性消失。」
「うん。」
「昨日は関連可能性あり。」
「そう。」
「翌日は関連性消失。」
「そう。」
「何が変わった?」
透は詳細を開いた。
「外部連携履歴――更新。」
「更新?」
「うん。」
「何が更新された?」
「依頼者情報の区分。」
女が画面を見る。
「区分だけ?」
「そう。」
「本人情報ではない。」
「うん。」
「名前でもない。」
「そう。」
「所属でもない。」
「うん。」
「依頼者区分が変わった。」
透は頷いた。
「外部から、業務連携先。」
女は眉を寄せた。
「最初は外部。」
「うん。」
「翌日には業務連携先。」
「そう。」
「それだけで関連性が消えた?」
「記録上は、そう。」
女は画面を見つめた。
「でも。」
「うん。」
「外部だったものが業務連携先になった。」
「そう。」
「それは誰かが訂正した?」
「自動更新。」
「また自動。」
「うん。」
女は少し黙った。
「自動更新の条件は?」
透が開く。
「連携経路確定。」
「連携経路。」
「うん。」
「どこから来たかが確定したら。」
「依頼者区分が変更される。」
「そう。」
女は考えた。
「最初は外部から入ってきた。」
「うん。」
「でも、調べたら。」
「第七管理系統との業務連携だった。」
「そう。」
「だから、外部依頼ではなく。」
「業務連携先として扱われた。」
「うん。」
女はノートに書いた。
「外部=最初の分類。」
「うん。」
「業務連携先=経路確認後の分類。」
「そう。」
「人の属性が変わったわけではない。」
「うん。」
「記録上の区分が変わった。」
「そう。」
女はペンを止めた。
「だから。」
「うん。」
「関連性が消えた。」
「そう。」
「人がいなくなったからではない。」
「うん。」
「条件が変わったから。」
透は頷いた。
「そう。」
女は深く息を吐いた。
「じゃあ。」
「うん。」
「兄の日に起きたことを並べると。」
透は画面を見た。
「外部入力。」
「うん。」
「名称照合。」
「そう。」
「自動分類。」
「うん。」
「個人識別情報あり。」
「そう。」
「関連性評価。」
「うん。」
「関連可能性あり。」
「そう。」
「本人確認担当へ通知。」
「うん。」
「確認保留。」
「そう。」
「翌日。」
「うん。」
「連携経路確定。」
「そう。」
「依頼者区分変更。」
「うん。」
「関連性消失。」
「そう。」
女は一つずつ指で追った。
「そして。」
「うん。」
「再結合は最後までされていない。」
「そう。」
「本人一致もされていない。」
「そう。」
女は画面を閉じた。
「なら。」
「うん。」
「この一連の記録から、兄が確認されたとは言えない。」
「そう。」
「むしろ。」
彼女は少し考えた。
「確認される可能性が一度出て。」
「うん。」
「でも、確認できないまま消えた。」
透は頷いた。
「記録上はそう見える。」
女は黙った。
「それなら。」
「うん。」
「兄が南区に入った日と、この処理が重なったことには。」
「うん。」
「意味があるかもしれない。」
透は彼女を見る。
「でも。」
「うん。」
「それが兄本人についての意味なのか。」
「まだ分からない。」
「そう。」
女は頷いた。
「じゃあ、次は。」
透は画面を開いた。
「連携経路。」
「第七管理系統。」
「うん。」
「そこまで戻る。」
女は画面を見た。
「第七管理系統が、何を外部へ渡したのか。」
「うん。」
「そして。」
彼女は続けた。
「なぜ翌日に連携経路が確定したのか。」
透は頷いた。
二人は第七管理系統の履歴へ戻った。
そこには、兄の日の記録とは別に、翌朝に作成された一件の修正記録があった。
「連携先確認――完了。」
「確認者――登録なし。」
「確認方法――自動判定。」
「判定根拠――連携識別子。」
女がそこで止まった。
「連携識別子。」
透はその下を見た。
「外部入力の番号とは違う。」
「じゃあ、何?」
画面の最後に、別の番号があった。
「第七管理系統内部連携番号――D―41―09。」
女はその番号を見つめた。
「これ。」
「うん。」
「今まで出てこなかった。」
透も画面から目を離さなかった。
「新しい入口かもしれない。」
女は小さく頷いた。
「今度は。」
「うん。」
「名前じゃない。」
「そう。」
「人でもない。」
「うん。」
「番号そのものを追う。」
透は検索欄に、
「D―41―09」
と入力した。




