第一百二十九章 形式B
「入力元――外部。」
女は画面を見た。
「前日の形式B。」
「うん。」
「開ける?」
透は詳細を開いた。
「入力種別――旧名称関連情報。」
女は眉を動かした。
「同じ。」
「うん。」
「入力経路は?」
「外部連携。」
「兄の日は?」
「業務窓口。」
女は黙った。
「同じ形式Bでも、入口が違う。」
「そう。」
「だから前日のものは、分類条件の変更後も対象外だった。」
「うん。」
「兄の日のものは、業務窓口から入った。」
「そう。」
女は画面を見た。
「じゃあ、形式Bだけでは足りない。」
「うん。」
「入口も関係している。」
透は条件履歴をもう一度開いた。
「補助条件。」
「何?」
「入力経路。」
女が身を寄せる。
「分類条件には、三つの層がある。」
透が指で示した。
「第一――名称。」
「うん。」
「第二――業務区分。」
「うん。」
「第三――入力経路。」
「でも、さっきは入力経路が補助条件だった。」
「そう。」
「じゃあ、必須条件ではない。」
「うん。」
女は少し考えた。
「つまり。」
「うん。」
「前日の形式Bは、名称か業務区分のどちらかが条件に合わなかった。」
「そう。」
「だから分類対象外。」
「うん。」
「兄の日の入力は、両方が合った。」
「そう。」
「それで分類された。」
透は頷いた。
女は前日の記録を開いた。
「じゃあ、何が違った?」
入力内容には、いくつかの項目が並んでいた。
「名称使用区分――旧業務名称。」
「兄の日は?」
透は別の記録を開いた。
「業務名称。」
女が止まった。
「違う。」
「うん。」
「名前そのものが違うとは限らない。」
「そう。」
「でも、区分が違う。」
「うん。」
女は画面を指した。
「前日は旧業務名称。」
「そう。」
「兄の日は業務名称。」
「うん。」
「だから同じ文字列でも、分類結果が違った。」
「可能性がある。」
「そして。」
女は前日の記録をもう一度見る。
「前日の入力は、旧業務名称として受け取られた。」
「そう。」
「兄の日の入力は、業務名称として受け取られた。」
「うん。」
女は黙った。
「これ。」
「うん。」
「名前が変わったんじゃない。」
「そう。」
「名前の区分が変わった。」
「そう。」
「でも、その区分変更は前から進んでいた。」
「うん。」
「兄の日は、その変更後の処理が初めて実際に使われた日。」
透は頷いた。
「そう。」
女はノートを開いた。
「前日――形式B、旧業務名称、分類対象外。」
「うん。」
「当日――形式B、業務名称、分類対象。」
「そう。」
「違いは、名称使用区分。」
「うん。」
女はペンを止めた。
「でも、ここでも一つ分からない。」
「何?」
「誰が、兄の日の入力を『業務名称』として渡したのか。」
透は答えなかった。
「外部入力だから。」
「うん。」
「外部側でそう分類された可能性もある。」
「そう。」
「第七管理系統がそうした可能性もある。」
「うん。」
「S―系統が受け取った時点で変わった可能性もある。」
「そう。」
女は画面を見た。
「入力元は外部。」
「うん。」
「でも、入力元が分類者とは限らない。」
「そう。」
「ここも分けないといけない。」
透は頷いた。
「入力した場所。」
「うん。」
「分類した場所。」
「うん。」
「記録した場所。」
「そう。」
女は三つを縦に並べた。
「入力。」
「分類。」
「登録。」
そして、その横に、
「同じ場所とは限らない。」
と書いた。
しばらくして、透が前日の形式Bの処理履歴を開いた。
「もう一つある。」
「何?」
「受信後処理。」
女が画面を見る。
「旧名称検索――実施。」
「結果は?」
「一件。」
「業務名称?」
「旧業務名称。」
女は頷いた。
「だから対象外。」
「そう。」
「兄の日は?」
「旧名称検索。」
「結果?」
「業務名称。」
「それで自動分類。」
「うん。」
女は椅子にもたれた。
「同じ検索。」
「そう。」
「同じ旧名称索引。」
「うん。」
「でも検索結果の区分が違う。」
「そう。」
「つまり、検索する前の段階で何かが違っていた。」
透は画面を見た。
「検索条件。」
女が振り向く。
「検索条件?」
「前日の記録と当日の記録で、検索条件の一部が違う。」
「どこ?」
透は二つの記録を並べた。
「前日――旧名称使用履歴。」
「うん。」
「当日――旧名称使用履歴+現行業務名称対応。」
女は黙った。
「当日は二つ目が追加されている。」
「そう。」
「だから検索結果が変わった。」
「可能性がある。」
「じゃあ、その追加条件はどこから来た?」
透は記録を下へ送った。
「入力前情報。」
「開いて。」
「参照元――第七管理系統。」
女の表情が変わった。
「第七管理系統。」
「うん。」
「またここ。」
「そう。」
「兄の日の一時間二十四分前に、旧名称関連情報を外部へ伝達したところ。」
「うん。」
「その情報が戻ってきた?」
透は首を横に振った。
「直接の戻りとは記録されていない。」
「じゃあ。」
「同じ名称関連情報を扱った別の処理。」
女は黙った。
「第七管理系統は、兄の日の前にも同じ名前を扱っていた。」
「そう。」
「当日も扱った。」
「うん。」
「でも、それだけでは同じ案件とは言えない。」
「そう。」
女は小さく息を吐いた。
「結局、全部が近い。」
「うん。」
「でも、一つ一つは確定しない。」
「そう。」
「時間も近い。」
「うん。」
「名称も近い。」
「そう。」
「処理も似ている。」
「うん。」
「でも、案件番号は違う。」
「そう。」
「だから、線を一本にできない。」
透は答えなかった。
女は画面を見た。
「でも、線がないわけじゃない。」
「うん。」
「複数の線が、同じ名前の周りを通っている。」
「そう。」
そのとき、前日の形式B記録の最後に、小さな項目が表示された。
「関連名称区分――旧業務名称。」
その下に、
「翌日更新――業務名称。」
女が止まった。
「翌日。」
「うん。」
「兄の日。」
「そう。」
「この更新。」
「うん。」
「誰が更新した?」
透は詳細を開いた。
そこには、
「更新方法――自動反映」
とあった。
女は黙った。
「自動。」
「うん。」
「じゃあ、誰かが兄の日に変更したわけじゃない。」
「そう。」
「前日の記録に残っていた旧業務名称が。」
「うん。」
「当日の業務再編条件に従って。」
「そう。」
「自動的に業務名称へ変換された。」
「可能性が高い。」
女は画面を見つめた。
「じゃあ。」
彼女はゆっくり言った。
「兄の日に変わったように見えるけど。」
「うん。」
「実際には、もっと前から変更の準備がされていた。」
「そう。」
「そして、当日になって初めて、実際の入力に適用された。」
「そう。」
女はノートを閉じた。
「なら、ここにも人はいない。」
透は少し考えた。
「人がいないんじゃない。」
「うん。」
「人が設定したものが、自動処理として残っている。」
女は頷いた。
「設定した人と、実際に処理した人は違う。」
「そう。」
「だから、処理履歴だけを見ても、設定者は出てこない。」
「うん。」
二人はしばらく画面を見ていた。
やがて女が言った。
「設定者を探す?」
透は少し考えた。
「探す前に。」
「うん。」
「その設定が、いつから存在していたかを見る。」
女は頷いた。
「兄の日より前。」
「もちろん。」
「もっと前。」
「そう。」
「どれくらい?」
透は履歴を開いた。
最初の登録日時が表示された。
女が画面を見た。
そして、しばらく何も言わなかった。
「……三年前。」
透は頷いた。
「三年前。」
「兄の日のためじゃない。」
「そう。」
「じゃあ。」
女は画面から目を離さなかった。
「三年前から存在していた仕組みが。」
「うん。」
「兄の日に、初めてこの組み合わせで使われた。」
「そう。」
「それなら、兄の日を起点に考えるだけでは足りない。」
透は頷いた。
「だから、三年前に戻る。」
画面には、三年前の設定変更履歴が残っていた。
その変更理由は、
「外部連携方式変更対応。」
その下には、さらに一行。
「旧名称関連入力――新形式対応。」
女は静かに言った。
「ここから始まっている。」
透は画面を見た。
だが、その三年前の変更記録には、まだ一つだけ空欄があった。
「変更担当――別管理。」
「別管理……。」
女が呟く。
その言葉の横には、
「参照先――J―3」
と表示されていた。




