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嘘の向こう側  作者: 亀


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第一百二十八章 戻された記録

「P―4。」


女は画面を見た。


「また戻った。」


透は頷いた。


「うん。」


「自動分類した。」


「そう。」


「翌日に再確認した。」


「うん。」


「そして、その結果をP―4へ通知した。」


「そう。」


女はしばらく黙っていた。


「P―4は、旧個人照会履歴。」


「うん。」


「つまり、分類結果が旧記録側へ戻っている。」


透は通知内容を開いた。


「通知種別――記録連携。」


「通知理由――分類結果反映。」


「反映対象――名称使用区分。」


女が言った。


「本人情報じゃない。」


「そう。」


「分類された情報そのものでもない。」


「うん。」


「名称使用区分だけ。」


「そう。」


女はノートを開いた。


「外部入力。」


「うん。」


「自動分類。」


「うん。」


「旧記録照合。」


「そう。」


「名称使用区分確認。」


「うん。」


「その結果がP―4へ戻る。」


透は頷いた。


「だから、P―4に戻ったのは、人物情報ではない。」


「名称の扱い。」


「そう。」


女はしばらく考えた。


「でも。」


「うん。」


「P―4は、もともと個人別照会履歴だった。」


「そう。」


「そこへ業務名称としての情報が戻る。」


「うん。」


「その結果、昔の個人関連名称と現在の業務名称の境界が、さらに曖昧になる。」


透は少し考えた。


「記録上は、境界を曖昧にするためではなく、旧記録との互換性を維持するため。」


「分かってる。」


女は画面を指した。


「でも、結果としては同じ名前が、違う用途の記録に残る。」


「そう。」


「後から見た人は、それを同じものだと思うかもしれない。」


「うん。」


「でも、システムは同じものとして扱っていない。」


「そう。」


女は書いた。


「同じ表示≠同じ管理対象。」


透は頷いた。


「それが繰り返されている。」


女は通知履歴を下へ送った。


「P―4への通知。」


「うん。」


「通知元は?」


「S―系統。」


「つまり、兄の日の外部入力から始まった処理が。」


「うん。」


「S―系統を通って。」


「そう。」


「P―4へ戻っている。」


「そう。」


女は画面を見た。


「最初にP―4から出た。」


「R―3が参照した。」


「うん。」


「その情報を使って名称使用区分が整理された。」


「そう。」


「その後、何年も経って。」


「うん。」


「今度はS―系統からP―4へ戻った。」


「そう。」


女は線を引いた。


P―4

↓

R―3

↓

第七管理系統

↓

旧名称管理

↓

S―系統

↓

P―4


「戻ってきた。」


「そう。」


「でも、元のP―4と今のP―4は同じ意味?」


透は答えなかった。


「管理区分は同じ。」


「うん。」


「でも、記録の内容は変化している。」


「そう。」


「だから、同じ記号でも、同じ状態ではない。」


女は頷いた。


「名前だけじゃない。」


「うん。」


「番号も同じ。」


「そう。」


「管理区分も同じ。」


「うん。」


「でも、その中に入っている意味は変わっている。」


透は画面を見た。


「それが、古い記録を残したまま新しい仕組みに移行する時に起きる。」


女は少し考えた。


「古いものを消さない。」


「うん。」


「でも、古い意味のまま使うわけでもない。」


「そう。」


「だから、間に新しい定義を重ねる。」


「うん。」


女はノートに書いた。


「保存≠継続使用。」


「再利用≠同一意味。」


透は頷いた。


そのとき、通知の詳細に別の項目が見つかった。


「P―4側処理――受信後確認。」


女が言った。


「開いて。」


透が開く。


「確認内容――名称使用区分。」


「うん。」


「確認結果――現行業務名称。」


女は黙った。


「また現行業務名称。」


「そう。」


「じゃあ、P―4に戻された情報も。」


「業務名称として確認された。」


「個人名称としてではない。」


「うん。」


女は画面を見つめた。


「それなら。」


「何?」


「兄の日の処理を通じて、P―4が再び個人情報として使われたわけではない。」


「そう。」


「むしろ逆。」


「うん。」


「P―4の古い記録を、業務名称として扱えることを再確認した。」


「そう。」


女は息を吐いた。


「それなら、この一連の処理は。」


「うん。」


「人を特定するための処理ではなく。」


「名称の互換性を維持するための処理。」


「そう。」


「少なくとも、記録の大部分は。」


女は頷いた。


「じゃあ、兄の日の外部入力だけが異質。」


「うん。」


「そこに『本人に関する情報』という分類が入った。」


「そう。」


「でも、その後の処理は。」


「名称使用区分へ戻った。」


女は画面を見た。


「つまり。」


「うん。」


「最初に人の情報として分類されたものが。」


「そう。」


「最後には業務名称として整理された。」


透は頷いた。


「そう見える。」


女はしばらく考えた。


「なら、分類のところに問題があったのかもしれない。」


透はすぐには答えなかった。


「問題とは?」


「誤分類。」


「可能性はある。」


「でも。」


「うん。」


「正しい分類だった可能性もある。」


「そう。」


「外部から入った情報が、本当に兄に関するものだったなら。」


「本人に関する情報として扱われるのは不自然ではない。」


「うん。」


「ただし、本人一致はされていない。」


「そう。」


女は黙った。


「だから、正しいとも間違っているとも言えない。」


「うん。」


女はノートを見た。


「分類結果≠本人確認結果。」


「そう。」


「でも、分類結果は残る。」


「うん。」


「そして、後の人がその分類結果を前提に処理する。」


「そう。」


女は画面を見た。


「これ。」


「うん。」


「ここが怖い。」


透は何も言わなかった。


「一度、『本人に関する情報』として分類されたら。」


「うん。」


「次の処理では、それを前提にできる。」


「そう。」


「本人確認をしなくても。」


「うん。」


「『本人に関する情報』として受け取ったという事実だけが残る。」


「そう。」


女は静かに言った。


「だから、最初の分類がどこで行われたかが重要になる。」


透は頷いた。


「最初の分類条件。」


「うん。」


「旧名称。」


「うん。」


「業務区分。」


「うん。」


「入力経路。」


「そう。」


女は画面を見た。


「じゃあ、その三条件が本当に正しかったのか。」


透は分類条件の履歴を開いた。


「条件変更履歴。」


女が顔を上げた。


「変更されている?」


「一件。」


「いつ?」


透は日付を確認した。


「兄の日の前日。」


女は黙った。


「前日。」


「うん。」


「何が変わった?」


透は詳細を開いた。


「旧名称関連外部入力――分類条件更新。」


「変更前は?」


「名称一致。」


「変更後は?」


透は読み上げた。


「名称一致+業務区分一致。」


女が息を止めた。


「一つ増えた。」


「うん。」


「その変更は、兄の日の前日。」


「そう。」


「じゃあ、兄の日に使われた自動分類条件は。」


「変更後。」


女は画面を見た。


「それなら。」


「うん。」


「今までの『三条件』のうち。」


「兄の日には、名称と業務区分が必要だった。」


「そう。」


「入力経路は?」


「以前からの条件ではなく、補助条件として扱われている。」


女は黙った。


「つまり、条件が前日に変わった。」


「うん。」


「その翌日に、最初の使用があった。」


「そう。」


女はしばらく画面を見つめた。


「これだけは。」


「うん。」


「兄の日との時間的な関係がかなり近い。」


「そう。」


「でも。」


透は先に言った。


「変更理由を見る必要がある。」


女は頷いた。


「理由。」


透は開いた。


そこには、


「変更理由――外部入力形式変更対応」


と記録されていた。


女は黙った。


「外部入力形式。」


「うん。」


「兄の日に限った変更ではない。」


「そう。」


「外部入力の形式が変わったから、前日に条件を変更した。」


「可能性が高い。」


女は首を横に振った。


「まだ。」


「うん。」


「変更対象の外部入力が何だったのかを見ないと。」


透は頷いた。


変更対象。


その項目を開く。


そこには、


「旧名称関連外部入力――形式B」


とだけ表示されていた。


女は画面を見つめた。


「形式B。」


「うん。」


「兄の日の入力も?」


透は確認した。


「入力形式――形式B。」


二人は同時に黙った。


女が小さく言った。


「前日に分類条件が変わった。」


「うん。」


「翌日に、同じ形式の入力が入った。」


「そう。」


「そして。」


女は画面の一番下を見る。


「その入力が、最初の自動分類対象。」


透は頷いた。


だが、その下にはもう一つ記録があった。


「形式B――初回受信。」


日時は、兄の日の前日。


そして、その記録には、


「受信結果――分類対象外」


とあった。


女は画面を見た。


「……前日に、もう一件ある。」


透も黙っていた。


「同じ形式B。」


「うん。」


「でも、その時は分類されていない。」


「そう。」


「じゃあ、条件変更は。」


女はゆっくり言った。


「翌日のために行われたとは、まだ言えない。」


透は頷いた。


「前日の入力は、分類対象外だった。」


「うん。」


「だから、条件変更後に初めて分類されたのが兄の日。」


「そう。」


女は画面を見つめた。


「なら。」


彼女は静かに言った。


「次に見るべきなのは、前日の形式Bが何だったのか。」


画面には、その詳細を開くための表示が出ていた。


「関連入力――一件。」


その横に、


「入力元――外部。」


とあった。

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