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嘘の向こう側  作者: 亀


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第一百二十六章 X―4

「三名。」


女は画面を見た。


「X―4の権限者。」


「うん。」


「今の三人?」


「権限履歴を開けば分かる。」


透は履歴を表示した。


最初の一人。


「権限取得――三年前。」


二人目。


「権限取得――一年半前。」


三人目。


「権限取得――四か月前。」


女が言った。


「全員、兄の日には在籍している。」


「うん。」


「でも。」


透は続けた。


「兄の日に有効だったのは二人。」


「一人は?」


「権限停止中。」


「理由は?」


「担当業務変更。」


女は頷いた。


「じゃあ、候補は二人。」


「そう。」


「この二人のうち、実際に見た人を特定できる?」


透は履歴を確認した。


「参照者記録がある場合は。」


「ある?」


「まだ開いていない。」


女は少し身を乗り出した。


透がX―4の関連履歴を開く。


最初に出たのは、


「外部連携履歴参照――一件。」


女は息を止めた。


「一件だけ?」


「兄の日については。」


「その日だけ?」


「その日付では一件。」


女は画面を見る。


「参照時刻。」


透が読む。


「兄が南区に入った日の、午後。」


女が言った。


「外部入力より後?」


「二十三分後。」


「じゃあ。」


「うん。」


「誰かが外部入力を受け付けた後、その連携履歴を見ている。」


「そう。」


「その参照目的は?」


透は開いた。


「外部入力経路確認。」


女は眉を寄せた。


「内容じゃない。」


「経路。」


「どこから来たか。」


「うん。」


女は少し考えた。


「じゃあ、ここでも。」


「何?」


「情報そのものより、情報がどう流れたかを見ている。」


「そう。」


「兄の日に。」


「うん。」


「外部入力が入った。」


「そう。」


「二十三分後にX―4が、その入力の経路を確認した。」


「うん。」


女は画面を指した。


「誰が?」


透は参照者情報を開いた。


「権限者区分――登録あり。」


「所属。」


「第七管理系統。」


女が顔を上げた。


「第七管理系統。」


「うん。」


「外部へ情報を伝えた側と同じ。」


「所属上は。」


「個人は?」


「氏名――権限制限。」


女は黙った。


「また。」


「うん。」


「でも、候補は二人。」


「そう。」


透は二人の在籍履歴を表示した。


一人目は、


「第七管理系統――在籍」


二人目も、


「第七管理系統――在籍」


だった。


女が言った。


「どっちも。」


「うん。」


「役割は?」


透が開く。


一人目。


「外部連携管理。」


二人目。


「業務照会対応。」


女は少し考えた。


「外部連携を見るなら、一人目の方が自然。」


「そう見える。」


「でも。」


「うん。」


「二人目にもX―4権限がある。」


「そう。」


「じゃあ、権限だけでは決められない。」


「うん。」


女は二人の当日の勤務記録を確認した。


一人目。


「勤務――午前」


二人目。


「勤務――午後」


女が止まった。


「参照時刻は?」


透は確認した。


「午後。」


女は一人目を見る。


「じゃあ、一人目は。」


「勤務終了後。」


「その時間に参照した可能性は?」


「システム上は可能。」


「でも、通常勤務ではない。」


「うん。」


「二人目は勤務中。」


「そう。」


女は少し黙った。


「だから、二人目の方が自然。」


透は答えなかった。


女が見る。


「違う?」


「勤務中だからといって、その人が参照したとは限らない。」


「でも、候補としては。」


「候補にはなる。」


女は頷いた。


「じゃあ、候補。」


ノートに二人の名前ではなく、


「X―4 A」


「X―4 B」


とだけ書いた。


「個人名を書かないの?」


「まだ、個人を追う必要がない。」


透は少し驚いた。


女は続けた。


「今までずっと、誰がやったのかを考えてきた。」


「うん。」


「でも、そのたびに権限と役割が混ざった。」


「そう。」


「なら、先に処理を見る。」


「うん。」


「人は最後。」


透は頷いた。


二人は参照履歴へ戻った。


「外部入力経路確認。」


女が言う。


「結果は?」


透は開いた。


「入力経路――業務窓口。」


「これは前に見た。」


「うん。」


「その次。」


「連携元――外部。」


「うん。」


「連携方式――業務連携。」


「旧名称関連情報――参照あり。」


女が止まった。


「旧名称関連情報を参照した。」


「そう。」


「外部から入った内容そのものじゃない。」


「うん。」


「外部へ出した情報との関係を確認した?」


透は詳細を開いた。


「比較対象――外部伝達履歴。」


女が黙った。


「つながった。」


「参照上は。」


「外部入力と、外部伝達履歴を比較した。」


「そう。」


「じゃあ、少なくとも。」


女はゆっくり言った。


「内部側では、この二つが関連している可能性を確認している。」


「うん。」


「でも、同一案件とは確定していない。」


「そう。」


透は次の項目を開いた。


「関連判定――条件一致。」


女が聞く。


「何の条件?」


「名称。」


「名称一致?」


「そう。」


「時刻?」


「対象外。」


「依頼元?」


「対象外。」


「入力者?」


「対象外。」


「内容?」


「比較対象外。」


女は黙った。


「結局。」


「うん。」


「名前だけ。」


透は頷いた。


「条件一致は名称のみ。」


女はノートに書いた。


「関連判定≠案件同一。」


その下に、


「名称条件一致=名称条件一致。」


と書いた。


「それ以上ではない。」


「そう。」


女は画面を見つめた。


「じゃあ、この記録は何を証明する?」


透は少し考えた。


「兄の日の外部入力と、その少し前に行われた外部伝達が、名称条件の上では関連していた。」


「うん。」


「第七管理系統が、その関係を確認した。」


「うん。」


「でも、誰が、なぜその名称を使ったかまでは分からない。」


「そう。」


女は頷いた。


「それで十分。」


透が見る。


「十分?」


「今は。」


「うん。」


「少なくとも、完全な偶然として片付けるには、確認された処理が多い。」


「そう。」


「でも、誰かが兄を狙っていたと決めるには、足りない。」


透は黙っていた。


女は画面を指した。


「この間に何があったのか。」


「うん。」


「それが必要。」


透は参照履歴をさらに下へ送った。


そこに、


「関連判定後処理――なし」


とあった。


女は眉を寄せた。


「なし。」


「うん。」


「じゃあ、関連していると判定しただけで。」


「後の処理はしていない。」


「少なくとも記録上は。」


「そう。」


「だったら、外部入力と外部伝達をつないだのは。」


「この参照記録だけ。」


「実際の業務処理としては、別々だった可能性がある。」


「うん。」


女は考え込んだ。


「なら、これも。」


「何?」


「『関連あり』と『同じ案件』を分ける。」


「うん。」


女はノートに書いた。


「関連情報あり≠同一案件。」


「名称一致≠人物一致。」


「処理連続≠因果関係。」


透はその三行を見た。


「かなり整理されてきた。」


「でも、兄のことはまだ何も分からない。」


「そう。」


女は笑わなかった。


「分からないから、追える。」


透は画面に目を戻した。


X―4の参照履歴には、もう一つ関連記録があった。


「参照後確認――一件。」


「何?」


「外部伝達履歴。」


「また?」


「うん。」


「今度は何を確認した?」


透が開く。


「伝達内容の分類。」


女は画面を見る。


「旧名称関連情報。」


「そう。」


「分類結果は?」


透は読む。


「業務名称情報。」


女が黙った。


「旧名称ではない。」


「うん。」


「個人情報でもない。」


「そう。」


「業務名称情報。」


透は頷いた。


女はゆっくり言った。


「じゃあ。」


「うん。」


「外部に出たのは、少なくともシステム上では、人の情報として扱われていない。」


「そう。」


「業務名称として扱われた。」


「うん。」


女はしばらく画面を見ていた。


「それなら、兄の日に外部から入った名前も。」


「業務名称として受け取られた可能性がある。」


「そう。」


「でも、その入力は『本人に関する情報』としてS―系統に登録された。」


女が顔を上げた。


「そこ。」


「うん。」


「業務名称だったものが。」


「外部から戻ってきた。」


「そして。」


「本人に関する情報として登録された。」


二人は同時に画面を見た。


女が静かに言った。


「同じ名前が。」


「用途を変えている。」


「そう。」


「業務名称。」


「うん。」


「外部入力。」


「うん。」


「本人に関する情報。」


「そう。」


女は少し黙った。


「名前そのものが人になったわけじゃない。」


「うん。」


「システム側が、その名前を含む情報を『本人に関する情報』として受け取った。」


「そう。」


「ここに、意味の切り替わりがある。」


透は頷いた。


そして、画面の下に表示された一行を見た。


「用途切替理由――外部入力定義に基づく自動分類。」


女がゆっくり顔を上げた。


「自動分類。」


「うん。」


「誰かが、人の情報だと判断したわけじゃない。」


「そう。」


「外部から入った情報の形式によって。」


「うん。」


「システムが、自動で『本人に関する情報』に分類した。」


透は頷いた。


女はしばらく黙った。


そして、ぽつりと言った。


「なら。」


「うん。」


「この日の一番大きな変化は。」


彼女は画面を指した。


「名前じゃない。」


「……。」


「名前の意味が、外部から内部に入る途中で変わったこと。」


透は、その言葉を聞いたまま画面を見つめていた。


その直後、関連記録の表示が一つ増えた。


「自動分類条件――詳細。」


その横に、


「条件定義――旧名称関連外部入力」


と表示されていた。

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