↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘の向こう側  作者: 亀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

123/590

第一百二十三章 入力内容

画面が切り替わった。


しばらく読み込みが続いたあと、いくつかの項目が表示された。


「入力区分――外部照会」


「入力経路――業務窓口」


「入力種別――所在関連情報」


「入力日時――兄が南区に入った日の午後」


女は、そこまで読んでから画面を止めた。


「ここまでは、前に見た。」


「うん。」


「その下。」


透はスクロールした。


「入力元区分――外部。」


「入力者――記録対象外。」


「入力者の本人確認――実施せず。」


女は眉を寄せた。


「誰が入力したのかは、分からない。」


「そう。」


「誰から受け取ったのかも。」


「依頼元区分しかない。」


「外部。」


「うん。」


女はしばらく画面を見ていた。


「じゃあ、肝心の内容は?」


透は次の項目を開いた。


「内容区分――所在関連情報。」


「具体的な住所は?」


「非表示。」


「場所は?」


「非表示。」


「人物名は?」


「非表示。」


女は少し黙った。


「全部、見えない。」


「権限制限。」


「M―2でも?」


「この画面では、詳細入力内容の参照権限が別になっている。」


「じゃあ、M―2は何を見られる?」


透は権限定義を開いた。


「処理条件確認。」


「旧記録参照。」


「名称使用履歴。」


「関連情報の存在確認。」


「でも、原入力内容の詳細は別権限。」


女は頷いた。


「だから、さっきの『参照結果――取得済』も。」


「内容全部を取得したという意味ではない可能性がある。」


「参照可能な項目を取得した。」


「そう。」


女はノートを開いた。


「取得済≠全内容取得。」


透は頷いた。


「また一つ。」


女は書き終えると、画面に戻った。


「それで、入力された所在関連情報は何に使われた?」


透は処理後の記録を開いた。


「S―系統へ連携。」


「目的。」


「所在関連情報確認。」


「対象。」


「旧業務情報。」


女は首を傾げた。


「旧業務情報?」


「うん。」


「人じゃない。」


「そう。」


「業務情報。」


「そう。」


女は画面を見た。


「でも、所在関連情報。」


「うん。」


「業務の所在?」


「可能性はある。」


「場所の所在じゃなくて、業務がどこで管理されているか。」


「そういう意味もあり得る。」


女は少し考えた。


「だから、ここでも『所在』という言葉だけでは分からない。」


「うん。」


「人の所在なのか。」


「分からない。」


「業務の所在なのか。」


「分からない。」


「管理情報の所在なのか。」


「それも分からない。」


女はノートに書いた。


「所在関連情報≠人物の現在地。」


透は頷いた。


「ここは重要かもしれない。」


「うん。」


女は入力内容の定義を開いた。


「所在関連情報。」


その定義には、


「現行処理における対象情報の管理位置、連絡経路、照会先その他関連情報」


とあった。


女は読み終えてから、しばらく黙った。


「管理位置。」


「うん。」


「連絡経路。」


「そう。」


「照会先。」


「うん。」


「つまり、住所とは限らない。」


「そう。」


女は息を吐いた。


「じゃあ、兄が南区に入った日に『所在関連情報』が入力されたとしても。」


「それだけでは、兄の場所を調べたとは言えない。」


「うん。」


「誰かが兄の住所を探したとも。」


「言えない。」


「でも、何かの所在を確認しようとしたことは。」


透は少し考えた。


「処理目的としては、そう。」


女は画面を見た。


「何か。」


「うん。」


「人かもしれない。」


「そう。」


「業務かもしれない。」


「そう。」


「管理情報かもしれない。」


「うん。」


女は黙った。


「じゃあ、次は連携先を見る。」


透はS―系統の連携記録を開いた。


「受信区分――所在関連情報。」


「旧処理――N―08。」


「照合区分――T―2。」


「本人申告――開始情報として使用。」


女が止まった。


「本人申告。」


「うん。」


「また、この言葉。」


透は定義を開いた。


「処理開始時に本人に関する情報として受領された情報。」


女は眉を寄せた。


「本人から申告された、という意味じゃない。」


「そう。」


「本人に関する情報として受け取った。」


「うん。」


「誰から?」


「ここにも書いていない。」


女は少し笑った。


「言葉だけ見ると、本人が話したように見える。」


「でも、定義は違う。」


「だから、名前だけでは判断できない。」


「そう。」


女は画面を見た。


「これ。」


「うん。」


「兄の日に入力された外部情報。」


「そう。」


「S―系統では『本人に関する情報』として扱われた。」


「うん。」


「でも、本人が入力したとは限らない。」


「そう。」


女はノートに、


「本人申告≠本人からの直接申告」


と書いた。


「まただ。」


「うん。」


「言葉の意味と、記録上の定義が違う。」


透は画面を閉じた。


「だから、記録を読むときは、名前ではなく定義を見る。」


「うん。」


二人はしばらく黙っていた。


そのとき、透が一つの関連項目に気づいた。


「入力情報の前処理。」


女が見る。


「何?」


透は開いた。


「名称照合。」


「旧名称。」


「そう。」


「そして。」


透は次の行を読んだ。


「照合結果――一致。」


女の手が止まった。


「一致。」


「うん。」


「本人一致?」


透は確認した。


「違う。」


「何の一致?」


「指定名称。」


女は画面を見た。


「指定名称が一致した。」


「そう。」


「人が一致したわけじゃない。」


「うん。」


女はゆっくり息を吐いた。


「じゃあ。」


「うん。」


「外部から所在関連情報が入った。」


「そう。」


「その入力に含まれていた名称を、旧記録の名称と照合した。」


「うん。」


「名称は一致した。」


「そう。」


「でも、本人確認はしていない。」


「うん。」


女はノートを見た。


そこには、いくつもの線が引かれていた。


「名称一致。」


「うん。」


「本人一致。」


「違う。」


「業務名称一致。」


「うん。」


「個人情報照合。」


「実施していない。」


女は小さく呟いた。


「全部、別の一致。」


透は頷いた。


「だから、一つの『一致』にまとめると、違う意味になる。」


女は画面を見た。


「兄の日に、旧名称と同じ名前が外部入力に含まれていた。」


「記録上はそう。」


「それが、S―系統に入った。」


「うん。」


「その後、C―12に通知された。」


「そう。」


「でも。」


女は少し間を置いた。


「その名前が兄を指していたかどうかは、誰も確認していない。」


透は頷いた。


「少なくとも、残っている記録では。」


女は椅子に深く座った。


「なら、今までの記録を全部つなげても。」


「うん。」


「兄と旧名称の関係は、まだ一本にならない。」


「そう。」


「でも、完全に無関係とも言えない。」


「そう。」


女は目を閉じた。


しばらくして、また画面を見た。


「一つだけ。」


「何?」


「外部入力に使われた名称。」


「うん。」


「その名称を、誰が外部に伝えたのか。」


透は黙った。


女は続けた。


「システムの中で名前が一致したんじゃない。」


「うん。」


「外部の人間が、その名前を使って入力した。」


「そう。」


「なら、次に見るべきなのはシステムの中じゃない。」


透は女を見る。


「入力の前。」


「うん。」


「その名前が、外部にどう渡ったのか。」


「そう。」


透は関連記録を開いた。


そこには、


「外部入力前情報――一件」


と表示されていた。


登録時刻は、兄が南区に入った日の、


一時間二十四分前。


女は画面を見た。


「これ。」


透はクリックした。


表示された最初の項目は、


「情報伝達経路――業務連携」


だった。


そして、その下に、


「伝達元区分――第七管理系統」


とあった。


女は言葉を失った。


「外部から入ったんじゃない。」


透は画面を見た。


「少なくとも、その前に。」


「第七管理系統から、外部へ情報が出ている。」


画面の下には、さらに一行あった。


「伝達内容――旧名称関連情報。」


二人は、しばらく何も言わなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。