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嘘の向こう側  作者: 亀


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第一百十五章 二週間前

「二週間前。」


透は、その日時を見た。


女も画面から目を離さなかった。


兄が南区に入った日から、二週間。


それより前に、同じ旧名称についての問い合わせがあった。


「開いて。」


女が言った。


透は記録を開いた。


最初に表示されたのは、


「受付区分――業務名称照会」


だった。


「また同じ。」


女が言う。


「うん。」


「照会対象も?」


「旧名称。」


「目的は?」


「現行業務対応確認。」


女は黙った。


ほとんど同じだった。


だが、完全には同じではない。


透は細部を確認した。


「今回は、回答先が違う。」


「どこ?」


「C―12じゃない。」


「じゃあ?」


「第七管理系統。」


女は画面を見た。


「第七管理系統。」


「うん。」


「第七管理室じゃない?」


「違う。」


透はその違いを確認した。


「系統。」


「室ではない。」


「つまり、物理的な部屋とは限らない。」


「そう。」


女は頷いた。


「また名前に引っ張られるところだった。」


透は続きを見た。


「受付方法――連携システム。」


女が言った。


「窓口じゃない。」


「うん。」


「じゃあ、二週間前はシステム経由。」


「そう。」


「南区の日は業務窓口。」


「そう。」


女は少し考えた。


「同じ旧名称についての照会でも、入口が違う。」


「うん。」


「入口が違えば、処理も違う?」


「必ずとは限らない。」


「でも、今回は違う。」


透は記録を並べた。


二週間前。


「入力経路――連携システム」


「照会目的――業務名称対応確認」


「本人識別――対象外」


「個人情報照合――なし」


「回答――業務名称情報」


兄が南区に入った日。


「入力経路――業務窓口」


「照会目的――現行処理条件確認」


「本人識別――対象外」


「個人情報照合――なし」


「回答――業務区分案内」


女は二つを見比べた。


「似ている。」


「うん。」


「でも、同じではない。」


「そう。」


「二週間前は、名前と業務の対応を確認している。」


「うん。」


「兄の日は、その名前を使って現在の処理条件を確認している。」


「そう。」


女はノートを開いた。


「同じ名称≠同じ処理。」


透は頷いた。


「そして。」


「うん。」


「同じ処理に見えても、入口が違う。」


「そう。」


女はさらに詳細を見た。


「回答者は?」


「記録対象外。」


「また。」


「うん。」


「でも、回答した部署は?」


「第七管理系統。」


「個人じゃない。」


「そう。」


女は少し考えた。


「この二週間の間に、人が交代した可能性は?」


透は記録を確認した。


「それは分からない。」


「J―3は?」


「業務再編前後の担当者情報は別管理。」


「じゃあ、担当者の名前を追っても、今回の記録とは直接つながらない。」


「うん。」


女は少し黙った。


「なら、二週間前の問い合わせが誰によるものだったかは、今のところ重要じゃない。」


透は女を見る。


「重要じゃない?」


「少なくとも、今は。」


女は画面を指した。


「誰だったかを決めても、何のために問い合わせたかは分からない。」


「そう。」


「目的として記録されているのは『業務名称対応確認』。」


「うん。」


「だから、まずはその確認が何を変えたのかを見る。」


透は次の記録を開いた。


「回答後処理――検索索引更新。」


女が止まった。


「更新?」


「うん。」


「二週間前に?」


「そう。」


「何を更新した?」


透は詳細を開いた。


「旧名称検索索引。」


女は画面を見た。


「つまり、二週間前の問い合わせの後に、名前を検索するための索引が更新された。」


「そう。」


「理由は?」


「旧業務名称との互換性維持。」


女はしばらく黙っていた。


「これ。」


「うん。」


「兄の日より前に、旧名称を検索できるようにする作業があった。」


「そう。」


「そして兄の日には、その旧名称が検索された。」


「うん。」


「だから、少なくとも名前の検索機能自体は、その日突然作られたわけじゃない。」


「そう。」


女は画面を見つめた。


「前もって準備されていた。」


「うん。」


「じゃあ、兄の日の検索結果も、その準備された仕組みを使っただけかもしれない。」


「可能性はある。」


「そして、誰かがその仕組みを利用した可能性もある。」


「それもある。」


「でも、どちらかは分からない。」


「そう。」


女はペンを持った。


「準備されていた仕組み。」


その下に、


「利用された日時≠仕組みが作られた理由」


と書いた。


透は少し考えた。


「これは、今までより一つ整理できた。」


「何が?」


「兄の日の記録だけを見ると、検索結果が作られたように見える。」


「うん。」


「でも、実際には、その前から検索の仕組みが更新されていた。」


「そう。」


「だから、兄の日の処理は、前から存在していた構造の上で起きた。」


女は頷いた。


「そして、それは兄とは無関係に準備された可能性がある。」


「うん。」


「もちろん、兄が関係する予定を誰かが知っていた可能性まで消えるわけじゃない。」


「そう。」


「ただ、それを示す記録はまだない。」


「その通り。」


女は画面を下へ送った。


そこで、一つの項目が目に入った。


「索引更新後の初回使用――一件。」


二人とも止まった。


「初回使用。」


「うん。」


「いつ?」


透が日時を確認した。


兄が南区に入った日。


女は何も言わなかった。


透もすぐには何も言わなかった。


二週間前に検索索引が更新された。


そして、その後初めて旧名称が検索された日が、兄が南区に入った日だった。


女がようやく口を開いた。


「これは、少し変わった。」


「うん。」


「準備は二週間前。」


「そう。」


「初めて使われたのは兄の日。」


「うん。」


「だから、少なくとも時間的にはつながっている。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「初回使用だったことだけでは、その使用目的までは分からない。」


透は頷いた。


「検索した目的は、別に記録されている。」


「現行処理条件確認。」


「うん。」


「兄の所在確認とは書かれていない。」


「そう。」


女は少し考えた。


「なら、ここでも二つに分ける。」


「何を?」


「事実。」


彼女は指を折った。


「二週間前に索引が更新された。」


「うん。」


「兄の日が初回使用だった。」


「うん。」


「その日に旧名称が検索された。」


「そう。」


「そして、現行処理条件の確認に使われた。」


「うん。」


彼女は指を止めた。


「推測。」


「うん。」


「兄と関係していた。」


「まだ分からない。」


「誰かが兄を探していた。」


「分からない。」


「誰かが兄に関する情報を処理するために、先に名前を確認していた。」


「それも分からない。」


女は頷いた。


「じゃあ、まだここには名前を書かない。」


透は彼女を見る。


「誰の名前?」


「兄の名前。」


「うん。」


「記録に本人識別がないなら、勝手に入れない。」


透は静かに頷いた。


そのとき、画面の下に別の項目が表示された。


「初回使用後の処理――参照条件更新。」


女が顔を上げた。


「参照条件。」


「うん。」


「何が変わった?」


透は詳細を開いた。


そこには、


「旧名称参照――継続」


「個人情報照合――対象外」


「本人識別――対象外」


「現行業務名称――使用可能」


とあった。


女は画面を見たまま言った。


「名前は、その後も使えるようになった。」


「そう。」


「人を識別するためじゃない。」


「業務名称として。」


「うん。」


女は少し考えた。


「兄の日に初めて使われた。」


「うん。」


「でも、その後も使われる前提で更新されている。」


「そう。」


「一回だけの処理じゃない。」


「うん。」


透は画面を見つめた。


ここにも、兄だけでは説明できないものがあった。


兄の日に使われた。


しかし、その仕組みは兄の日のためだけに作られたとは限らない。


その後も使うために残された。


女が静かに言った。


「やっぱり、仕組みの方が先にある。」


透は答えた。


「そう見える。」


「じゃあ、次は仕組みを作った理由。」


「業務再編。」


「その前。」


「再編前の問い合わせ。」


「さらに前。」


女は画面を指した。


「この旧名称が、最初に業務名称として登録された日。」


透は検索欄に条件を入力した。


結果が表示されるまで、少し時間がかかった。


そして、


「旧名称使用区分――業務名称」


「初回登録――四年前」


と表示された。


女は画面を見た。


「四年前。」


透は頷いた。


兄がこの町に来るより、ずっと前だった。

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