第四章 八月上旬~九月中旬 25
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明美が部屋を出ると、冴子は、改めて「美人」と言った。それから、余程ふたりの仲が気になるのか「本当に恋してないよね、ハル君」とハル君をゆっくり言って聞いて来る。演技かも知れないが、表情はマジである。
「あたり前だろう。恋してません。今日は、実家に帰るの?」
「うん、その前に佳ちゃんに電話して都合よかったら横浜で夕飯一緒に取ることになると思う」
佳ちゃんは、彼女の女子高時代の一番の親友だった。
「そうなんだ」
まだ、食事の約束をしているわけではなかった。そうさせないで、ふたりでこの部屋で過ごし、夕食を一緒に取ることを提案したい気持ちもあるが、春夫の口からそのための言葉がすんなり出て来なかった。
「ねえ、新宿のラウンジスリーって言ってたわよね?」
冴子はスマホを取り出して、文字を打ち込み始める。
「ここだ。何か華やかそう」
スマホを春夫の方にかざした。
「どれどれ」
春夫も自分のスマホを取り出し「ラウンジ スリー」と打ち込んだ。
「ギャラリーに西野さん映っているのかしらね」
「どうかな。ホームページって適当に作り変えるでしょう」
ギャラリーの項目には、店内の様子やショーの光景が映っていたが、明美の部屋で見た画像も佐野店長が示してくれた画像もなかった。
「美穂子ママのご挨拶」というのを読んでみる。
春夫と冴子が共に興味をもった部分があった。
[ラウンジスリーは、ショーに力を入れているニューハーフクラブです。たくさんのお客様からこれだけのショーを見せているのだから「ショーパブ」にした方がいいのではないかという声をいただきますが、もっともっと素敵なショーをお見せ出来ると確信しております。その時になったら、堂々とショーパブ、ラウンジスリーを前面に出す所存です]
「ショーに随分力入れているところね。このママってショーにこだわりがあるみたいね」
「プライドを感じるよね。ここで、センターを担っていたんだよ、西野さんは」
「どうしてやめちゃったんだろう」
「分からない。踊るとかお客さんを接待するとかも楽しい仕事みたいだったけど」
何かがあったことを明美は春夫に匂わせた。あれから、春夫が、想像したのは、お客さんに素敵な男性がいたが失恋したとか、水商売の世界では、度々あるようだが、大事なお客を他のニューハーフに取られて転身したくなった、というものだった。何にしても聞かれたくはないことだろう。だったら、本人が言って来るまで黙っていようと考えていたのだった。
「お待たせぇ」
明美が帰って来た。




