第四章 八月上旬~九月中旬 23
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「付き合ってなんかないよ。言ったでしょう。この人からおばあちゃんの原宿と言われている巣鴨を案内して欲しいと頼まれたので案内しただけ」
デスク用の椅子を春夫はダイニングテーブルまで持って来る。
「間違いありません。それから、付き合っている,いないについてですけど、付き合ってはいません。ハル君は、私の心を燃やすタイプではないからです」
「この人が好きなのは、筋肉質の精悍さがある男性。だよね?」
「まあね。やだ、照れちゃう」
明美は、両掌で赤くなった頬を恥ずかしそうに挟み込んだ。その様子をびっくりしたような顔で冴子は見つめている。残り一センチのグレープスカッシュを冴子は、ズズッと音を立てて飲み干した。
ようやく、表情が和らいだ。
春夫は冷蔵庫からグレープスカッシュの新たな缶を取り出し、冴子のコップに注いでやる。買っといてよかった。
「ありがとう。本当に女性みたい。巣鴨の地蔵通りの時はもちろんエレベーター降りて来た時も、正真正銘の女性だと思いました。佐伯君から西野さんというニューハーフが営業部に入ったってことは聞いてましたけどね」
「正真正銘の女性って。少なくも、心は、完璧に女性ですわよ。冴子ちゃん、そう呼ばせてもらうね。あなたも理性的って言うの?きりっとした感じでなかなかだわね」
明美は、言った。
「ありがとうございます。私は、明美さんって呼ばせていただきます。いいですよね?」
「もちろん」
「でも、綺麗ね。佐伯君から女性にしても綺麗な方だと思うよ、って言われてたけど、かなりの美人」
「嬉しい」
「ねえ、そこに立ってみて」
「こう?」
明美は、テーブルから少し離れて冴子の視界に入るようにキッチンの床に立った。言われないのにグルリを身体を回した。
「浴衣が似合ってる。ねえ、佐伯君のこと誘惑したら嫌だからね」
「するわけないじゃない」
冴子の視線が、本当に自分のカレシがニューハーフの明美に興味がないのか心の内を探るように春夫に移動した。
春夫は、首を振る。
「写真いいかな?明美さんの写真見せたら絶対喜びそうな友達がいるのよ」
「どうぞ」
明美は、首を傾げたり、巾着袋を顔の近くに持って来たりのポーズを取った。




