第四章 八月上旬~九月中旬 18
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巣鴨の地蔵の縁日は、毎月四日である。明美が来る日曜日は四日ではないが、今では、縁日があろうがなかろうが、休日は人で混みあう街となっている。JRの改札口に春夫が付いたのは約束の十一時より十分ばかり早かった。電車が着くたびおばあちゃんの原宿を彩るにふさわしい人達が大勢改札口から出て来る。「今日は曇り空で気温が低く、最高気温三十度位でしょう」と天気予報では言っていたが、日傘を手にした高齢の女性の姿もちらほらみられる。
「ええっ」
春夫は、思わず、声をあげていた。手を振って来たのですぐに分かったが、明美は何と浴衣姿で現れたのだ。白い浴衣地にあやめの花が咲いている。明るいオレンジの巾着袋が手からぶら下がっている。
「三分前ね」
改札を出た明美が振り返り大きな時計に視線を投げて言った。
「驚いたなあ」
「何が?」
「何がって今日の西野さんのファッション」
「ああ、お店から提供された浴衣よ。毎年、浴衣祭りっていうのがあってさ。浴衣着てお客さんの接待とか舞台で踊ったりもするの。裾がミニスカートみたいなのとかラメを入れた浴衣なんていうのもあったわね」
相変わらず、声が大きい。
出来る限り、巣鴨で有名な店を紹介してあげたい。そんな春夫の気持ちが交番の前を通り、向いの人だかりの方に向かわせる。しばしば行列の出来る店があったのだ。今日も並んでいる。
「何の店?」
「肉まん、あんまん。食べたい?」
「食べたいけど、ランチ食べられないと困るから」
「だな」
行列を尻目にまっすぐ進み信号を渡り、地蔵通りに入って行く。肩が触れ合う混みようである。赤いパンツで有名な店で明美は笑いながら「勝負下着にするわ」とMサイズを買った。
「ちょっと待って」
明美は、狭い手作りジュエリーの店に入るとあれこれ眺め、貝殻のネックレスを購入した。
洋品店で立ち止り中を覗いていると、中から出て来た三人連れのおばあさんのひとりが、
「美人ね。モデルさん?」
明美に向かって言うのに他のふたりも同調する。




