第四章 八月上旬~九月中旬 10
10
テーブルの上に大皿の焼き鳥二人前が乗った。
明美は、ネギマをひと串食べてから質問に答えた。
「専門学校に入学して、わりと時間が経ってない時だったかな。専門学校の食堂で友達に聞かれた時にトランスジェンダーであることを告白した。それ程、不思議に取られなかったと思う。ユニセックスの服装してたし、言葉遣いも女性ぽくなりつつあったから」
「浮かなかった?」
「自分では、ずっと男の子とも女の子ともうまくいっていた、と思っている。人間関係で孤独感はなかったわ」
「やきとり一番」の店内が混んで来た。周りの席に自分達の会話が聞こえているのを感じ取りながらも、春夫には、そうしたことが随分と平気になっている。
「ねえ、聞いていい?」
「何?」
「ハル君って、ニューハーフクラブのこともだけど、私のトランスジェンダーの部分余り聞いて来なかったよね。どうでもいいことだったのか、子守りとして意識的にしたのかどっち?」
「さあ」
春夫は、首を傾げた。
「どっちかと言えば、営業の子守りとしての意識かな。西野さんをひとりのOLとして扱うには、変にトランスジェンダーの部分を入れない方がいいかなって思ったから」
「気を使ってくれてありがとう」
「興味本位でいろいろ聞いても怒らなかった?」
「大抵のことわね。飲み会の峰岸さん的なことも今日は許してあげるから聞きたいことがあったら聞いていいわよ」
「これまで、何十回と言われて来たかも知れない月並みの質問していい?」
「ちょっと待って」
明美は、軽く手を挙げ、掌を見せた。
「月並み?あてるね。二、三個に決まっているのよ。いつ、どんな風に自分が普通の男の子と違うことに気が付いたのか、これかしら?」
「それ」
「空想力が私にそのことを教えてくれた、が正しい答えになるかと思う」
明美は、言った。
空想力、どういうこと?
春夫が、考えている間に明美は話を続けた。




