第四章 八月上旬~九月中旬 9
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ダンサー達が、並んでいる写真である。
「これ、あなたじゃない?」
「違いますよ。お化粧しちゃうと誰が誰だか分らなくなると間違われても仕方ない部分ありますけど、とに角、ラウンジスリーなんてお店で働いたことありません」
「そうか。てっきり、あなただと思ったけどね」
「すいません」
春夫は、カラーコピーされた用紙を受け取った。
「違うと思います。顔の輪郭が、よく見ると違います」
似ているようでもあるが、ここは、はっきり否定する。
「似てるだけか」
佐野店長は、落胆した様子で、春夫から返されたそれを胸ポケットにしまった。
別れの挨拶は、前回同様、明美と佐野店長が、通路で手を振り合うものだった。
「あの人、本気で西野さんのこと好きなんじゃないの?」
「さあ?私に興味があることは間違いないけどね。おっぱいに視線が幾度も来てた」
「お店のホームページに紹介される時って、スリーサイズとか書かれたりするわけ?」
「私のお店ホームページ持ってなかったのよね」
「今時?信じられない」
「ご勝手に」
明美は、すまし顔で答える。
アメ横近くの、「やきとり一番」と書かれた居酒屋に入る。
まずは、ビールのジョッキで乾杯。ふたりして、ゴクゴクという音が聞こえて来そうな勢いで飲む。
「ああっ、おいしい。スイッチ変換されたからね」
明美が言った。
「ハル君って呼びたいんだろう?どうぞ」
「そう。やっぱり電車に一時間も揺られると遠いわよね、ハル君」
「無理に呼ばなくていい。遠い。暑いから、余計に感じる。だけど、入社して、もうすぐ三カ月ってわけだ。早いね」
「私は、逆に感じる時の方が多いわ。皆、新しい体験だから当たり前って言えば当たり前だけどね」
「満足している?」
「そりゃあ、もう。お店時代のいろんな滓っていうの、それが流れて行くのが実感出来る。元々、私、営業の仕事に興味あったの。専門学校出た時、営業の仕事があったのね。女性として採用してもらえるなら行きたかったけど」
「専門学校は観光コース科だったよね。その方面の会社?」
「うん、観光バスの会社。企業回りをして社内旅行とか案内する仕事」
「女性として勤めたいと言ったわけ?」
「うん。一次面接の面接中にね。人事担当の部長と課長だったかな。私が、女性としてお勤めしたいのですが、と言った時のふたり。目が点だったわよ。どういう意味ですか、って聞くから、女性の洋服着て女性名で働きたいって言ったら、課長だかが、「お疲れさま、面接終了します」で終わり。六年前の山梨県よ。日本全国同じだったと思うけど、男が女性名で女装して昼間の会社でお勤めするなんて考えられないわよね。だけど、私がワイシャツにネクタイして企業回り出来ると思う?言葉遣いやらなにやら一日の三分の一もの時間男の演技をするなんて耐えられると思う?」
「思わない。西野さんは、いつカミングアウトしたの?」




