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第四章 八月上旬~九月中旬 8

           8

 上野駅から木川課長に電話を入れる。

「熊谷桐沢堂さんは、前向きに検討してくれるとのことです。――それで、西野さん連れてもう一軒訪問付け足しました。パピル東京上野店です」

 

 木川課長は、すっかり、春夫の魂胆を見抜いている。

「今日は、ふたりとも直帰だな?」

「はい」

「ふたりで飲みに行くのはいいけど、西野さん、今度、谷中だろう?お寺が多い地域だからさ。帰り遅くなったら送っててあげろよ。あっ、部屋までじゃなくていいから」

 と言った。

 部屋までじゃなくていいから、の後に複数の笑い声が入った。


 月曜日には、風評被害に襲われるかも知れない。


「課長何だって?」

「熊谷桐沢堂が前向きって伝えたら喜んでいた」

「それだけじゃないでしょう?」

「飲みに行くんだろうって言ってた」

「見抜かれていたわね」


「カラオケ行ってニューハーフショーの再現をさせます、って言いたかったけどやめておいた」

「絶対にしません」

 明美は、きっぱり言った。改札を出てから歩くこと五分、さすがに熊谷に比べると熱量自体は低く感じられるが、駅ビル地下通路には、湿気を伴った空気が充満している。これはこれで歩くのがしんどかった。


「オオッ、いらっしゃい。ワンピ似合ってますよ」

 パピル東京上野店の佐野店長は、春夫が、そこにいるのが見えないかに明美の頭から足までも眺めている。

「ありがとうございます。嬉しいです。佐伯の希望を聞いてくれたらもっと嬉しいです」

「まあ、コーナーはちょっと無理だけど、本当にワゴンは検討するから」

「よろしくお願いします」

 春夫は、頭を下げる。

 

 やっぱり、この人、本気でニューハーフが好きなのでは、と春夫は、佐野店長に思ってしまった。春夫が、「花柄文房具ポーチ」に「動物文房具ポーチ」が加わることなど説明しているのにどこかうわの空を感じるのだ。

「終わった?」

 そう言うと、佐野店長は明美に語り掛ける。


「あなたが働いていたお店、新宿のラウンジスリーじゃない?」

「ラウンジスリーですか?聞いたことあるお店ですけど、違います」

「ほんとにぃ?」

「嘘はつきません」

「いや、これね」

 佐野店長は、胸ポケットから一枚のカラーコピーを取り


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