第三章 六月下旬~七月下旬 15
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「じゃあ、北島サブちゃんの『まつり』を私を愛した精悍な男の姿を浮かべながら歌うわ」
明美が言った。
「その前に、松田聖子もう一曲歌って欲しい」
春夫は、リクエストした。
明美は、「白いパラソル」を可愛い振り付けで歌う。佐和子の言った通りである。揺れる少しだけミニのフレアースカートから出た脚の線が、文句なしに綺麗であった。
「まつり」の伴奏が始まると、明美は、他のテーブルのお客さん二組にも「一緒に盛り上がってくださいね」と声を掛ける。
小平が、歌の途中で扇子を広げて手渡せば、「祭りだ、祭りだ」と、明美は歌いながら巧みに扇子を操って見せる。
「ねえ、西沢部長の紙吹雪のコップ取って来て」
ママの声にユキナが、カウンターに行って大きな透明プレスチック製コップに山盛りになった紙吹雪を持って来る。
「誰か景気づけにひとつかみ、ふたつかみ撒いてあげて」
もう、ママまでノリノリである。
「撒かせて」
大阪サテライト長の小平が、すぐさま立ち上がり、ママから山盛り紙吹雪を受け取ると、ノリノリで金色、銀色を交えた小さく四角く切ったどこの会社か分からない西沢部長の紙吹雪を撒き始めた。
ヨシノの店内、大盛り上がりである。
皆を巻き込んでの明美の弾け方は、春夫につくづくプロを感じさせた。
小平が撒いた紙吹雪は、プラスチックコップの三割ほどに減っていた。
「西沢部長に謝っておいてください」
木川課長の言葉に
「大丈夫、いい人だから」
ママがプラスチックコップを手に言った。
木川課長が会計を済ませて出て来るまでの時間、「ヨシノ」の前で峰岸が明美に言った。
「いろいろ言っちゃったけど、僕はあなたの営業力を妬っかんでの結果でさ。失礼しました」
「気にしてませんことよ」
「明日のご予定は、塗り絵?」
「不動産屋さん」
明美は、答えた。
引っ越し、具体的に決まりそうなのか、と春夫は思う。ふたりで営業していた時、代々木の今の家賃が高すぎるので引っ越したいというのを聞いていたのだ。
「まだ、分からないけど、私、引っ越しまぁす、多分ね」
「どこ?」
春夫は、聞いた。
「ハル君と同じ町、いいでしょう?」
酔っているにも関わらず、明美は、素早い動きで春夫の背後に回り、羽交い絞めをするように体を密着させた。
「やめろ」
もがきながらも、明美のふくよかなDカップのバストの弾力を春夫の背中は感じ取った。
周りからの何度目かの冷やかし。いい加減にしてくれよ、である。




