第三章 六月下旬~七月下旬 14
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「なかなか聞けない話ですよ。性転換手術した後でも感じるか、って話です」
ユキナが言った。
「深い話ねえ。それで、感じるの?」
「私のお友達の早苗ちゃんによれば十分感じるみたいです、が答えです」
「へえっ、明美さんだっけ?明美さんはもう取ったの?」
「ママまで、取った?なんて聞くのかよ」
木川課長が笑う。
「だって、取って加工するわけでしょ?」
「加工って言わないでくださいよ。生身ですよ、生身」
「ごめんなさい。形成手術が正しいのかしら?」
「私は、していません。いろいろ大変なんですよ」
「どんな風に作り変えるわけ?そこが知りたい」
渡海が聞く。身を乗り出して興味津々の様子である。
「詳しい説明はけっこう複雑なので出来ないけど、早苗ちゃんが言っていた名前だけは、しっかり覚えてる。他にも呼び方はあるみたいだけどね、陰茎反転法と結腸法。今は、費用的とか手術の難易度とかで陰茎反転法というのが普通みたい」
「結腸は、大腸の一部分だから、その部分を活用するんだけど陰茎反転法ってどうするんだろう。陰茎を反転」
カラオケ苦手の金沢サテライト長の三好が口を開けて上を見る。
「ネットで調べて見て。それより、三好さんだけ歌ってなかったんじゃない?歌声聞かせて」
「彼は、カラオケ苦手なんだよ。そう言えば、この前、密かに練習している曲があるから、マスターしたら歌いますとか言ってただろう。成果見せなさいよ」
木川課長が突っ込んだ。
「聞かせてぇ」
駄目押しに明美が思い切り甘えた声を出して催促する。
「しょうがない。石川さゆりの天木越えいきます」
「おいおい、大丈夫か?」の声が飛ぶが、三好は余程練習したのか、「拍手」などと言いながら小さな舞台に乗っかった。深呼吸をして歌いだす。声がしっかり出ているが、時々音程が外れたりするのはご愛敬で、拍手が起こり、「ステキィー」と明美が、叫ぶ。
だが、間奏が終わり三好の歌声が聞こえ始めると、またまた春夫はいじられる。
「西野さん、手術したら、ハル君、第一号にしてあげたら?」
今度は、瀬川主任だ。
「ハル君って?」
ママが聞いて来る。
「こちら」
「嫌ですよ。西野さんの第一号は、筋肉質で端正な顔立ちの男に決まってるんですよ。だよね?」
「ウーン、ハル君にしてもいいかも、なんて嘘。第一号は、絶対筋肉質で端正な顔立ちの私の理想の男性ですわよ」
明美は、答えのだった。
「ちゃんと、聞いてくれました?」
天木越えを歌い終わった三好が席を見渡し聞いて来る。
「もちろん、三好君にしてはうまかった」
峰岸係長の拍手に他も同調してサービス込みの拍手をした。
「じゃあ、全員歌い終わったところでそろそろお開きにしますか」
木川課長が言った。
「トリは、西野さんに歌ってもらいましょうよ」
渡海の言葉に全員が賛成する。




