第三章 六月下旬~七月下旬 13
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「ハル君」、冷やかしの声が重なり合った。何とも照れる呼び名だ。春夫は、「ハルオちゃん」も「ハルオ君」も「ハルオ」もこれまで呼ばれたことがあるけど、「ハル君」などと呼ばれたのは初めてだった。
「いいわよね?ダメって言ってもプタイベートの時は、呼ぶけどね」
明美は、顔を乗り出して時々見せる流し目の矢を放ったのだった。この視線には、本当に魔力がある。春夫は、顔に血が昇るのを感じた。
「赤くなってる」
水割りを作るユキナが笑う。
「可愛い、ハル君」
松尾までが、調子に乗っていじって来る。
「お前なあ」
ますます自分の頬が熱くなるのを感じながら春夫は応戦したが、虚しい反撃だった。
「ところでさ、西野さんは、まだ取ってないんだろう」
峰岸サテライト所長が、春夫に問いかける。
「何をですか?」
「何を、って、それを俺に言わせるつもり?」
「だって、意味分かんないもん」
「チンチンだよ」
「まだですわよ。それが、どうかいたしまして?」
「どうかはいたしませんけど、まじめに聞きたいんだけどさ。男性の場合、性転換手術したら快感半減しちゃうんじゃないの?」
「峰岸さんは、そう思っているわけね?」
「うん。俺のイメージする取ってないニューハーフのセックスって、ケツの穴に男のアレを受け入れながら勃起してエクスタシーを感じている構図なんだよな」
「それ、アケスケな表現過ぎますよ」
ユキナが笑いながら、批難の言葉を浴びせる。
「つまり、俺が言いたいことは、だ。手術したら、挿入部分の快感はともかく、前は興奮の部分が失われるんだから、その分、快感はダウンする。ちゃう?」
「お答えするわ。私の年上のお友達に早苗ちゃんっていう人がいるんだけど、五年前に性転換手術を受けて、今、パートナー、もちろん男性よ。一緒に暮らしているんだけど、ちゃんと、快感を覚えているみたい。アーンなんて、声を張りあげてるって、言ってた」
「そうなの?形的に女性になったことでメンタルの力がそうさせるんじゃないの?」
名古屋サテライト長の栗山が言った。
「何の話してるの?やけに悩ましい声が聞こえて来たけど」
にんまり笑いを浮かべて、ママがやって来る。




