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第三章 六月下旬~七月下旬 12

           12

 この日の明美は、クリーム色のブラウスに深いブルーのスケスケのカーディガンだった。カーディガンは、前が開かれてブラウスのボタンの一番上のボタンが外されている。


「その豊かなバストだけど、ブラジャーの下に何か入れているわけ?」

 峰岸係長が聞いた。

「嫌な質問には答えなくてもいいからね」

 木川課長が釘を刺したが、

「慣れてますから大丈夫です。お答えします。自前プラスアルファです」

 明美の方は、サービス精神満点で答えを返す。


「どういう意味?」

「女性ホルモンで膨らますでしょう。それに豊胸の整形を加えたって意味ですわよ」

「サイズで言うと」

「Dカップ、見たい?」

「見たい」

 複数の声があがった。その中には、お店のホステス、先刻から臙脂(えんじ)色のソファに座り水割りを作っているユキナの声もあった。この前来た時、新人さんと紹介された付けまつ毛がやたら目立つホステスだった。もう、ヨシノにすっかり慣れている感じだ。


「じゃあ、エッチな峰岸さんのリクエストにお応えして」

 明美は、ブラウスの胸元をちょっとさげ、春夫の頭の中では、0、三秒で元に戻した。

「全然ダメ」

 皆から声があがる。

「今のは、オアソビ。これでどうかしら?」


 今度は、ボタンをもうひとつ外して、大胆に押し下げた。レースのブラジャーに包まれた明美の白い肌が露出した。白肌のおっぱいである。十秒もあったか、これだけ、堂々とされると見ている方が照れてしまう。

「はい、終わりぃ」

「すごい」

 と感嘆の声を出したのは、峰岸サテライト所長ではなく木川課長だった。


「だめですよ、課長。浮気なんて考えたら」

「それを言うなら、峰岸さんの方でしょう?」

「私は、大丈夫です。心配するとすれば、子守り役の佐伯君でしょう」 

 峰岸サテライト所長が急に方向を変えて来た。


 思わぬ方向転換に、春夫は焦った。

「心配ご無用です。それと、子守り役は終わっています」

「僕は、引継ぎが終わったら子守り終了とは考えていなかったけどな」

 と、木川課長。

「エエッ」っと声をあげるも春夫への振りは、まだ終わらない。

「西野さん、佐伯君はどう?」

 吉村係長だ。


「聞かなくていいですよ。余計なこと聞かないでくださいよ」

「いい人ですよ。この会社で営業ウーマンとして頑張れば何とかやっていけるな、と自信を持たせてくれた恩人ですからね。仕事を離れてひとりの男性としては、そうねえ」

 明美は、観察するかに春夫を眺めて言った。

「可愛さを感じることがありますね」

「アーブナイ、佐伯君危機一髪」

 と、峰岸サテライト所長がアーブナイにアクセントをつけて言えば、

「心配だなあ。子守り開放してやった方がいいかも知れませんよ。カノジョいるんですから」

 吉村係長が続く。


「大丈夫です。私が、過去に恋した男性は、筋肉質で精悍なイメージがある人ばかりですから。佐伯さんは、はつきりタイプが違います。だけど、今夜この場で、ひとつ宣言させていただきます。佐伯さんをプライベートでは、今後、ハル君と呼ばせていただきます」

 テーブルの皆に聞こえる大きな声で明美は、前触れなしの突然の宣言をしたのだった。



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