第三章 六月下旬~七月下旬 7
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七月最終の週に開かれた月一の営業部全体会議の主役は、当然のように明美だった。
木川課長が明美のファイティングスプリッツを絶賛した。
会議室で配布された㊙の印が押された用紙には、営業部全体の数字と共に営業課各自の当月の売り上げ額、目標額達成率、フェリシアーノコーナー獲得に関する成績などが掲載されている。
コーナー設置では明美が、四軒二十ポイントで一位だった。渡海が十ポイントで二位、春夫は五ポイントで三位、他のメンバーは、本社もサテライトも揃ってゼロポイントだった。
木川課長は、言った。
「コーナー獲得で、明らかに、女性向け商品の数字は、あがっています。皆も西野さんに負けないように頑張ってください」
さらに、こう付け加えた。
「西野さんの名誉のために言っときますけど、強引な営業はしていませんからね。お礼と共にザザと短期間で何度も行ったリリーショップの店長さんに確認しましたが、納得のコーナー設置だと言ってました」
「あの」
福岡サテライトの峰岸が顔をあげた。
一昨年に土木業界から転職して来た係長である。春夫には、短髪で将棋の駒みたいな顔の形に目、鼻、口のパーツが納まっているように見える。年齢は、五十歳、木川課長よりも年上である。他のサテライトは、二十代後半から三十代前半で名刺にはサテライト長と印刷されているが、峰岸だけは、係長待遇でサテライト所長と印刷されている。時々、木川課長に対してズケズケした物言いをする。言ってみれば、刈谷係長の男版と言ってもいい人であるが、敬意を払うべきところは払うというキチンとした部分もあるので、ふたりの関係は良好である。
「率直に言わせていただきますが、ポイントの多い背景には、西野さんの女装スタイルも有利に働いているかと思われます。私も女装していいですか?」
木川課長が答える前に「やめてください」、業務の女性達の声が重なった。
「もちろん、これです」
木川課長は、右手と左手を交錯させて大きなバッテンを作った。
「いいですよ。メイクの仕方とかランジェリーの付け方とはマンツーマンで教えましょうか」
明美の言葉に「いい、いい、マンツーマンは、ご遠慮します」と笑いの中で、峰岸サテライト長は両掌を顔の前で左右に振った。
「福岡サテライト所長、先月の営業会議でどこか取れそうだ、とか言ってなかったか?」
三田部長が言った。
「期待していましたが、ダメになりました。しばらく、このままで、ということで」
「やると言ったらやる、の峰岸さんでしょう、頑張ってよ」
三田部長の言葉にさすがの峰岸サテライト所長も反論なしだった。




