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第三章 六月下旬~七月下旬 6

           6

 レイハナ八号店が、フェルシアーノのコーナーを作り文房具売り場の数字を伸ばしたことは、お互いの会社にインパクトを与えることになった。長谷川店長の言うウィンウィンの関係が構築されたのである。


 レイハナグループの店長会議が年に数回あると聞いていたが、長谷川店長がその効果を発言してくれたのか、鎌倉のレイハナ十二号店や目黒のレイハナ三号店でもフェルシアーノのコーナーが設けられた。テーブル式のワゴンに置かれる商品が、「おとなの女性のためのペンケース」と「花柄文房具ポーチ」と二種類の「文房具ケース」というのも変わりなかった。春夫にとって残念だったのは、明美に引き継いだ後の担当エリアにレイハナの店舗が、ひとつもなかったことであった。

               

 木川課長が、「こんなに早く営業の仕事に慣れるとは思わなかった」そんな言葉を吉村係長に洩らしたそうだが、明美は、ひとりになってからも張り切って仕事に励んでいた。

 営業の仕事にやりがいを見出したのは、嘘ではなかったのだ。

 明美はとりわけ、フェルシアーノのコーナーを獲得することに熱意を燃やしたのだった。成果もあがった。二十日間で三軒の店舗からフェルシアーノのコーナー設置の確約を取り付けたのだった。


 池袋の西口近くの文房具具ショップ「ザザ」板橋駅前のブックストアー兼文房具の「ササキ書店」は、春夫も話したことがあるが、まるで、関心がないようだったので、希望はないな、とあきらめた店舗だった。


 春夫が、これら二店よりも「やられた」と感じたのは、板橋区蓮根にあるバラエティーショップでのコーナー設置だった。名前は「リリーショップ」、ぬいぐるみやらクッションやらポストカードやら絵皿やらがあくまで主力商品である。


 加田から「うちの商品で置いてくれているのは、ポーチだけだから、たまに顔を出す程度で十分」と言われたせいもあってか、引継ぎ後一度しか行かなかった店舗である。

明美は、違った。ホワイトボードに二週間に三回も「リリーショップ」の名前を書いたのである。そうして、見事にコーナーをゲットした。


 「ザザ」や「佐々木書店」の時は、自分ももうちょっと頑張るんだった、と悔しい気持ちが先だったが、「リリーショップ」の場合は完敗を認めざるを得なかった。

 ただ、やっかみでなくて、気になることもあった。


 明美が、ニューハーフクラブの乗りで、けっこう強引な営業をすることだった。夜の商売をテクニックをことさらに入れてもらっては、会社としてのイメージもあるので、困ることなのだ。瀬川主任や渡海からも同じ意見が出た。


「ポイントを取りたい気持ちは、皆おなじだけどさ、強引な営業はなしだからね」

 春夫がソフトに言うのに、

「ご安心のほどを。夜の世界の営業感覚を昼の世界に持ち込みませんから」

 明美は答えたのだった。 


           



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