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第三章 六月下旬~七月下旬 4 

           4

「そろそろお見えになる時間かなって。新しい名刺です」

 正社員になった名刺が、春夫と明美に渡された。アシスタントの文字がなくなって、文房具担当の肩書になっている。たった五文字の違いだけど、本人にとっては、大きな違いだろう。

「おめでとうございます」

「ありがとうございます」

 春夫の言葉に対する雛子の返事は弾んでいた。

 

 長谷川店長が加わった。

「ありがとうございました。素晴らしく目立つところに置いていただいて、感激です」

「今日で一週間目ですけど、ウィン、ウィンの関係になりそうですわ。特に高価なペンケースが、毎日複数売れていくって感じで、近いうちに追加頼むことになりそうです」

「ポップの力もあったと思います」

 春夫は、吾妻雛子をねぎらう気持ちも込めて言った。

「試行錯誤した頑張った成果よね」

「はい。でも、この短いポップを読んでくださる方を見ると嬉しいです」


「感激で、握手させていただきたい気分です」

 明美が両手を雛子の前に差し出した。

「ええっ」

「してあげなさい。上司として許可します。もちろん、無理しなくてけっこうよ」」

「じゃあ」

 吾妻雛子が、手を差し出すのに明美の両手が包み込んだ。目をつむり、笑いながら吾妻雛子の顔が赤く染まった。


「それでは、私は店長と」

 春夫が言うと

「拒否します」

 という声が返って来たのだった。


「西野さんって期待していいですよ」

 と長谷川店長が言った。

「はい、将来は、優秀な営業マンじゃなくて営業ウーマンになれると社内的に評価しています」

「ねえ、言っちゃっていいかしらね?」

 長谷川店長が明美の顔を覗き込む。             

                

             



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