第二章 五月下旬~六月中旬 7
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「社長のレクチャーって、最初から熱を帯びてたけど、これからのフェルシアーノのところでさらにボルテージあがらなかった?」
春夫は、後輩ふたりに聞いた。
松尾が「ボルテージがあがった」と答えた。
「ファルシアーノを文房具の世界での有名ブランドにするそのためには、独自性のある商品開発と同時に他社にはない独自の営業展開が是非とも必要だ、と強調してましたね」
佐和子が続いた。
そうだろうな、松尾や佐和子の時は、自分の時以上に社長の気持ちは強くなっていたに違いないと春夫は思った。
彼らが入社する前、兄が継いだ塚田文房具は、子供向け商品の大手「フローラ産業」の傘下に収まったからである。そのことを塚田社長が盛んに嘆いていたという話は社員達の誰もが知るところだったからである。
父親が苦労して大きくしてくれた会社をより安定を求めたのかも知れないが、ランドセルや学習机などキッズ製品では間違いなく国内トップクラスの企業の傘下に入ったことがに許せない気持ちになったのかも知れない。
ならば、塚田文房具の血を引いた自分が他社にはない特徴ある大人を意識した文房具を開発していこうと心を燃やすのは当然とも言える。
「じゃあ、今日も頑張ろう」
春夫は、鞄を持った。
「張り切ってますね」
「だって、あれですもの」
佐和子が春夫を見あげてにやりと笑う。
「言わなくていい、行って来ます」
春夫はオフィスを出た。
あれ、にあてはまるのは、西野明美さんの、を溶かし込んだ「子守り役」に違いなかった。やれやれだ。
打ち合わせテーブルの中に消えた明美だが、今頃、「佐伯君をあなたの子守り役にしたから、困ったことがあったら何でも聞くように」なんて、木川部長から告げられているのだろう。




