第五章 九月下旬~十一月中旬 17
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通りを渡ると冴子が言った。
「ショーもすごくきれいで素敵だったし、アキラちゃんも楽しかったし、来てよかったことは間違いないけど、明美ちゃんについてだけは悲しくなる」
「タクシーに乗った時の背中が淋しかったな」
「でしょう。聞いて」
冴子は、そう言うと、自分の考えを言った。
「明美さんは、ラウンジスリーの演出家である宍戸さんのこと愛していた。元気?って聞いたユカリちゃんもラウンジスリーで働いていて、踊っていた」
「アキラちゃんは、恋敵って言ってたよね」
「うん。明美ちゃんとユカリちゃんが宍戸さんの取り合いになって、宍戸さんは、ユカリちゃんを選んだ。その結果、宍戸さんと明美さんの仲がぎくしゃくするようになって、明美ちゃんはレッスン中も反抗的態度を示したりやる気のない態度をとるようになった。それで、ふたりの仲がどうにもならなくなって、明美ちゃんに飛び出す決心をさせた」
「うん、だいたい、あたっている気がする」
「今頃、タクシーの中で今日来たこと後悔しているかも知れない」
「そこは、どうかな。美穂子ママは、かなり、本気で西野さんに戻って来て欲しいと考えていたみたいだったし、西野さんとしては、一度はっきり断らなければ、という気持ちがあって来たんじゃないのかな。そりゃあ、メールとか電話でも断ることは出来たと思うよ。だけど、性格的に義理堅い部分があるから、断わるなら直接会ってと考えたように思える」
「義理堅い性格、営業活動にもそれを感じる?」
「時もある」
「最近、成績はどうなの?コーナーの獲得とか」
「一時ほどの勢いは感じられないけど、頑張ってるよ」
春夫は、答えた。
冴子のバッグの中からメロディーが流れ出た。
「うん、そう。――終わった。すごく綺麗で面白かった。――まっすぐ帰るわよ。じゃあね」
冴子は、携帯を切り、バッグに戻した。
「お母さん?」
「そう。駅まで迎えに来るって」
「その方がいい」
「あっ、おいしい亭からメールが来ている。来週は、大丈夫だよねって」
「父、危篤です」
「ない、ない」
冴子は湘南新宿ラインで帰って行った。まあ、期待はしていなかったけど、明美が言った「ふたりの夜は、これからよ」なんて展開にはならなかった。




