第五章 九月下旬~十一月中旬 16
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「恋敵。これよ」
アキラは、言うとすぐに口に立てた人差指を口にあてがったが、それも一瞬で続けた。
「だけど、ママが何考えても無理だわね。瑠璃ちゃんは、ラウンジスリーには戻って来ないでしょう。宍戸も意固地なところがあるし」
と。
美穂子ママが、明美と共にやって来る。
「塚田社長によろしくお伝えください。それから、明美のことよろしくお願いいたします」
「すいません、本当に貴重な営業戦力ですから、これからもどんどん活躍してもらいます」
春夫は、謝ると共に力を込めて、ダメ押しの答えを返したのだった。
十月半ばの夜の新宿は、長袖シャツでは涼し過ぎるほどに気温が下がっていた。
「本当に楽しめた?」
広い通りに出た時、明美が聞いて来る。
「もちろん、十分満足」
春夫は、答える。
「ショーはきれいだし、アキラさんは面白いし、文句なしに楽しめました。ありがとうございました」
冴子が礼を言った。
信号が変わったのに明美は、渡ろうとしない。
「私、ここからタクシーで帰る」
と明美が立ち止った。
「駅まで一緒に行かないの?」
「行かない。誤解しないでね。今日は、ふたりと昔の職場に来られて楽しかったし、全然不機嫌になってないからね。ただ、タクシーに乗って夜の景色見ながら谷中まで帰りたくなっただけ。冴子ちゃん、また、会いましょう」
そう言うと、明美は、向こうからやって来るタクシーに手をあげた。
「じゃあね、ふたりの夜はこれからよ」
明美は、手を振ってタクシーに乗り込んだのだった。




