第五章 九月下旬~十一月中旬 13
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「間もなく、ショータイムのお時間でございます」
アナウンスが流れ、ラウンジスリーの店内が、暗くなった。
管楽器を中心とした軽やかなリズムに乗って、ニューハーフ達が舞台の両側から登場する。衣装は白、ひらひらした揺れる紐状の飾りがついている。
全員がそろっての見事なダンス、とはいいがたい。さっきまで席についていたアキラともうひとりのいかり肩のごつごつした体形のニューハーフの踊りがぎこちなく映る。
「ヘイッ」
曲のラストの決めポーズでもアキラと右から二番目が、ワンテンポどころかツーテンポ、スリーテンポ遅れた。
「明美ちゃん、アキラさんと右から二番目の人、わざとですよね」
「二番目は、カリナちゃん。さあ、どうかしらね。企業秘密」
明美は答えを教えてくれない。
スタンダードジャズといった感じの曲に合わせた踊りが終わり、舞台が暗くなった。再びスポットライトがあたると、三人のニューハーフの姿があった。
アキラとカリナとマスカットだった。三人とも衣装が変わっている。舞台袖に消えてからもの一分も経ってないんじゃないか。びっくりの早変わりである。
「ねえ、あんたが新入りのグレープ」
アキラが口火を切る。
「グレープじゃなくて、マスカットです」
「分かってるわよ。言ってみただけ」
「ねえ、テストした演出の宍戸が、テストして素晴らしいって言ったらしんだけど、私達がチェックしてあげるわ」
「怖いです。そのルックスにそのガタイ」
マスカットが、アキラとカリナを交互に見る。アキラが小柄でふっくらしているのにカリナの方はと言えば、いかり肩で背も高くデコボココンビだ。
「ルックス?ガタイ?言ってくれるわね。まあ、いいわ。ここに来るまで、踊りは習って来たの?」
「ちょっと」
「ちょっと位じゃ此処ラウンジスリーじゃやっていけないわよ。いいわ、私達がどの程度か見てあげる。ところで、踊りは、何やって来たの?」
「子供の頃はバレー、それからヒップポップにジャズダンス。最近は、タップダンスも少々」
「カリナちゃん、聞いた?チェック始めるわよ」
「分かりました。どうぞ」
「何、その冷めた感じ。じゃあ、ジャズダンスの基本ステップね。パトブレやってみて。ちょっと待って。お客様分からないでしょう」
アキラは、近くの席に語りかける。
「知らない」
男性客の答えが返って来る。
「それでいいのよ。それが、普通。カリナちゃん、パトブレの見本お願い」




