第五章 九月下旬~十一月中旬 11
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美穂子ママは、反論することなく、
「宍戸さん、もう少しすると来ると思うわ」
と明美に言った。
「ママ、ひょっとして、私が今日来ること宍戸さんに言いました?」
「そりゃあ、伝えるわよ。あなたの踊りが、上達したのは、宍戸さんのおかげでしょ。感謝の気持ちを忘れちゃだめよ」
「忘れてないけど、今日はいらなかったわ」
明美は、明らかにふてくされた態度を示したのだった。
冴子が、春夫の太ももを軽く叩いた。
ほぼ、間違いない。明美のいろいろあってのお相手は、ラウンジスリーの従業員でもなく経営者でもなく、ショー演出家というわけだった。ニューハーフクラブの世界に疎い春夫である。そこまで頭が回らなかった。
「ママ、私、いいですか?」
「うん」
「失礼します。瑠璃さん、たまには、遊びに来て踊りのアドバイスとかしてください」
「分かった。マスカットちゃんも頑張ってね」
明美の激励にマスカットは、お客さんの席に戻って行った。
「綺麗な子でしょう?」
「うん、芸能プロダクションからスカウトされるんじゃない?」
「あったのよ。こないだ道歩いている時、シルクプロモーションから声かけられたって、嬉しそうに言ってた」
シルクプロモーションは、何人かの有名女優が在籍している中堅プロダクションで春夫もその名前を知っていた。
「ひょっとして、女性としてですか?」
「そう、ニューハーフとしてお勤めしてるって言ったら、離れていったみたいだけど」
「私も新宿東口出たところで何年か前、スカウトされたわよ。アダルトぽかったんで無視したけどね。でも、女性と間違えられるとちょっと嬉しいものよね。アキラには分からないだろうな、永久に」
「むかつく」
アキラが言った時、「ママ」という呼ぶ声が近くで発せられた。




