47話 意味のある謝罪
《ムジーク王国ー旧・グラフィカ領ー要塞都市デッサン》
《第一区ー首都ヨンレク》
地下の道を歩いていく。
「体調はどうだ」
「罪人の体調を気にするなんて、変わったやつだな」
俺は檻の中にいるブリゲルに語りかける。
旧・グラフィカ帝国時代の皇帝、ブリゲル。
「・・・何をしにきた?」
「たまたまな。見つけたんだ。ソーレント戦役の本が」
「どういう事だ」
ソーレント戦役。
俺が、英雄として活躍した、その昔の戦争。
その戦争の記録を読みながら、当時の事を思い出す。
ー回想ーーー
《地平暦 345年》
弾かれる剣。弾く剣。鎧を叩く剣。盾を押し込まれる剣。その、人殺しの道具たちが音を立て、戦争を賑やかにしている。
俺の目の前に現れた男は、しなやかな動きで俺に向かって剣を振るう。それを避ける。動きは俊敏ではない。俺はぐっと、力をつけて、その男の胴体を斬ろうとした。
その方向に向け、少し身体を動かし、力を受け流す男。
何度も、そのような戦い方が続く。全く、手応えがない。
「なんなんだそれはっ」
思わず言葉が出てしまう俺。
「血を流さない為の戦闘方法、とでも言うのかな」
敵兵は嬉しそうに語る。悔しい俺。
「んなもん知るか!」
俺は剣でその男の兜を狙う。脳震盪を起こすためにだ。しかし、それも失敗に終わる。その瞬間、足が飛び出し、俺は腹を蹴られた。
沢山の戦いを通してきた俺だが・・・
本当に強いと思える奴は少ない。
コイツはそのひとりだった。
ー回想おわりーー
「ブリゲル。俺の話を信じるかどうかは別だが・・・俺は50年余りの過去からやってきた兵士なんだ。ソーレント戦役でも、幾多の兵士とも戦った。そう、アンタと同じ戦い方をする人間ともな」
「・・・父上の事を言っているのか?」
「ああ。そうだよ。アンタと戦った時、思い出したんだ」
間が空く。
俺は勇気を出して、その一言を放つ。
「そいつは、俺が殺したんだ」
「そうか」
半信半疑のブリゲル。
「それを、謝りに来た。申し訳なかった」
意味のある謝罪かどうかは別として、俺は檻の中にいるその男に、謝罪した。
「・・・父は、どんな人間だった?」
「血を流さない戦いを望んでいたよ」
「そうか」




