44話 未来の話
右腕は使い物にならない。
左手で剣を握る。
ブリゲル皇帝が握っていたこの黄金の剣は、見た目以上に重い。その分、しっかりとした印象がある。
利き腕ではないが、戦える。
兵士として、当たり前だ。
俺はその慣れない重さの剣でレオナルドの剣を受ける。
数日前か・・・この男とわかり合った・・・
あの酒場での戦い。
その時は違いに、武器を使わずに勝負し、結果、引き分けた。
互いに感じる。
2人とも、力を振り絞ることが精一杯だった。
俺は俺でハンデを背負ってはいるが・・・
レオナルドもレオナルドで、その力は無い様に思える。
すぅ・・・
レオナルドが、息を吸い込み、筋肉を張る。
それか。ムキムキスピード攻撃・・・
俺は剣を縦に構える。キンッ!レオナルドの凄まじいスピードの横切りを弾いた。やべぇ、手がありえないほど痺れる。俺は左手の感覚を取り戻すまで、レオナルドと間合いを詰め、会話で時間を埋めようと考えた。
「レオナルド。皇帝を殺さなくても帝国は覆る。そうすればもう国民は苦しまずに済むんだ」
「それは未来の話だ」
「ああ、そうだな」
「過去の過ちは消えない。死んだ人間は生き返らない。家財が崩壊しても、全く同じものを用意しても・・・それは違うものでしか無い」
「だからって・・・」
レオナルドの剣が来る。俺は精一杯の力で受ける。
互いに弱い力がぶつかり合っている。
「そうやって、復讐を続けてしまえば、また被害は増える。みんな・・・苦しい思いをする」
俺はワケあって、50年後の世界に来た。
それまでは英雄と称えられる戦績を収めてきた。
その数の中には、沢山の人の命があった。
俺はマタタキ達に出会うまで・・・いや、出会ってもなお、戦争は必然的に起き、人と人が傷つけ合うことを肯定した。
弱き者が弾かれること、それは当たり前のことだ。
そう、思っていた。
「ここで皇帝を斬り!そして国が変わる!それでいいじゃないか!フレデリック!」
数年前・・・
国の為に命を落とした恩人がいる。
その人が望んだ世界が、平和な世界が・・・
やっと実現したと思えば・・・
昔俺が殺した兵士の子どもが国のトップになって、復習を企てていた。
俺のやってきた事は、間違い、だった。
いや、今でもそう言い切れない自分がいる。
でも・・・
「本当に斬るべきものは・・・断ち切るのは、この憎しみの連鎖だろ!」
「仲間の死を!汚された街のその現状を!飲み込めというのか!」
「そうだ!レオナルド!分かれ!」
「分からず屋はお前だ!フレデリック!」
力を振り絞れ。俺。
レオナルドが息を吸う。
その筋肉を膨らませる。
俺はいつも通り、右足に力を入れた。
大地を踏みしめる。
これが互いの、最後の一撃になる。
なんだか、笑っちまうぜ。
やっぱり、この期に及んで、俺は戦いを楽しんじまってる。
レオナルド。
お前は良い奴だし、友達だけど。
俺とキャラが被り過ぎている。
俺の座を奪うな!そういう気持ちもある。
「レオナルド!!!!」
「フレデリック!!!!」
最後の一撃。
響き渡る、その音。




