42話 ふたつの魔法
ー回想ーーー
べバールの塔へ突入する前。
僕とカルバヤシとアシトで、その答え合わせをしていた。
「カルバヤシ。君たちの国の・・・その死者の蘇り・・・これは僕の憶測だけれど・・・魔法は2つあるね?」
僕は仮説を語り始める。
死者を蘇らせる魔法がある、という事。
そして、死者に指令を与える魔法がある、という事。
「そうだ。死者を生き返らせる魔法、リザレクション。そして、死者に命令を下すインストラクション」
カルバヤシは語り始める。
死兵というのは、死者をまず、リザレクションという魔法でゾンビ兵・・・死兵として生き返らせるという事。そして、インストラクションという魔法で命令を下すということ。命令を受ければ、死兵はその命令の為に動き始める。
「魔法が阻止される事は想定外だったが、なるべく結晶の消費を抑える為に、魔法は常時発動するものではなく、都度発動する仕組みになっている」
僕は疑問だった。
シズカが叫んでも、死兵は、動き、戦っていたからだ。彼らはシズカのチート能力を受けても、既に下された命令のために動き続ける事が出来た。そういう事だったんだ。
「じゃあ、アンタがその魔法を使って指示を出してたって事か?」
アシトが言う。
「そうだ。権限を持つ者だけ・・・それは俺っち達、皇帝と皇帝に仕える3人だけが許されている事」
「で、でもよぉ、だとしたら、どうして最初の30体の進軍の時に、アンタ含めて、指示を出す奴がいなかったんだよ?」
アシトの質問については、僕が答える。
「遠隔での指示が可能だからだよ」
「遠隔?何すか?それ?」
「アシト。空を見上げてみろ」
言われた通りに空を見上げているアシト。
僕も上を向く。
「空と雲と塔しかみえねぇっス」
「この塔が・・・司令塔なんだよ。死兵に命令を与えるための」
「よく分かったね」
御名答、とカルバヤシは何故か笑っていた。
急ピッチで建てられた、このべバールの塔は・・・
死兵を効率的に、遠隔地から操作するための塔。
僕はドクタートキタビが作成に失敗した無線機を思い出していた。ラジオ・・・僕たちのいた世界にはラジオがあって、ラジオの電波を発信する為の高い塔がたくさんあった。
「この塔のテッペンに、力の結晶がある。それが作用しているんだ。そこから届く範囲にいる死兵には、その力を・・・指示を与える事が出来るのさ」
「塔の入り口の奴らの見張りも死兵だ。俺っちが何も動かない様に指示を出しておいた。国の事は、ふたりに任せるよ。俺っちは・・・死兵の全停止の命令をかけ、そして、その結晶自体の作動をやめさせる」
「もう、血を流さない様に、頑張ろう!みんな!」
僕達は、そうやって、塔の内部へ向かう。
ー回想おわりーー
《べバールの塔 上部》
僕とアシトは、フッさんが開けて、フッさんが道連れに落ちていった穴から下を覗いていた。
「や、やべぇ!団長が!」
「慌てるなアシト。きっと、フッさんには考えがあるはずだ」
「考え?だってあの人、魔法もチートも使えねーんすよ!?」
どんどん小さくなっていく2人の姿。
塔の壁スレスレの所で小競り合い、フッさんは刺さっていた剣を抜いて・・・捨てた!?
「いや、何かあるはず・・・いや、何も考えていないのか?」
「え・・・団長、もしかして、自分が皇帝を道連れに死んでから、復活しようとか、そんな事考えて無いっスか?」
「たしかにフッさんなら・・・名案思いついた!みたいなノリでそんな事思ってるかも・・・」
今、まさに、この魔法は辞めにしよう。
そういう事をやっているのに。
その時、天辺からカルバヤシが戻ってきた。
「2人とも!死兵の動きはストップさせたよ!」
「カルバヤシ!今はそれどころじゃ無いんだ!あの2人!道連れで、この塔から落ちた!」
「あの2人???」
「僕たちの仲間と、皇帝だ」
浮遊しながら下を見るカルバヤシ。
「ここからじゃもう、追いつけないよ・・・それに、俺っちが出来るのは自分の体重の増減・・・あの2人を軽くして助けたりなんか・・・できない」
今度こそ・・・絶対絶滅・・・なのか?




