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その座を奪われた主人公   作者: 大野春
第四章 ふたつの国
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36話 ふたつの国


「もう、これ以上はやめるんだ」


僕は目の前の男に交渉をする。

彼もチート使いで、きっと戦う事なんて望んでいない。そう思ったからだ。


「手遅れなんだもう・・・」


この男の罪を数えてみる。僕が知るところの・・・

何人も人を殺している。街を壊している。


「手遅れだよ」


「そうだろう?」


「だからって、これ以上続けるのは違うよ!!!」


「・・・だ、大体・・・君達の国が・・・あの時の反乱で崩れていればこんな事にはならなかったたんだ!」

意味不明な事を言い出す相手に、僕はかける言葉が無い。


「俺っち達はザークの首を献上すれば、それでいいんだ・・・そうだ、お前らがもってこい!そうすれば全て丸く収まる!」



僕は驚いた。



「君たちの国が戦争を仕掛けようとしてる理由は・・・ザークなのか?」


僕は3年前の事を思い出していた。


僕はザークと行動を共にした事がある。彼は僕たちのムジーク王国を変えようと戦った。反乱を起こした。そしてその裏でグラフィカ帝国と繋がっていた。

僕たちの国の出来事は、なんとか収まり良くなったけど・・・手を貸していたグラフィカはよく思ってなかったって事なのか・・・

その報復のための戦争・・・


「そうだ。ザークを渡せば、俺っち達は戦争なんてしない」


・・・それは出来ない。


「ザークは過ちを犯している。でも、僕たちの国の人間だ。僕たちの国で厳しい処分を受けている。それは出来ない」


それに・・・僕は続けて言う。


「死んだ人を操るなんて・・・君たちはどうにかしている」


「分かっているさ!でもさ!もう遅いんだよ!俺っちだってこの訳のわからない世界を生きるのに必死なんだ!君も同じだろ!協力してくれよ!」


「とにかくやめるんだ!」

僕は男に近づく。


「どうしたらいい!?分からないんだ!」

そう言って、彼は地団駄を踏み、ふわっと浮き上がる。



どうしたらいい?

僕は考える。



ひとつずつ、組み立て・・・

戦争を止める。それは当たり前だ。

止めてどうする。どうやって、止めるんだ?



どうすれば、戦争が無くなるんだ。



矛盾した答えが僕の中で浮き上がる。

いや・・・矛盾し過ぎている。



魔法を発動しようもするが、発動しない男。

自暴自棄、駄々をこねる様に身体を空中でぶらぶらと動かしている。


僕は自分でも、馬鹿馬鹿しいと思ったけれど、それを口に出してしまった。



「ふ、ふたつの国が争って、戦争しているのなら・・・」



「国をひとつにすればいい」



浮遊した男がすっ、っと降りてくる。

「何を言ってるんだ?」



「グラフィカ帝国を・・・ムジーク王国にすればいいんだ」


「おいおい、まともな奴だと思ったらコレかよ」


「僕は至ってまともさ」


「そもそもなぁ、国をひとつにしようって、そう思うから戦争が起きるんじゃないか!」


そうだ。そうだよ。


「でも、やり方がある」


「やり方?」


「もう、血は流れちゃったけど・・・これ以上、血を流さずに、交渉・・・説得・・・そういう事をすれば・・・」


「理想ばかり語るなっ!」


「僕たちなら出来る。君も、力を貸して欲しい」




その時、声が聞こえた。



フレデリック!!!!



振り向くと、フッさんが血を流して倒れていた。僕は直感で分かる。フッさんは多分、あんなもんでは死なない。でも・・・

でも、きっとこの街で、同じ様に攻撃を受けて、血を流し・・・死んでいく人たちがいる。罪のない人たちが。

今日を普通に生きていた人たちが。




「これ以上、流しちゃいけないんだ!血を!頼むよ!分かってくれ!」



僕は、敵に向かって、堂々と頭を下げる。

それしか出来なかった。



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