36話 ふたつの国
「もう、これ以上はやめるんだ」
僕は目の前の男に交渉をする。
彼もチート使いで、きっと戦う事なんて望んでいない。そう思ったからだ。
「手遅れなんだもう・・・」
この男の罪を数えてみる。僕が知るところの・・・
何人も人を殺している。街を壊している。
「手遅れだよ」
「そうだろう?」
「だからって、これ以上続けるのは違うよ!!!」
「・・・だ、大体・・・君達の国が・・・あの時の反乱で崩れていればこんな事にはならなかったたんだ!」
意味不明な事を言い出す相手に、僕はかける言葉が無い。
「俺っち達はザークの首を献上すれば、それでいいんだ・・・そうだ、お前らがもってこい!そうすれば全て丸く収まる!」
僕は驚いた。
「君たちの国が戦争を仕掛けようとしてる理由は・・・ザークなのか?」
僕は3年前の事を思い出していた。
僕はザークと行動を共にした事がある。彼は僕たちのムジーク王国を変えようと戦った。反乱を起こした。そしてその裏でグラフィカ帝国と繋がっていた。
僕たちの国の出来事は、なんとか収まり良くなったけど・・・手を貸していたグラフィカはよく思ってなかったって事なのか・・・
その報復のための戦争・・・
「そうだ。ザークを渡せば、俺っち達は戦争なんてしない」
・・・それは出来ない。
「ザークは過ちを犯している。でも、僕たちの国の人間だ。僕たちの国で厳しい処分を受けている。それは出来ない」
それに・・・僕は続けて言う。
「死んだ人を操るなんて・・・君たちはどうにかしている」
「分かっているさ!でもさ!もう遅いんだよ!俺っちだってこの訳のわからない世界を生きるのに必死なんだ!君も同じだろ!協力してくれよ!」
「とにかくやめるんだ!」
僕は男に近づく。
「どうしたらいい!?分からないんだ!」
そう言って、彼は地団駄を踏み、ふわっと浮き上がる。
どうしたらいい?
僕は考える。
ひとつずつ、組み立て・・・
戦争を止める。それは当たり前だ。
止めてどうする。どうやって、止めるんだ?
どうすれば、戦争が無くなるんだ。
矛盾した答えが僕の中で浮き上がる。
いや・・・矛盾し過ぎている。
魔法を発動しようもするが、発動しない男。
自暴自棄、駄々をこねる様に身体を空中でぶらぶらと動かしている。
僕は自分でも、馬鹿馬鹿しいと思ったけれど、それを口に出してしまった。
「ふ、ふたつの国が争って、戦争しているのなら・・・」
「国をひとつにすればいい」
浮遊した男がすっ、っと降りてくる。
「何を言ってるんだ?」
「グラフィカ帝国を・・・ムジーク王国にすればいいんだ」
「おいおい、まともな奴だと思ったらコレかよ」
「僕は至ってまともさ」
「そもそもなぁ、国をひとつにしようって、そう思うから戦争が起きるんじゃないか!」
そうだ。そうだよ。
「でも、やり方がある」
「やり方?」
「もう、血は流れちゃったけど・・・これ以上、血を流さずに、交渉・・・説得・・・そういう事をすれば・・・」
「理想ばかり語るなっ!」
「僕たちなら出来る。君も、力を貸して欲しい」
その時、声が聞こえた。
フレデリック!!!!
振り向くと、フッさんが血を流して倒れていた。僕は直感で分かる。フッさんは多分、あんなもんでは死なない。でも・・・
でも、きっとこの街で、同じ様に攻撃を受けて、血を流し・・・死んでいく人たちがいる。罪のない人たちが。
今日を普通に生きていた人たちが。
「これ以上、流しちゃいけないんだ!血を!頼むよ!分かってくれ!」
僕は、敵に向かって、堂々と頭を下げる。
それしか出来なかった。




