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その座を奪われた主人公   作者: 大野春
第四章 ふたつの国
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35話 気圧される女


その瞬間をアタイは目撃した。

ふらっと起き上がった男が、

魔法を使用して、小さな球を出現させ

それをフレデリックの胸に撃ち込んだ事。


後ろからの攻撃なんて、卑怯な奴だ。



「フレデリック!!!!!」



そう、アタイより先に叫んだのは

レオナルドだった。




ー回想ーーーー



破壊されていく街。


アタイは手綱を引き、馬を動かしている。

後ろには見ず知らずの男が顔を青くして、気を失っている。胸部から血がじわじわと吹いていて、時間と共にそれは広がっていた。


マタタキに頼まれた。

この大男を病院に連れて行け、と。


・・・って、アタイにはよく分からない!

そもそも街はめちゃくちゃだ!

病院がどこにあるかも分からねー!


アタイは辺りを見渡す。


建物は崩れ、木々は燃えている。

遠くに見える大きな塔はなんだ?


いいや、今はそこじゃない。

誰かに訊ねようにも、人々は既に逃げちまってる。


くっそう!

野生のカンってのはあるんだが・・・

人を助けるすべなんてアタイには無い!



「・・・酒」




「えっ?」

振り返るアタイ。大男が意識を取り戻している。



「酒をくれ」

「何言ってんだアンタ!」

え?これって、死ぬ前に一杯飲みたいって事かい?


「探してくれ、緑色のビン、キャンパ酒」


「なんだよそれ」

「頼む」


アタイは探した。少し探しただけだが、物語を運ぶためかのように、それはすぐに見つかった。


緑色のビン。フタを開けるとサケの匂いがする。

「これでいいんだな!?大男!」

アタイはその男の口にビンを突っ込み、飲ませる。


そうすると、ぶしゅっ、っと傷口から血が噴き出した。


「おい!アンタ!大丈夫なのか?」


「礼を言う。この酒には薬が混ぜられていてな。元気になる薬だ。戦うためのな」

「血が噴き出してるじゃねーか!」

「心臓が元気になっている。傷口があれば噴出すほどの血が・・・力が溢れているんだ」


しばらく呼吸を整えるように、大男は辺りを・・・街の惨状を見渡す。見渡し終えた頃には、不思議なもので、出血は止まっていたし、顔色は元に戻っていた。


「私の名前はレオナルド。君の名は?」


レ!レオナルド!?

アタイ達が追ってきた男だ!

コイツを復活させちまったのか!?


「ア・・・アタイの名前はビゼ」


「改めて礼を言う。ありがとう」



その時。


たしかに重なったんだ。

フレデリックの姿と、この大男、レオナルドの姿が。


敵として追いかけてきたはずなのに・・・

アタイはこの男を敵とは思えなかった。



「この街が何故こんな事になっている」


「アタイは理由なんてさっぱり分からないよ、でも、さっきまで空を飛んでた男が街を破壊していた」


メキメキ・・・とそういう擬音が似合うぐらい、レオナルドの顔に血管が浮かんでいる。



「許さん・・・その男はどこへ?」

「アタイの仲間が追っている」

「近くまで案内してくれるか?」

「あ、ああ・・・でも、アンタ、大丈夫なのか?本当に」


「この街の悲鳴が聞こえる」


「え?」


「それに比べれば、こんな傷、大したことではない」


「わ、わかった」


再び手綱を引き、馬を走らせる。



ー回想おわりー


そして今、アタイの目の前でフレデリックが撃たれ、レオナルドが駆け寄っていく。

アタイには何がどうなってるのかわからない。

だってこの大男はアタイらが敵として追ってきた男。なのに、今はその敵に心配されている。


やっぱフレデリックって不思議な奴だ。

知らぬ間に色んな人間を巻き込んでる。



って!今はそれどころじゃねぇ!

アタイは腰につけた4本のナイフを取り出して、両手、指と指の間に挟んでカニみたいなポーズを取る。


・・・アシトが戦っているその男も、爪をつけて、アタイと同じようなファイトスタイルだ。


マタタキは敵らしき人間と対話している。

アシトは爪野郎と対峙・・・


アタイが戦うべきは・・・

フレデリックを撃った細目の男だ!

男は既に血だらけ。弱ってやがる。



「よくもフレデリックを!てめぇ!」



「待て・・・この男には・・・たくさんあるのだ・・・」

レオナルドがアタイを制する。

さっきよりも血管が浮き出していて、その怒りが増しているのが分かる。


「たくさん?」

「とにかく、お前の出る番じゃない」

アタイはその目で睨まれ、気圧された。



「レオナルドくん。牙を向ける、そういうことでいいのかな?」

「街はこの有様・・・そして部下を・・・友を・・・俺の大切なものの数々を傷つけた・・・許せんぞ・・・」


レオナルドが息を吸い込む。

そしてすぐに、視界から消えた。

アタイは遠くを見るのも動く物体を捉えるのも得意だ。それでもレオナルドの姿は捉えきれなかった。


細目の男は縦から真っ二つに、切れた。



「・・・」



その断面は、例えば動物が臓器を剥き出しにするようなカンジじゃなくて、芋を切った時みたいに、ただ、同じ色の中身が続いていて・・・


そしてそれはすぐにくっついた。


な、なんだよコレ・・・



「何度やっても、無駄だ。私は選ばれし戦士なのだ」



これがゾンビってやつ?



「何度でも切ってやる・・・」





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