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その座を奪われた主人公   作者: 大野春
第四章 ふたつの国
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34話 皆んなを守る為


・・・成長したな。マタタキ。

俺の渾身の一撃を、食い止めた。

剣を剣で受ける時、力は力で返さなければならない。

俺の本気のその一撃であれば剣は折れていただろう。アイツは即座に力と、刃の角度を変えて対応していた。



そう、この俺、フレデリック・ショパニの教えの通りに。



コイツらの隙を見つけて、仲間になったフリから寝返るつもりだったが、自然都市テコンに戻るや否やマタタキたちに遭遇した。



そうして、タイミングを図って今がある。



よくやったぜ、マタタキ。そしてアシト。

これで形勢逆転。


「フッさん!空を飛ぶ男がいる!奴はチート使いだ!体重を操る!」

「体重!?」


「寝返るのが早いですね・・・」

そう言ってディエゴが魔法を発動しようとする。


「あの細目の野郎は魔法使いだ!シズカ!叫んでくれ!」

馬車に乗るシズカに命令をする。これでまず魔法は封じたわけだが・・・

シズカが叫び、チートが発動する。そうなると、この俺の聴力も失った様に、何も聴こえなくなる。


俺は指示だけを送る。


「マタタキ!空を飛ぶやつを頼む!」

その言葉に頷くマタタキ。

「アシト!アイツだけは戦い方が分からん!今は攻撃を受けてくれ!」

サンドロと戦う事を指示する。アシトはやる気だ。


マタタキ対、空飛び男カルバヤシ。


アシト対、サンドロ。


俺とシズカ対、ディエゴ。


ディエゴは魔法が発動出来ないことに驚いていた。

あの細目装飾野郎・・・俺の事を散々おちょくってくれたもんだぜ・・・


シズカが叫び続ける無音の空間で、俺の研ぎ澄まされた神経が、その一瞬の斬撃の為に集中する。




みんな、ごめん。




そう、思っている間に、俺の身体はディエゴを抜き去り、ディエゴは血飛沫を上げていた。

ここは戦場。皆んなを守る為に、俺がヨゴレになる。


戦争なんてしちゃならない。


でも、戦争を止めるために、何かを犠牲にしなくちゃならないんだ。



目を覆いながら叫んでいるシズカ。



俺は周りを見る。

マタタキとカルバヤシは何やら対話をしている。

アイツ、何をやってるんだ?


一方のアシトを見る。

アイツ・・・チートも使わないでサンドロに向かってやがる。相変わらずの馬鹿だ・・・

サンドロは俺には見せなかった武器を懐から取り出していた。つ・・・爪!?


「アシト!不用意に近づくな!」

俺は指示を出す。アシトが一瞬、こっちを向いてなにかを喋っている・・・分からん!


シズカの肩を叩く。

「魔法使いは倒した。一旦叫ぶのをやめてくれ」


「見てたわよ、人殺し!」

シズカが俺を罵る。こうなる事は分かっていた。


とりあえず、アシトに加勢しに行くか。

爪ってのは、大抵毒が塗ってあったりするわけだ。



「アシト!その爪には触れるなよ!」

サンドロがアシトとの距離を詰める。

「団長!俺は退かねぇッスよ!!!」


で、出た!アシトのこだわり!


「アシト!ここは戦場だ!油断するな!」

「了解っす!油断せずに行くっスよ!」


「無視。無視をするな・・・」

サンドロはそう言って、両手にはめた爪をクマの様に振り始める。アシト!避けろ!


「でりゃあっ!」


アシトは近づくサンドロの頭を掴み、ぐりんと跳び箱の要領でサンドロの上空を飛ぶ。動じないサンドロ。

すぐ着地し、回し蹴りをするアシト!それをしゃがんで回避するサンドロ。こいつ、身体能力が高い!

そしてしゃがんだ姿勢から立ち上がるバネを利用してアシトに爪を向けるサンドロ。


流石に危険を察知したのか、アシトは後退した。

チート能力が発動する。

アシトに向けられた爪は弾かれた。



「アシト!油断するなと言ったろ!!!」





どすっ。




えっ?




俺の視線の下部・・・腹部から、小さな氷柱が飛び出してきた。ぶしゅっと、血が吹き出している。俺の身体から・・・


え?


急な出血に視界が眩む。


おいおい、嘘だろ。

よろめきながら振り返る。




「言ったはずだ・・・我々は選ばれた者だと・・・」




油断したのは俺かよ・・・



ディエゴが立っている。



こいつ・・・既に死んでいたのか?





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