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その座を奪われた主人公   作者: 大野春
第四章 ふたつの国
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33話 阿吽の呼吸



《自然都市テコン》



「待てっ!」


僕は追いかける。追いかけた男はすぅーっと、空を飛んでいく。

空を飛ぶ、というより、流される様な、そんな動き。

例えるならロボットアニメで見た無重力下を動くパイロットのような・・・


走っても追いつけるスピードだったけれど、ここは市街地で、僕らは迂回して進むのが精一杯だった。

どんどん、距離が離れる。



・・・その時。



ズドン!



雷が、その男に直撃した。

そして落下していく。

空を見ているのに、思わず空を見る僕。

雨はもちろん、雲1つない。


・・・これは、魔法!?

味方がいるのか!?

落ちていった方向へ向かう。

倒れた浮遊男の前に、既に3人の人間が立っていた。




「カルバヤシ。お前何をやっている」

「ディディ・・・ディエゴさん!」

「ここは俺の街・・・俺の支配下だぞ。死兵はどうした?そして何故お前はこの場所で暴れている?」

ディエゴと呼ばれた男は装飾をジャラジャラと身につけて、細い目で語り続ける。


「そ・・・それは・・・」


その3人の中に、フッさんが居る事を僕は確認した。でも、まずは落ち着いてみた。

状況が分からないからだ。


「カルバヤシ。命拾いしたな。ブリゲル皇帝の命令が優先だ。我々に与えられた任務は、ムジーク王国、ザークを捉えること。この男を仲間として引き入れた。4人いれば十分だろう。行くぞ、ムジークへ。お前の処遇はその後だ」


「お、おれっちは悪くないんだ!あ、アイツらだ!」

カルバヤシと呼ばれた男が、僕達を指さす。

僕は剣を抜いた。


「君たちは何者だ!」僕はフッさんに問う。


「俺たちはブリゲル皇帝に仕えし、四天王・・・」

分かりやすくフッさんが説明した。

どうやら敵側に回っているようだ。どういう過程でこうなったのかは知らない。


けど、きっとフッさんは僕たちの味方だ。



「ディエゴさん!コイツらムジーク王国の人間で

す!」


「そうかそうか・・・」

ディエゴと呼ばれた男は嵌めていた指輪を触り出す。結晶だ!あれで魔法を打つつもりなんだ・・・



「忠誠。忠誠を試そう。ディエゴ。お前はやるな。フレデリック・ショパニ・・・忠誠を示せ。お前の国の仲間を殺るんだ」



苦い顔をしているフッさん。



「分かりました」



フッさんは見た事のない剣を持っていた。恐らく敵が用意したものだろう。そこから考えられるのは一度剣を捨てたという事。つまりはこの3人と戦ったのか、捉えられたりしたのか・・・

時間があればアシトから話を聞きたかった。


「貴様・・・中々の手練れに見える。光栄だな。元、自国の兵士と戦えるのは・・・」


フッさんは戦闘中、基本的にしゃべらない。わざわざ喋るというのは、彼が僕に対して本気の剣を向けるつもりはない、という表れだ。


「・・・」

僕はそれを無言で返してみる。それはフッさんから何度も教わっている事だ。戦いに言葉はいらない。その反応を見て、たしかにフッさんはニヤついていた。


僕たちは、会話をしなくても、分かり合っていた。


フッさんがぐっ、っと足を踏ん張り、こちらへ向かってくる。僕は未来を視た。横に逸れている。

その通り避ける。


そして、剣を振っている。その通り剣を振ると、フッさんの剣とぶつかり合う。久しぶりの強撃だ。僕の手は痺れそうな程の力を受けた。このたった一撃で、僕の剣も、フッさんの剣も刃こぼれをしていて、凹んだ部分が合致している。


それを押し合う様に、ギリギリ・・・と音を立てながら、僕とフッさんは周りの状況を確認している。


この場所には、後ろで馬に乗ったままのシズカと、四天王と呼ばれる敵の3人がいる。敵は僕達の決闘を面白おかしく見ているようだ。


・・・どうする?フッさん?

僕はそんな顔で問いかけてみる。


・・・今は演じろ。タイミングを見て、アイツらをる。


そんな事を言ってるふうに見える。



通じ合っている気がして、僕はにやけてしまう。



「お前の力をぶつけてこい!」

フッさんはニヤついていた。



こんな状況に及んでもなお、戦う事、そして僕の成長を試している。それで笑いが止まらないのだ。



僕は未来を見て、身体を翻し、反時計回りで回転切りをする。これはもちろん力を持たないが、フッさんはそれを避ける。


なっ!


その瞬間、フッさんは瓦礫を蹴り上げる。砂埃が上がる。思わず目を閉じてしまう。僕のチート能力は一度瞬きしてしまうと、その一瞬は視れない!



右・・・左・・・フッさんは右利き・・・

きっとこの砂埃から僕の頭を目掛けて剣を突いてくる。

どっちに避ければいい!僕!


下だ!


膝をストンと落とす。


砂埃から剣が飛び出す。避けていなかったら、僕の顔面にその剣は刺さっていた。

フッさん・・・ガチ過ぎない?



その時、僕は単純なことに気がついてしまった。



右左じゃなくて高さで避けるということ。

横軸じゃなくて縦軸・・・



あの空を飛ぶ男は、慣性に従って動いていた。



降りる時はいつも落下する様に・・・

そして斜めに飛べば斜めに飛んで・・・

あの男の力は、重力を操る事!?

いや、違う、あの男自身の重さを操作してるんだ!


って!今はそれどころじゃ・・・



「マタタキ先輩!!!!!!!」



全力疾走で叫びながら現れるアシト。



フッさんはそれを確認し、叫ぶ。



「行くぞッ!!!!!」



踵を返すフッさん。

僕とフッさんとアシトは皆、同じ方向を向き、右足で地面を蹴り出した。






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