27話 飛び出した半グレ
退かねぇ。
ワイはそれだけ、進んで生きてきた。
進みすぎて死んだ。
死後の世界、この世界に転生された事は予想外だったけど、この世界でもワイは退かねぇ。
「ふ〜ん。嘘ついちゃったね」
テコンへの帰路、突如現れた役人。
コイツもチート使いなのか?
ふわふわと浮いていやがる。
上空から、落とし穴の方向を見ていた。
レオナルドがなんとかやり過ごそうとしたが、バレちまったみたいだな。
ゾンビ兵達を落とし穴にハメた事。
まぁ、遅かれ早かれバレる運命にあったのかもしれねーが。
そうなればワイの出番だ。
レオナルドに罪を被せるわけにはいかない。不貞団長の為にも。
ワイが叩く!やるしかない!
ワイは自警団の後方から飛び出した。
「全てはワイ!ムジーク王国騎士団!ゴトウアシトがコイツらを洗脳してやった事だ!」
・・・しーん。
ふわふわと浮いたままの相手。
「洗脳?」
「そうだ!ワイの力でコイツらを操った!」
ワイは適当な嘘を並べる。まぁ、説得力は無い。
「・・・そもそもムジーク王国の兵士がどうしてこんな所に?理解に苦しむことばかりだね」
そう言いながら、相手はポケットから結晶を取り出した。その瞬間、浮いてた身体が少し沈む。
ー回想ーーー
それはワイがフレデリックさんと拷問していた時の話だ。
「おい。アシト。お前最強すぎないか?」
不貞団長さんはワイを最強扱いした。
唐突に。
「何がっスか?」
「お前さ、コイツの魔法、防いだよな」
不貞団長が拷問相手を指差す。
コイツは鉄球を飛ばしてきた。ワイはそれをチートで防いだ。
「そうっスね」
「いや・・・認めたくねーんだけどさ、魔法ってのはチート能力の代理公使なんだ。そして代理公使をするとチート能力は能力者に喰らわせることが出来る。まぁつまり、普通なら魔法はお前にダメージを与える事が出来るんだよ」
長々と語る団長。
「細けぇことはいいじゃないっスか」
「いや、凄い大事なことだぞ・・・それ・・・」
団長はぶつぶつと独り言を喋っていた。
自分自身に発動するチートは、相手の干渉を受けないのか?と言ってた。
ー回想おわりー
飛んでくる鉄球を防御するワイ。
それに驚く相手。怯んでいる。
「想定外だなぁ。参った」
「強いだろ。ワイ」
「君に攻撃が効かない事もそうだけど・・・スプレ自警団が死兵の妨害をした事、そっちの方が問題だ・・・」
「どうすか?ワイは最強なんス。不貞団長にも言われましたから」
「団長さん?フレデリックという者の事か?」
「よく、分かってるっスね」
「君たち自警団が差し出したんじゃないか。彼の身柄を・・・やはり、考えるほどに予想外だ。死兵の進軍を妨害するだなんて・・・君達、本当にただじゃおかないからね」
そう言って相手は無数の小さな鉄球を作り出した。浮遊男の前に、無数の鉄球。それが隕石の様に降り注ぐ。
「やめろっ!」
ワイはチートを使ってガードするが、自警団の兵士達には、それが直撃する。
ある者は倒れ、ある者はのたうち回った。
「なるほど〜。ヤンキーくん。君だけには攻撃が効かないという事か」
その瞬間、浮遊男の背後にレオナルドが現れた。
その素晴らしいジャンプ力で、浮いている男の高さまで飛んだのだ。
「仲間を傷つける事は、許せない!」
そういってレオナルドは相手の肩をつかみ、浮いているその身体を地面に引きずり下ろすように引っ張る。
通常ならその身体は地面に叩きつけられるはずなのに・・・
「いやぁ〜、痛くないんだよね」
相手は再び、地面を蹴り、ふわふわ〜っと浮き始めた。みるみるうちに上空へ。
コイツは空を飛ぶ能力でもあるのか?
ワイには理解できないが、ワイは小石を手に取り、空飛ぶ男めがけて投げる。
・・・かすりもしない。
こんな事になるなら、まじめに野球をやってりゃ良かったぜ。
「ついに、手を出しちゃったね、団長さん」
その言葉に動じないレオナルド。
彼はもう怒りに怒ってるわけで。
「利害がどうだとか、考えるのをやめた。目の前で倒れ、苦しむ仲間を見て、戦えなければ戦士ではない!」
レオナルドは息を吸い込み、再び高く飛び出す。
しかし、高さが足りない。
「残念だったねぇ〜」
その大きな身体が落下すると同時に、レオナルドは結晶を取り出して同じく鉄球を繰り出して飛ばした。
そうだ、レオナルドがあの支配人に魔法を教えたんだ。この人も魔法が使えるわけっすね。
ヒュン!と大きな鉄球が近距離で迫る。
その瞬間、ふっ、っとソイツの身体が落下した。
上手く避けやがった・・・
「そう来ると思ってたよ」
・・・この空飛び野郎、マジで捉え所がねぇ。
攻撃の届かないところまで浮いたかと思えば、沈む事も出来るし・・・
「さーて、始めようかな」
地に降り立った空飛び野郎が魔法を唱え始めた。




