26話 開戦の合図
《グラフィカ帝国ーベバールの塔》
《上空》
・・・ひぇ〜っ。
ほんと怖いぜ。
おれっち達のリーダー、ブリゲル皇帝は。
しかも死兵作戦が失敗?
あっけねぇ〜。
それを聞いた皇帝の顔ったらありゃしねぇぜ。怖い怖い。
そういう訳でおれっちは逃げる様に
塔の窓から飛び出した。
あ?おれっちの名前?
おれっちは軽林重久。
みんな、察しが良いと思うけど説明しとくな。
おれっちは異世界からの転生者ってやつだな。
チートっていう力が使える。
まぁ、おれっちの名前をイメージしてもらうと分かるかな、おれっちの力。
自分限定なんだけどね、おれっちは自分の体重を操ることが出来る。
今は塔から落下する為に体重をぐんぐん上げているのさ。
どうやら重くなろうとも落下のスピードってのはあんまり変わらないらしいんだけど。
というか授業でそんな事習った気がするんだけどさ、それでも、重くした方が早く落ちる気がするんだよね。
で、着地の瞬間は、体重をゼロにするわけ。
こうしておれっちは、うーん・・・東京タワーぐらいの高さのあるベバールの塔からなんなく落下した訳さ。
凄い能力だろ?
さて、急ごう。
死兵がやられたらしいからね。
消息を絶ったって、どこに、行ったんだ?
皇帝の三闘神なんて語られているおれっちだけど、役割は死兵担当。
はずれくじ引いたもんだよ。
とりあえず馬を用意して、死兵達の進軍するルートを走っていく。
死兵達はこの都市から国境への関門へ続く一本道をずっと歩かせている。
《自然都市テコン》
さて、おれっちはすぐに道中のテコンに到着した。
こういう時はまずスプレ自警団だ。
アイツらなら進軍した死兵を見ていたはず。
《スプレ自警団詰所》
・・・あれ?誰もいないぞ。
おかしい。緊急事態か?
それにしてもタイミングが妙だな。
しかし参った。ここはおれっちの管轄じゃない。ディエゴくんの管轄だからなぁ。
そしてまた、おれっちは馬に乗って、国境付近へと向かった。
「ふーん。そういう事なのかな?」
おれっちは早とちりをする癖があるんだけどね。結構あてずっぽうなんかは当たったりするのさ。
泥だらけのスプレ自警団がひと仕事終えたような顔でこちらに向かってきている。
そう、何かをした。何かをしたというのが、何なのかは分からないけど。
おれっちの直感が言っちゃってる。
コイツらが死兵をやったのだと。
「おーい、スプレ自警団止まれ。おれっちはカルバヤシって者だ。ディエゴとおれっちは同じ。皇帝の側近だ」
その言葉を聞くと、先頭にいた筋骨隆々な男が顔色を変えた。
「これはこれは。役人の方でしたか。どうしましたか?」
「君たちに宛てた通達書は見たかな?」
「ええ・・・ついに仕掛けるのですね。我々は国境から一番近い都市ですから、スプレ自警団もこうやって近辺調査をしておりました」
「聞いてもないのに」
おれっちはゆすりをかけてみた。
「ははっ・・・ここだけの話ですが、ディエゴ様には失態続きで合わせる顔がありませんので・・・何卒・・・少しでもアピールをと、思いまして」
「君、名前は?」
「レオナルドと申します。スプレ自警団の長を務めております」
「そうか。次の質問。どうして泥だらけなの?」
少しの間が空いた。
どんなに弁が立つ者でも、唐突な質問には弱い。
おれっちはこの間を見逃さなかった。
やっぱりコイツら・・・一枚噛んでる。
「我々自警団で、有事に備えて、防護壁を作製する準備をしておりました」
「へぇ〜。都市に誰も配備しないで、全員で?」
おれっちはステップを踏むように、ぐんと力を込めて地面を踏み、その瞬間、体重をゼロにした。
ゆるやかに、ふわふわ、と身体が上がっていく。
「ふ〜ん。嘘つちゃったね」
おれっちがそう言う。
それは開戦の合図だった。




