23話 懇願する大男
《グラフィカ帝国ー自然都市テコン》
「落ち着け。アシト」
興奮するワイを掴んだまま離さないレオナルド。
その、掴む力はとても強い。
「レオナルドさん、アンタの気持ちもわかるっス。でもワイは今、ムジーク王国の人間として、やらなきゃならねーんすよ」
小高い丘から見える、遠い場所に、アリンコのようにのそのそとあるくゾンビ兵達が見える。
ワイはレオナルドに掴まれたまま、少し遠い場所まで連れて行かれていた。しかしこの人の馬鹿力はすげえわけで。
「見ろ。アイツらはスピードが無い。国境を越えるにはもう1日はかかるだろう」
のそのそと歩く30のゾンビ兵を指さし、レオナルドが言う。
ワイはこの帝国の地理はよく分からねーが、馬車で国境からこの都市まで半日かかった。たしかにアイツらのスピードならすぐに追いつきそうだし、ムジーク国へ向かう迄には時間がある。
「・・・少し、冷やすッス・・・頭・・・」
現状は、30余りのゾンビ兵が自然都市テコンから国境へ・・・つまりムジーク王国へ進軍中なワケだ。
ワイはあの兵士たちを冷静に分析してみる。
まず、間違いない。
奴らは一度死んだ兵士。
それを生き返らせた訳で。
30人程度の進軍だけど、あれ以外にいるのかは分からない訳で・・・
あと、歩くのが遅い。
魔法が使えた。倒しても生き返る。
趣味が悪いからできなかったが、身体を分割させたらどうなるかまでは分かんねー。ミシミシと骨を折ったやつも平気で歩いていやがる。
・・・ってか、アイツらはスピードを補うために遠距離攻撃を主としているのかもしれねー。槍、弓矢、魔法・・・どれも遠距離攻撃だな、うん。
・・・今分かるのはそれだけなワケで。
ワイは頭が悪ィから、きっと弱点とかあるはずなんだけど、なーもん思いつかねぇ。
けど時間が無い。
・・・馬鹿なりに考えるしかない。
きっと、すげーシンプルな方法があるはずっス・・・
ー〝お前達を戦える兵士に育て上げたつもりだ〟
何故かふと、不貞団長の言葉が浮かんだ。
祝祭の日、フレデリックさんがいっていたことを思い出す。ゾンビ相手の戦いなんて教わってねーっすよ。
それでも、ワイは思い出したワケだ。
「レオナルドさん、お願いがあるっス」
「アシト・・・」
ワイを助けたいという気持ちと、帝国には逆らえないという気持ち、そしてこの都市を守りたいという思い。
それらが、この大男を混乱させていた。
「馬車と、自警団の皆さんの力を貸して欲しいっス」
「アシト・・・気持ちは分かる・・・」
「戦わなくていいんですよ」
「戦わない?」
「だって倒し方も知らないし」
「確かにそうだが・・・」
ワイはレオナルドの顔をまじまじ見て、お願いした。
その作戦の内容を伝える。
「・・・という、ワケっス。どうですか?」
「作戦としては理に適ってはいる。しかし、我々自警団を動かす理由としては・・・屁理屈だ」
「屁理屈っスか・・・」
「屁理屈も理屈だ」
レオナルドはそう言い、それ以上ワイに何も言わずに、詰所に戻る。
そして20名程度の自警団に指示を出す。
「我が友の部下の願いだ。この通りだ。頼む」
レオナルドが、部下たちに頭を下げた。
「レオナルドさん!頭を上げてください!」
自警団の奴らが慌てていた。
この大男が頭を下げるということが、珍しいのだろうか。何がどうあれ、彼らは協力的だった。
なーんか、系統は違うはずなんスけど・・・
レオナルドは不貞団長に似ているっスね。
「さ、早いところ行こうか、アシト」
こうして、ワイらはテコンを出た。




