21話 準備運動の半グレ
《グラフィカ帝国ー自然都市テコン》
「ゾンビなら気兼ねなく殺れるッスね」
ワイは構えて、近づいてきたゾンビ兵士を蹴飛ばす。
呆気なく倒れる兵士。
触れた感触は、普通の人間のそれと変わらないワケで。
「へへっ、こんなもんかよ」
さすが、蘇生された死者。
なんか弱っちいな。
数を数えてみる。
30人ぐらいいる。
このペースなら簡単にやれる・・・
隊列を組んで、槍を持って、同じような動きで突撃してくるが・・・遅い。動きが遅すぎる。
ワイは次は右腕から繰り出すパンチ、左脚のしなやかなキック、ついでに今度は左腕や右脚といった利き手じゃ無いほうも使う。
準備運動みたいな要領でゾンビ兵を薙ぎ倒していく。
10人ぐらい倒した時、そのキックを掴まれる。
「やっと骨のある奴が現れたワケっすか?」
「ザコをツカッテオマエのタイリョクをケズったマデダ」
なるほど、まずは雑魚からワイに向かわせたワケっスか・・・
というか、このゾンビ達、普通に会話できるんスね・・・
「体力消耗どころか、準備運動になりましたよ」
ワイは掴まれた足をおもっきり踵落としの要領でゾンビ兵ごと地面に打ちつけた。ミシミシ、と骨の折れる音が聞こえる。
「次ィ!かかって来いッス!」
すると、3名の兵士たちが並んでワイに弓矢を向けてきた。こりゃ少しピンチだぜ。
ひゅん!ひゅん!ひゅん!
3本の矢がワイ目掛けて飛んでくる。
ワイのチートの欠点・・・それは無敵になれる対象は睨みを効かせている1人という事。
つまり3人同時に矢を向けられれば、1本はノーダメージだけど、もう2本はもろに喰らっちまうって事。
ま、チートだけに頼らないのがワイだ。
ひょいっ!っと高くジャンプし、3本の矢を避けた。
少しずつ距離を縮める。
コイツら馬鹿かよ・・・3人揃って同じタイミングで矢を放っていやがる。
・・・それにしても、やっぱりなんだよこれ。
思った以上に弱い。
闘技場で集めた強者を生き返らせてるんだよな?
だとしたら弱過ぎるっス・・・
思いっきり走り込み、最初の1人には頭突き、次のやつには腹パン、最後の奴はムカつくから顔に飛び蹴りをお見舞いした。
「残り半分ッスね・・・」
余裕だな、そんな事を思った時。
物音がして、ふと、振り向く。
「なるほど・・・」
さすがゾンビ。
倒したはずなのにまた、起き上がっている。
「アシト!やめるんだ!」
戦いを見ていたレオナルドが声をかけてくる。
レオナルドは少し離れた位置から、ワイを見ていた。
「やめねーっすよ!」
「得体の知れない相手とは戦うべきじゃない!」
「いや!俺も兵士ッス!コイツらがムジーク王国に行くなら、戦わなくちゃならねーっす!」
「明らかに不利だ!」
レオナルドは加勢したい気持ちを抑えているように見える。
彼も立場があるワケだ。
ワイが交戦してる、この帝国の兵士に危害を加えたら、レオナルドは反逆者になっちまうワケで。
そうなればスプレ自警団が守ってきたこの都市も危険に晒されるかもしれない。
そうなれば・・・
ワイがやるしかねーのよ。
俺は前方に16体の強さ不明の敵、後方には一度倒した強敵14体、その列の中間の位置にいる。さて・・・どうしたもんか・・・
どうやって倒すのか・・・
倒し方も分からねーし。
それでも・・・
「やってやるッスよ!」
後ろの奴らを適当に蹴散らす。最初の奴らは復活しても弱いままで、余裕だ。
そして、まだ戦っていない敵が今度は5人並んでいる。
・・・魔法を唱えている!
その瞬間!
5人の身体の前に、それぞれ大きな鉄球が出現した・・・あれはいつか、戦った奴と同じ魔法・・・
前回は1対1だから防げたけど、5人はヤベェっす・・・
と思っているまもなく、鉄球が飛ばされる。
ワイに向かって5つの大きな鉄球が向かってくる。
ジャンプじゃ避けられない。
どうする?
1球だけ防ぐか?
残り4球はどうなる?
1球防いでそれを盾に出来るか?
そんなトリッキーな事出来ねぇっす・・・
それに俺が無敵になれるのは後ろに歩いている時だけ・・・
一つ防いで相手の間合いに詰め込む事も不可能。
その思考は1秒も無い。既に中間地点まで5つの鉄球がワイを目掛けて飛んでくる。
ドンっ、
そして、ワイの視界は揺れる。
真横に。
「くそうっ!!!」
レオナルドがワイをお姫様抱っこしながら舌打ちした。
ワイを抱えて、逃げている。
「レオナルド・・・」
「恩人の仲間を見捨てる事は出来ない・・・」
やっぱり、不貞団長はすげぇッス・・・
見ず知らずのうちに色んな人を巻き込んでいる。
あの人の魅力ってヤツですかね・・・
「レオナルドさん、もう迷惑はかけられねーッス、下ろしてください」
「ダメだ、離さんぞ」
振り返る。
ゾンビ兵団はワイとの戦いなど無かったかのように、元の隊列に戻り、進軍を始めた。
追いかけてこねーのかよ、アイツら。
まるでロボットみてーに、また隊列を組んで道をゆっくりと歩き出している。




