20話 空を切る空砲
《ムジーク王国ー南西部ーハモニク村》
僕の名前は又滝瞬。
今、僕は宿でブラジャーをつけている。
女の人ってこんな面倒な事を毎日してるのか?
いや・・・シズカは必要無さそうだけど・・・
一応、どうして僕がブラジャーをつけているかって説明をしておいたほうが良い。変態だなんて思われると困るからね。
そう、これはドクタートキタビが開発した、バイリンガル・ブラジャーといって、これを装着すると、トキタビのチート能力の恩恵の一部を受ける事が出来る。
これがあると、明後日向かう予定のグラフィカ帝国に行っても、言語の壁を越えて何事もなく会話できるわけだ。
猫型ロボットが翻訳するコンニャクをポケットから取り出していたけど、つまりはそれ。
着替えを終えた僕は、先に着替えを終えていたシズカとビゼと号流した。
特にビゼ・・・僕が着けたものと同じブラジャーを着けていると思うと・・・いや、僕は清純派で売ってるから、エロい妄想はやめにしよう。
・・・って。
「し、シズカ・・・ブラジャーが合ってないんじゃない?」
ド貧乳のシズカの胸が、ブラジャーのおかげで巨乳に見える!凄い違和感だ!
「うるさいわね!クソガキ!」
シズカに殴られる僕。お約束というやつだ。
《ハモニク村ーノムトメロ酒場》
村唯一の食事の場所で、僕たちはカタスカさんを待った。
カタスカさんは僕たちが昔、溺れているところを助けた人で、今は貿易商をやっている。
今回は輸出のタイミングにあわせて、僕たちは二重底の桐箱に身を隠し、越境する予定だった。
「こんにちは、あの2人は無事、越境出来ましたよ」
そう言いながらカタスカが現れた。
「良かった、ありがとう、カタスカさん!」
僕は礼をする。
「関門を越えるときは心臓が止まるかと思いましたけど・・・皆様の為なら頑張りますよ」
カタスカさんは心強い。
「フレデリックって、意外と色んな人に好かれてるんだなー」
美人なのに、鼻をほじるビゼが言う。
「そうかもね。あの人にはそういう魅力があるのかも。ビゼもそうでしょ?」
「まっ、まあな・・・」
シズカの言葉に顔を赤らめているビゼ。
そんな束の間の時間を切り裂くように・・・
バーン。
胸を打つ振動。
空を切る砲弾の音が聴こえる。
「連絡弾だ!」
僕は建物を出る。
シズカがついてきた。
「連絡弾?」
「情報伝達の為に空に向けて撃ち放つ砲弾だよ!」
「そんなものがあるの?」
「騎士団だけが知っている、シズカ達には分からないよ」
僕は建物を避け、視界の良い所まで走る。
そして、空を見た。
今僕のいるハモニク村からもうちょっと南に行くと国境だ。
砲弾を撃てる場所は決まっている。
どの位置からもリレー形式で王都へ伝達できる仕組みになっているんだ。
おそらく、国境の関門からの砲弾・・・
「砲弾の1発目は、予弾・・・これから撃ちますよって意味の砲弾、そこから連続した砲弾の数、間隔で情報が伝えられるんだ」
「さすが兵士さんね」
シズカが感心している。ちょっと嬉しい僕。
数年、僕はフッさんに鍛えられてきたんだ。
フッさんはずっと平和な世の中を望んでいたけれど、僕たちにはずっと実戦の訓練をしてきた。
ー〝マタタキ。お前、人を切れないなら、誰かを守ったり、頭を使う兵士になれ〟ー
僕はその言葉を大切にしていた。
バン・・・バンバン・・・バン・・・バン。
砲弾が鳴る。
この間隔と回数は・・・
「えっ?」
「どうしたの?マタタキ?」
「て、敵襲・・・!?」
「敵襲?どこから?」
「関門から砲弾が飛んでる・・・グラフィカ帝国?」
「何よそれ!ヤバくない?」
どうするべきか・・・
僕は迷う。まずは関門に行くべきだ。
関門の兵士に状況を聞く。
いま、この情報弾は他の拠点を通して王都に向かう筈だ・・・
リレー方式で、この情報弾を受けた他の連絡拠点が同じ報告をする。こうする事で王都まで情報が届く仕組みになっている。
王都の・・・フッさんのいない、解散した騎士団に通達がいくだろう。
・・・誰が指揮を取るんだ?
僕が、行かなくちゃならないんじゃ?
慌てるな。
未来を視る僕。進むべき未来を視る。
僕はカタスカの元に戻っている。
「カタスカさん!ちょっと関門まで、馬車で移動してもらえないかな?」
「えっ?予定は明後日ですよね?」
「越境とは別!それどころじゃないんだ!とにかく急いでくれ!関門に用がある!」
まずは状況の把握。
そして、王都に戻らなくちゃならない。
フッさん・・・アシト・・・
どうか無事で・・・いいや、たぶん無事だ。




