19話 涙が止まらない半グレ
「泣くな。男が廃るぞ」
目の前の筋肉マン・・・レオナルドがワイに語りかける。
《グラフィカ帝国ー自然都市テコン》
ワイは男泣きしていた訳で。
《スプレ自警団詰所》
「不貞団長の漢気に涙が止まらねぇッス・・・」
涙がとまらねぇ。
昨日今日出会ったこの男の為に、フレデリックエロ騎士団長は身を売ったって言うんだぜ。
あんなに漢気溢れる人がいるかよ。
「ああ・・・しかし、あの男には何やら考えがありそうだったが・・・」
レオナルドさん、団長はそこまで考えてないんですよ。王様の娘に手を出すようなアホエロジジイなんですから・・・だからこそ涙が止まらないんです。
ワイには分かるワケですよ。あの人はただ格好をつけたいだけ・・・
「ゔぅっ、マタタキ先輩達が来るまであと2日もあるンすか・・・俺、待てねーッス!」
そうだ、ワイにはチートがある。
これを使って、不貞団長を助けに行けねーか?
「おい、アシト・・・お前ひとりで敵陣に向かってどうなるって言うんだ」
「ワイは無敵なんすよ・・・」
レオナルドは呆れていた。
「確かにお前のタフさは認める・・・しかし、怪我も治っていない。それに無敵ではないだろう」
「見せてやるっすよ・・・」
ワイは、レオナルドにこのチート能力を説明し、実践してみた。
昨日の戦いは、この男を肉眼で捉えきれなかった、それだけの事だ。
レオナルドが正面から腹パンをワイに喰らわすが、まったくもってダメージを受けていない。
「どういうカラクリなんだこれは・・・」
「いや、チートっすよ、ワイの」
「・・・チート」
レオナルドは目を見開いていた。
「チートの事、知ってるンすか?」
「チートという言葉は知らない・・・ただ、皇帝の側近に、そのような超能力を使う事の出来る人間がいるとな・・・」
「マジっスかそれ・・・」
なら、尚更!不貞団長があぶねーワケで。
「俺は末端の人間だから、何がどうなっているかまでは分からない」
「やっぱ、行くッス」
「おい、無茶はよせ。まずはその身体を治して、仲間と合流してからでも遅くないだろう?」
「いいや、行くッス」
ワイは何も考えずに、詰所を出た。
どこに団長が連れて行かれたのかも分からない。
それでも、進まなくちゃならない気がして・・・
「な。なんだこれ?」
ワイが詰所を出ると、30人ほどの人間がぞろぞろと歩いている。綺麗に、整列しながら。
顔色ひとつ変えず、ただ、歩いている。
それは・・・軍隊のように。
「おい、待て、アシト・・・???」
追いかけてきたレオナルドもその異様な光景に驚いていた。
「な、なんすか?これ・・・」
「レオナルド様ァ〜ッ!」
慌てて自警団のひとりが走ってきた。
「どうした?」
「つ、通達が!」
書面をレオナルドに見せる男。
「予定を前倒しし、我がグラフィカ帝国はムジーク王国への攻撃を開始する・・・。!?帝国民諸君に被害の及ばぬ方法で進めているが、諸君は最小限の生活を行う事」
え?
「あ、あれが兵士ってことっすか?」
「もう既に帝国は死者の蘇生を成功させていたのか?」
「わ、分かるンすか?」
「あの人間の中の幾人か・・・俺が死体を引き渡した時に見た顔だ・・・間違いない」
背筋が凍る・・・
死人を生き返らせ・・・
その兵士が今まさに俺たちの国、ムジーク王国に向かっているというのか・・・?
ど、どうしたらいいか分からない。
けど、ワイはその30人の兵士達の最前列に向かって走り出し、対峙していた。
「い、行かせねぇッスよ」
「ダレダオマエハ」
その兵士の戦闘に立つ男は目が赤くなっていて、言葉の抑揚も無い。
俗にいう、ゾンビってやつなワケで。
ムジーク王国とグラフィカ帝国の戦争・・・
言うならば、この戦争の初戦が、ワイとコイツらだった。
ワイはそのゾンビ兵士を睨みつけながら
構えていた。
【第二章 おわり】




