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その座を奪われた主人公   作者: 大野春
第二章 自警団の大男
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19話 涙が止まらない半グレ



「泣くな。男が廃るぞ」

目の前の筋肉マン・・・レオナルドがワイに語りかける。




《グラフィカ帝国ー自然都市テコン》



ワイは男泣きしていた訳で。



《スプレ自警団詰所》



「不貞団長の漢気に涙が止まらねぇッス・・・」

涙がとまらねぇ。

昨日今日出会ったこの男の為に、フレデリックエロ騎士団長は身を売ったって言うんだぜ。

あんなに漢気溢れる人がいるかよ。


「ああ・・・しかし、あの男には何やら考えがありそうだったが・・・」


レオナルドさん、団長はそこまで考えてないんですよ。王様の娘に手を出すようなアホエロジジイなんですから・・・だからこそ涙が止まらないんです。

ワイには分かるワケですよ。あの人はただ格好をつけたいだけ・・・


「ゔぅっ、マタタキ先輩達が来るまであと2日もあるンすか・・・俺、待てねーッス!」


そうだ、ワイにはチートがある。

これを使って、不貞団長を助けに行けねーか?


「おい、アシト・・・お前ひとりで敵陣に向かってどうなるって言うんだ」

「ワイは無敵なんすよ・・・」

レオナルドは呆れていた。

「確かにお前のタフさは認める・・・しかし、怪我も治っていない。それに無敵ではないだろう」


「見せてやるっすよ・・・」


ワイは、レオナルドにこのチート能力を説明し、実践してみた。

昨日の戦いは、この男を肉眼で捉えきれなかった、それだけの事だ。


レオナルドが正面から腹パンをワイに喰らわすが、まったくもってダメージを受けていない。


「どういうカラクリなんだこれは・・・」


「いや、チートっすよ、ワイの」


「・・・チート」

レオナルドは目を見開いていた。


「チートの事、知ってるンすか?」


「チートという言葉は知らない・・・ただ、皇帝の側近に、そのような超能力を使う事の出来る人間がいるとな・・・」


「マジっスかそれ・・・」


なら、尚更!不貞団長があぶねーワケで。


「俺は末端の人間だから、何がどうなっているかまでは分からない」


「やっぱ、行くッス」


「おい、無茶はよせ。まずはその身体を治して、仲間と合流してからでも遅くないだろう?」


「いいや、行くッス」


ワイは何も考えずに、詰所を出た。

どこに団長が連れて行かれたのかも分からない。

それでも、進まなくちゃならない気がして・・・




「な。なんだこれ?」




ワイが詰所を出ると、30人ほどの人間がぞろぞろと歩いている。綺麗に、整列しながら。

顔色ひとつ変えず、ただ、歩いている。


それは・・・軍隊のように。


「おい、待て、アシト・・・???」

追いかけてきたレオナルドもその異様な光景に驚いていた。


「な、なんすか?これ・・・」


「レオナルド様ァ〜ッ!」

慌てて自警団のひとりが走ってきた。


「どうした?」

「つ、通達が!」

書面をレオナルドに見せる男。


「予定を前倒しし、我がグラフィカ帝国はムジーク王国への攻撃を開始する・・・。!?帝国民諸君に被害の及ばぬ方法で進めているが、諸君は最小限の生活を行う事」



え?



「あ、あれが兵士ってことっすか?」



「もう既に帝国は死者の蘇生を成功させていたのか?」

「わ、分かるンすか?」

「あの人間の中の幾人か・・・俺が死体を引き渡した時に見た顔だ・・・間違いない」



背筋が凍る・・・


死人を生き返らせ・・・

その兵士が今まさに俺たちの国、ムジーク王国に向かっているというのか・・・?



ど、どうしたらいいか分からない。



けど、ワイはその30人の兵士達の最前列に向かって走り出し、対峙していた。



「い、行かせねぇッスよ」



「ダレダオマエハ」

その兵士の戦闘に立つ男は目が赤くなっていて、言葉の抑揚も無い。



俗にいう、ゾンビってやつなワケで。



ムジーク王国とグラフィカ帝国の戦争・・・

言うならば、この戦争の初戦が、ワイとコイツらだった。



ワイはそのゾンビ兵士を睨みつけながら



構えていた。




【第二章 おわり】


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