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その座を奪われた主人公   作者: 大野春
第二章 自警団の大男
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16話 平和的な方法



レオナルドに肩を掴まれたまま身動きの取れない俺。


倒れたまま動けないアシト。


スプレ自警団と名乗る3人の長、レオナルドは天井に刺さったまま。


そして残りの2人のうち、ひとりはレオナルドにのされ、失神しており、残りのひとりはレオナルドの指示を待つようにその場に座ったまま・・・



酒場はめちゃくちゃに、なっていた。



レオナルドはしばらくすると、意識が戻ったのか、身体を振り子のようにぐんぐんと動かし、天井に刺さった頭を抜いた。



「俺は恥じない戦いをする。俺の負けだ」



レオナルドがそう言う。

そう言って掴んでいた俺の肩を離す。



「アンタ、失神してたのか?それでも俺を離さなかった。この勝負は相討ちだ」


「好きにしろ」


しゃがみ込むレオナルド。

何故か俺はこの時、この男との距離が縮まった気がした。



「おい、酒を出してくれ。コイツとはうまい酒が飲めそうだ」



・・・で、何故か仕切り直したように・・・



俺とレオナルドは席を共にし、酒を飲み始めた。俺は口の中が怪我だらけで酒がめちゃくちゃ染みていたが、見栄を張って平然を装う。



ちょっと思ってた展開と違うんですけど!



「・・・で、なぜ俺を探していた?」

レオナルドが問う。


「お前を信用するから話すぞ。俺たちはムジーク王国の人間だ」

そして説明をする。

俺たちの国に地下円型闘技場という無法地帯が出来ていて、そこに集まった命を賭けた闘士の死体が持ち運ばれていたということ・・・


そして、その捜査線上にレオナルド、という男の名前が挙がったこと。



その話を一通り聞き、レオナルドは答えた。



「鋭いなお前達。あの施設を作る様に直接指示したのは俺だ」

あっさりと答えが返ってくる。

作る様に、直接指示をした?


「目的はなんだ?」


「強い兵士を集めている」


「どういう事だ?死人だぞ?」


「それは〝上〟からの命令だ。理由は研究の為、とだけ聞かされている。俺たちは上からの使い捨ての駒なんだよ」


「使い捨てのコマ?」


遠い目でレオナルドが語る。


「俺たちはずっとこの都市を守ってきた・・・ある日・・・帝国の役人が現れた。この街を担保に、地下円型闘技場を作るように指示され、死体を集めろと。それは帝国の研究の為だ、とな」


「その研究ってのは・・・」


「ああ。お前らは察しが良いと思うが、国は今、死者の蘇生を試みている。いいや、それはもう終わっているのかもしれない・・・」


「どうしてそんなことを・・・それに、何故・・・兵士を生き返らせる必要がある?」


「これは俺の憶測だが・・・」

レオナルドは一呼吸置いて言う。




ー〝ムジーク王国を攻める為だ〟ー



強い兵士の死体を集め、蘇生し、グラフィカ帝国の兵士として兵力を強化し、俺達の国を攻める?

まぁ考えてみればなくもない・・・



「有り得なくは無い話だな。なら尚更俺たちは止めなくちゃならない」



「やめておけ」


「いいや、それは出来ない」


「喰うか喰われるかの世界だ。お前の強さは認めるが、上の人間はもっと力を持っている」


「俺は国を見捨てることは出来ない」

「どうだ?スプレ自警団に入り、この都市を守る暮らしをしないか?」


「悪くない誘いだが、俺には俺で兵士たちの生活がある。それに、馬鹿げているかもしれないが、俺は平和を求めるようになったんだ。戦争なんてもうまっさらごめんだよ。戦争にならずに済むんなら俺は俺に出来ることをやる」


ついつい長台詞が飛ぶ俺。


その話を聞いていたアシトが何故か男泣きをしている。


「ふ、不貞団長ぉ!ついて行くッス!」




「・・・明日。帝国の役人が経過観察でこの都市に来る。お前達の〝おかげ〟で地下円型闘技場の件はパーになっちまってる。示しがつかなくてどうするか・・・考えに詰まって酒を飲みにきた」


・・・コイツを許せなかったはずなのに。

俺は戦いを通して、何故か情が湧いていた。

きっと、俺自身に近いからだ。


なんだって、その立場のトップってのは責任が重くのしかかる。


「レオナルド。任せろ。全て俺の責任にしろ。お前がこの都市を守る為に非人道的な事をしていたことはわかった。それにお前と拳を交わしてわかったよ。お前は悪いけど悪い奴じゃない。提案がある」



英雄は判断が早いのだ。

俺は思いつきをレオナルドに話した。

一石二鳥だ。



「・・・正気か?」



「ああ。これがこの都市を救う為の平和的な方法だ」



「理解し難いな」



「今のお前にもこの方法が最善なはずだ」



「お前、元英雄なんかじゃないな。英雄だ」



「作戦が成功してから言ってくれ」




こうして、次の日がやってくる。




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