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その座を奪われた主人公   作者: 大野春
第二章 自警団の大男
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14話 情報収集の心得


《前話より1週間後・・・》



ゴロゴロ・・・



《ムジーク王国ー南西部ー国境付近》



かれこれ、3時間以上は馬車に揺られていた。




俺の視界は今、真っ暗だ。

それもそのはず。大きな桐箱の底に隠れている。この箱は二重底になっていて、蓋をあける酒が沢山お目見る。

検閲では俺の姿は見えない、という仕組みだ。

それにしても酒の匂いが充満していて困る。

しばらく飲まないと俺は心に決めているのだ。



俺たちは、そういうわけで順次、貿易品に成りすましてグラフィカ帝国へと向かおうとしていた。



まずは俺・・・次にアシト。

今日はこの2人が最初の出国。


次にマタタキ、ビゼ、シズカ。

この3人が3日後にグラフィカ帝国へ到着する予定だ。



今にも吐き出しそうな気持ちを抑え、揺れに耐え抜く。

地面の質がムジーク王国のものとは違う。

少し柔らかいようだ。揺れは大きいが、グラフィカ帝国に突入してからは、少しマシになった。



こうして、難なく、国境を越えた。





《グラフィカ帝国ー自然都市テコン》




「・・・お二人!今がチャンスですよ!」

カタスカの合図に合わせ、俺とアシトは箱を飛び出した。

カタスカが罪を被るわけには行かないので、俺たちは会話もせず、飛び出して、とにかくその場所を離れる。



「ここが・・・グラフィカ帝国第三の都市・・・」

「テコン、っスね・・・」

「ムジーク王国とは、なんというのだろう・・・違うな。土の質が柔らかい。そういうのもあって、植物がよく育つのだろうか?」



大草原が広がっていた。

そこには木々が生い茂り、それと調和するように木造の建物が並んでいる。

俺たちの国の様な高い建物は少ないが、平屋だけではない建物が立ち並び、この都市の規模を物語っている。


ムジーク王国が環境問題で嘆いていた頃から、ずっとこの国は自然豊かな世界と調和していたのか・・・すこしショックだ。



「なんつーか、異世界版のもりの都って感じッスね」

とアシトが言う。モリのミヤコ!?なにそれ!?


「あれが急ピッチで建てられたとか言う塔か・・・」

俺は空を見上げた。自然都市テコンからそう遠く無い場所に、要塞都市デッサンがある。

このグラフィカ帝国の首都ヨレンクはその要塞都市の中に存在している。


皇帝はその権威を見せつける様に、兵士をこき使ってあの大きな塔を建てたらしい。べバールの塔。

建設当時は酒がバカ売れしたのだと、カタスカから聞いた。



「まずは国の内情を知る所から始めよう。マタタキ達3人が来るまでにはあと3日ある。情報収集に努めるぞ」

「うッス!・・・で、どうするんすか?聞き込み?」


「ふん。元騎士団長直伝、情報収集の心得をお前に教えてやろう」


「マジっスか!?さすが不貞団長ッス!」





《自然都市テコンー南地区ール・ブルー酒場》




「ってぇ!不貞団長!酒飲んでるじゃねーッスか!」

そういう目の前のアシトも、顔を赤くしている。この国の酒は綺麗な水で作られているらしく、とても進む。


俺達は酔っていた。


「バカ言うなアシト。これも情報収集のひとつだ・・・いいか?酒場にはいろんな人間があつまり、いろんな人間が会話する。それは庶民の会話だ・・・そこから耳にする情報・・・それこそがこの国のリアルってもんだ」



「さぁ、さすがッス・・・けど・・・」


し〜ん。


店には俺たちしかいない。



何故なら真昼間だからだ。

天井の低いその酒場はなんとも狭さを感じるが、人がいないので広くも感じる。



「まぁ待てば来るさ・・・」

俺は再び、グラフィカ帝国謹製のキャンパ酒を飲む。

「不貞団長、まーたそれ飲んでる」

「美味しいだろう、これ」

「祝祭の日もひとりでガブガブ飲んでましたよ」

「おい、あの日の事は言うな・・・」


と、会話をしていた時。

客が来た。というかその客達は荒々しく、扉を蹴飛ばしてきた。


「おい!酒だぁっ!酒を出せ!!」


何やら統率の取れた服装を着ている男が3人。

媚びるように店主が酒を提供する。

荒くれ者の対応も面倒なもんだな。


「・・・団長、感じ悪いヤツらっスね!」

その一言がきっかけだった。



「貴様?今、我々になんと言った?」

酒を飲みながら1人が絡んできた。



「感じが悪ィ〜って言ったんだよォ!アァン!?」

こういう時のアシトは厄介だ。

コイツは喧嘩っ早くて困る。

酒も入って尚更だ。



「ちょ!ちょっとお客さん!」

店主はビクついている。



「店長ォ!こんな無法者を野ざらしにしちゃあ、ダメっすよ!」


「やる気か?買うぞ?」

男のひとりが立ち上がる。まぁまぁ鍛えられた筋肉だ。でも、アシトはチートが無くたって戦える。

俺はコイツを育てたんだ。兵士として。俺は剣を抜く事もなく、静観した。


「もう始まってンすよ!」


アシトはテーブルを踏み台に大きく飛び、そのまま素早く、男に蹴りをお見舞いした。



呆気なく倒れる男。



「やっちまったなぁ、にいちゃん」

起き上がり、埃を払った男は、懐からナイフを取り出した。


「そんなもん怖くねぇッス。漢なら拳で・・・あ、いや、拳と脚で戦えってモンですわ」


「ごちゃごちゃと!」

男は空きのテーブルをちゃぶ台返しの要領でひっくり返す。飛んできたテーブルがアシトにぶつかる。アシトはテーブルを睨みながら後退りし、チートを発動させた。ノーダメージ。



「どりゃあっ!」



アシト、飛んできたテーブルをパンチでぶっ壊す。

コイツ、なかなかの力の使い方・・・

そのパフォーマンスにおののく男。やはり、力の差は歴然としていた。



「そんな馬鹿力、戦術とは程遠いな」

男はアシトを睨みつけた。



「口だけッスか?」



その時。

座っていた男の仲間のひとりが、声をかける。


「おい。喧嘩はやめろ。酒が不味くなる」


「レオナルドさん。コイツから喧嘩売ってきましたよ・・・」


レ、レオナルド!?



「スプレ自警団に恥をかかせるな。お前は下がれ」



そういって、レオナルドは立ち上がった。



「クソガキ。俺の部下が恥ずかしいところを見せたな。喧嘩は俺が買う。拳でな」



そういってレオナルドは大きく息を吸って、筋肉を膨らませ始めた。





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